FEATURE ARTICLES 12 人間の中にある「編集デザイン」

第4章 ページの編集デザイン × 鈴木 誠一郎

時間的な自覚が必要


青木
最後に、僕たちが仕事としてやっている「編集デザイン」についてお聞きしていきたいと思います。
鈴木さんは1971年に集合デンを創業して、百科事典や雑誌などのアートディレクションやデザインをされていました。こういった雑誌や書籍の「編集デザイン」のデザイナーには何が大事だと思いますか?
 
鈴木
ページ物の「編集デザイン」は、雑多な物事を整理したり、ページ単位やページ展開での見せ方をまとめていくわけだけど、このページ展開というのはつまり時間的な展開なんだよね。デザイナーは空間を扱うけれど、時間的な自覚が必要だと思う。

青木
「時間的な自覚」というのは具体的にどういうことでしょうか?

鈴木
時間軸を取り込んでデザインを考えるべきだということ。
たとえばポスターだったらパッと見て全ての情報が一緒に目に入ってくるわけだけど、ページ物は、次々ページをめくっていくというふうに、ある時間的な展開の中でしか見ることができない。映画や音楽と同じ時間芸術なんだ。ただ、映画や音楽はつくった人の順序通りにしか観たり聴いたりできないけれど、ページ物は、作り手が設定した順序じゃない順番でも読める。後ろから読んだり興味のあるところだけを読んだりってね。つまり、読者がその人独自の編集をかけて読むことができるわけ。そういういろんな見方ができるという意味でも、さっき言ったように、コミュニケーションっていうのは受け手側のクリエイティビティに依存してるんだよね。

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