FEATURE ARTICLES 12 人間の中にある「編集デザイン」

第4章 ページの編集デザイン × 鈴木 誠一郎

意図しきれない成功


青木
たとえば、ひと見開きを一瞬見るのか全部読むのかでも全然違ってくるとか、そういうことも。

鈴木
うん。だから、こういうふうに設定してこうつくったならば絶対こういうふうに受け取られる、なんてことはないわけ。雑誌でも作り手が意識してたのとは全然違うところを読み手が面白がってくれるということが起きるじゃない? 何度か経験したんだけれども、定期刊行の雑誌で編集長も私も「これはうまくできた」って自画自賛する号って大抵売れないんだよね。何かの「とらわれ」が形になってしまっているのかもしれない。連句もそうなんだけれども、ベストの作品って意図的にはなかなか作れない。

青木
さっきおっしゃっていた、コミュニケーションには受け手の編集に委ねられる要素が必要だ、ということがあるんですね。

鈴木
よくできてるということは意図的に全てはコントロールしきれないもので、本当にベストなものは、たまたま受け手にピタッとはまるものができちゃったという結果でしかできない。たとえば大ヒット曲というのも多分そうでね。

青木
ヒットの理由を後で分析することはできるけれど。

鈴木
あらかじめ意図はできない。
あるレベルまでは意図してもっていけるけれど、そこから先の傑作や名作ができるかどうかは、ほとんど天の賜物だと思うよ。そう思って開き直っていた方が、逆にできやすくなるんじゃないかっていう気がする。
もちろん、狙いは狙いで一生懸命考えてないとその狙いを超えたものは出てこない。でも、狙ったことにとらわれ過ぎないようにする必要があると思うんだよね、仕事だけじゃなく何においても。とらわれ過ぎると目がふさがってしまって、狙いから外れたすごくいいものが向こうからコロコロと転がってきても気づけないから。

戻る

次へ