FEATURE ARTICLES 12 人間の中にある「編集デザイン」

第1章 バイクレース × 鈴木 誠一郎

高いテンションと冷静さ。「自分の土俵」づくり


鈴木
あるいはその場になったらできたというか。一種の極限状況なんだよね。そういう極限状況を体験できたっていう意味では、ものすごく貴重な経験だった。日常だと経験できない、あの緊張感と終わった後の達成感ってものすごい。特に初優勝したときのことは、今でもまざまざと体感がよみがえることがある。

青木
優勝したときって、どんな感覚なんですか?

鈴木
一種の神がかった状態をつくるんだけれども。でも神がかり過ぎちゃうと、現実から遊離してパーッと飛び出しちゃうわけだよ。プロのレーサーでもハイになり過ぎちゃうとだめらしくて、あまりにも絶好調なときって転倒したり失敗するみたい。テンションが高い一方で、ものすごく冷静になってなきゃいけない。そういう状態に自分をもっていく訓練も大事なんだと思う。
走り始めたら考えちゃだめなんだけれども、走るまではいろんなことを考えなきゃいけない。たとえば、レースまでにバイクをつくったり整備したり、勝つために練習をしていろいろ積み重ねるんだけれど、みんな同じようなことをやってるわけじゃない? なんで私が優勝できたかっていうと、共通の土俵に乗らずに、みんなと違う自分だけの土俵をうまくつくれたからだと思う。

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