FEATURE ARTICLES 12 人間の中にある「編集デザイン」

第1章 バイクレース × 鈴木 誠一郎

高いテンションと冷静さ。「自分の土俵」づくり


鈴木
なぜその作戦を考えたかっていうと、当時ホームコースみたいにしていた宮城県の菅生サーキットが、比較的単純なスピードコースだったのが改修されて、両端に細かいカーブと上がり下がりがあるようなテクニカルコースに変わったということがあってね。私のバイクはその両端のグチャグチャしたところ(=インフィールド)ではダントツに早いわけ。1周目の最初のインフィールドでトップに出たんだけど、そのレースにはものすごくパワフルなバイクが1台いて、私はインフィールドで抜くけれど、裏のストレートとゴールライン前の最後の登りストレートで必ず抜き返されるっていう展開が3周ぐらい続いてたんだ。少しずつ差はつまってたけど、最後までそのままの展開だと向こうの勝ち。だけどバイク乗りってコーナーで抜かれるのがすごく嫌なんだよね、下手だっていう感じがしちゃうから。で、4周目に、その1台が裏のインフィールドでまたこちらが抜きそうになったときに、無理をして転倒してくれた。それで勝てたわけ。

青木
それが同じ土俵に乗らないで穴を探したということなんですね。

鈴木
うん、そのバイクではその後もたしか2回優勝できた。

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