FEATURE ARTICLES 12 人間の中にある「編集デザイン」

第2章 連句 × 鈴木 誠一郎

的確な判断を瞬間的にやる「捌き手」


青木
50歳を過ぎてからは連句を始められたということですが、連句の面白さを教えてください。

鈴木
連句っていうのは、何人かの「連衆(れんじゅう)」と呼ばれる参加者で、最初に五・七・五の句をつくって、次はそこに七・七の句を付けて、その次はまた五・七・五の句を付けてっていう感じで句をつないでいくのを繰り返して、最終的に1つの作品(=一巻)に仕上げるんだけれど。
人がつくった句の次に、そこに何かの関連をつけながらいかに発想を飛躍させて次の句を付けるかっていうことを考えつつ繰り返していく。人との係わりの中でやっていくわけだよね。そうするとその場の空気ができて、自分一人で考えていたのでは出てこないような自分の可能性がズルッと引き出される。そこがすごく面白い。
でもそれは、その場をリードする「捌き手(さばきて)」と呼ばれる人が上手か下手かにもよるんだけれどもね。場の雰囲気をつくったり、人の可能性を引き出したりっていうのが上手じゃなきゃだめなんだよ。

青木
「捌き手」が重要なんですね。

鈴木
うん。たとえば、ある句が出てその次の句をつくるときには、みんなでワァーッと候補句を出すんだけれど、その中でどれを次の句にするかというのは捌き手が決める。そうじゃないやり方もあるけれど。そうすると、捌き手は一種の権力者でもあるから、勘違いして妙に威張っちゃう人や、逆に迷ったり遠慮しちゃう人もいるわけ。そのどっちもだめなんだよね。判断が的確で早くなくちゃいけないし、自分がした選択について説得力がなくてはいけない。そうじゃないと、場がどんどん盛り下がってつまらない作品になる。

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