FEATURE ARTICLES 12 人間の中にある「編集デザイン」

第2章 連句 × 鈴木 誠一郎

インプットされたものから自由になる


青木
捌き手の判断もあまり時間をかけられなさそうですね。

鈴木
私も捌き手を務めることが半分ぐらいあるけれど、慣れれば割と瞬間的にわかっちゃうもんだよ。それを頭で考え始めると迷ってしまってだめ。やり始めてすぐに「ロードレースとそっくりだな」と思ったよ。頭で考えずに反射神経を鍛えるのが大事だし、その場にいるみんなは、暗黙のうちに実は共同で何か1つのことをつくり上げてる関係、というところがね。

青木
ロードレースと同じで連句も頭で考えちゃだめなんですね。

鈴木
もちろん頭も使うけれども、前の句(=前句)に付けるときに理屈でつなげたり、ストーリー展開としてつなげてもだめなわけ。それをやっちゃうと次々につなげるのが難しくなって煮詰まっちゃうんだよね。句の付け方にはいろんな分類があるんだけれども、松尾芭蕉が開発した「匂付(においづけ)」は、理屈やストーリーではない直感的な関連で付けていく。つまり、一見、無関係に見えるんだけど、どっかでつながってると感じさせるようなものをもち出すわけ。だから、考えるのではなくて感じる力を鍛える。
それから、水平思考(ある問題に対し、今まで行われてきた理論や枠にとらわれずに、全く異なった角度から新しいアイデアを生もうとする考え方。(「デジタル大辞泉」より))というか発想の転換が大事。前句とどこかつながっていながら違うものを出すわけだけど、前句とその前の句(=打越(うちこし))も「一見無関係ながらどこかでつながっている」っていう関係になってるわけじゃない? ところが慣れない人がやると、ついつい打越と似たような句を出しちゃう。

青木
前に出てきた句に引きずられちゃうというわけですね。

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