FEATURE ARTICLES 13 「ミッションとあらためて向き合う。」

ふつうの人々にとっての豊かな状態とは?


河内
今のお話と似ていたので思い出したのですが、『ビル・カニ
ンガム&ニューヨーク』(※4)という映画はご覧になりましたか?
ビル・カニンガムさんはニューヨークで活動するファッション写真家なんですけど、ファッションの写真というと、ハイエンドファッションで固めたモードな、とてもつくられた世界という感じがするじゃないですか。
確かにニューヨークだから、素晴らしいファッションの人もいっぱいいて、もちろんそれはそれでよくて。でもビル・カニンガムさんは、何十年も自転車に乗って、パリの道路清掃員が制服にしているような青い上っ張りを着て街を行く--ストリートファッションを撮ってる、すごく自然体なおじいち
ゃんなんです。雨や雪が降っているときに、水たまりや泥を避けようとして飛び跳ねるような姿だったりという瞬間が一番おもしろいと思っていて。
ファッションモデルを撮っているわけじゃなくて、ごく普通の人が何かの考えでそのファッションを身につけて、ごく普通の生活をしているところを切り取っている人なんですよね。

籔内社長
似てますね。その方が芸術的というか美しい。一生懸命生きている人が美しいという感じがあって、そこを一番大事にしたいところですね。他人と比べていい服を着ているとか、そういうことではなくて。

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