「AB Newut」国際性への奇妙な挑戦


newut
上からAB Newut Classic-Medium、AB Newut Plain-Medium、AB Newut Tip-Medium、Halis GR-Medium。ドイツ語をベタ組み。内容はwikipediaの記事からコピペ

 

AB Newutというスイス生まれの英字ファミリー。

“国際性”というものを真面目に考えた結果、アヴァンギャルドに向かってしまったアツいフォント。

スイスでは4つの公用語(ドイツ語、イタリア語、フランス語、ロマンシュ語)がつかわれており、同じくラテンアルファベットで組まれていても、それらの言語の違い――例えば、ドイツ語では名詞を必ず大文字から始めるので、必然的に多言語より行間のアキが詰まってみえる――ゆえに組版濃度が変わり、各言語を並べた際、ガタつきや密度の差がでてしまうそう。
このフォントではこの問題を解決するために、なんと大文字がすべてエックスハイトでつくられている(スモールキャピタル化)。言語間で起きる組版濃度の差を、強制的に均してしまうという、かなりアクロバティックな戦略。

大文字なんてなかったんや。

そしてAB Newut Tipではダイアクリティカルマーク(ウムラウトなどについてる発音記号)がいかなるものもすべて点にするという無茶苦茶感。文脈で読めるでしょ、ってことだと思うんですけど、割り切りが良すぎる、アツすぎる。

ベチャっとドイツ語をベタで組んでみると(上の画像)、

行間が均質になるのは気持ちいい
・さすがドイツ語圏フォント、という感じのギッチリ感
大文字なのに小文字というのはやはり面白い

こうしてみると、確かにキチンと行間が空いて、見た目の気持ちよさが秀逸。でも大文字のスモールキャピタル化は面白いけど、やはり慣れるしかないのだろうか。ともかくこの字面、すごい可能性だけを感じる……プロダクトポエトリーとかで刺激的に使える気が。誰か上手い使いかた、教えてください。

まさか現代でType 1フォント買うことになるとは、思わなかった。

 

佐々木 未来也
デザイナー。Editorial/Web/Service Designあたりをうろつく現象ゾンビ。マイナビニュースにて「フォントから考える」を連載中 http://news.mynavi.jp/series/font/001/