はじめまして。デザイナーの山口です。
フィードリーダーを開くと、たいてい1日に1件は
「よいデザインとは〜」
「優れたUXを実現するための◯◯の方法」
みたいな記事が流れ込んでくるんです。
もちろん有益な記事もたくさんあるのですが、数が多すぎたせいか、最近やや食傷気味になっていました。
理由はいくつかあるのですが、そのうちのひとつが、そこで語られるデザインの方法が
- 無駄を削ぎ落とすこと
- メッセージを純化すること
このあたりに落ち着くことが多かったからです。
たしかに、UIまわりなどにはそういった「追い込み型」の手法がとても役に立ちます。どうしたってインターフェースをユースするのは人間ですから、そこにはある程度客観的な評価軸を設けることができます。何度もプロトタイプとテストを繰り返して、エラーを取り除いていく。それは確かに正しい。ものっすごく正しい。なのだけど、「メッセージを純化すること」「機能を高めること」以外の価値にも、ちょっとだけ目を向けてみませんか?
それはなにかというと、「異物感」です。完璧に純化されたものを作るのではなく、あえて異物感を混ぜておく、もしくは残しておくことで、見る人の好奇心を気持ちよく刺激することができます。
ただし気をつけるべき点もあります。異物感は強いアイキャッチになりますが、もちろんそこからうまくメッセージを伝えることに誘導していけないと、成功しているデザインとはいえません。また、異物感のパワーが強すぎると、単にグロテスクな印象しか残らないのでこれもアウト。このため、異物感を適切にブレンドするデザインは、とても繊細で高度なテクニックだといえます。
個人的は異物感って、世界に対するひとつの「大らかさ」でもあると思うんです。
確かにどうしたって「正しいデザイン」が求められるケースはあります。たとえばインフラや医療といったようなものが対象になる場合、異物感を挟むわけにはいきません。でも、何もかもがつるつるでブレのない「正しい世界」ってつまらないですよね。くだらないものや不気味なものや怖いものが世界を面白くしてるんじゃないでしょうか。
というわけで、僕の基準で恐縮なのですが、日々インターネットをウォッチする中で発見した、上述のような異物感をうまく活かしている例を集めてみました。
BIEST :
http://biestberlin.com/en/
「こんなに器用に雑な雰囲気を出すことができるんか!」と驚いたサイトです。味。
おやつキング :
http://oyatsuking.jp/
かわいいの中にほんの少しだけ匂う、不気味さ。それがかわいさを引き立ててるんです。
TVアニメ「健全ロボ ダイミダラー」公式サイト :
http://penguin-empire.com/
これはかの有名な愛生会病院サイトへのオマージュなのか。このスタイルはひょっとしたらインターネット上ではじめて起こった「デザインのリバイバル」なんじゃないかと個人的には思っています。
HTTP://YOTASHIRAISHI.ORG :
http://yotashiraishi.org/
CSSをオフにした画面をあえて再現するという、かなりヤバいデザイン。妙に心がざわざわするのは、「あるはずのものがない」からなのか。
«Past in the Future» Series on Behance :
https://www.behance.net/gallery/22467283/Past-in-the-Future-Series
未来と過去をコラージュさせている作品。コラージュの技法って、それ自体が異物感を許容してるんですよね。
Erin Murray’s Sinister, Surreal Paintings And Drawings Of Suburbia – Beautiful/Decay :
http://beautifuldecay.com/2013/07/13/erin-murrays-sinister-surreal-paintings-and-drawings-of-suburbia/
キリコの絵画にも近い雰囲気を醸し出している作品群。
・(本来いるはずの)人がいない
・流れる水や雲など、時間の推移を示すモチーフがない
こういった諸要素が絡み合って、キレイなのにどこか彼岸めいた風景になっています。
矛盾系AAおもしろすぎワロタwwwwwww : あじゃじゃしたー :
http://blog.livedoor.jp/chihhylove/archives/8035572.html
これ系のネタ好きです。情報を的確に伝えることがデザインの目的なら、ある意味それをもっとも過激に否定してみた例なのかも。
こういうの、ひとつのデザイン評価の観点になればいいなー。
それではまた次回。