この記事が配信されるころは梅雨真っ只中ってことになるんでしょうか。ということで今回はいつもと趣向を変えてじっくり室内で。(記事を書いている今は、晴天で非常に外が気持ちが良いのですがね……)絵的にしょぼくなることを鑑みずやってみよう!
実は私、よくプレゼンテーションとかミーティングで登場するグラフィック手法「4象限マトリクス」があまり好きじゃないんです。好き嫌いの問題じゃないのかもしれませんがね。どうも、なんだか「予定調和」な匂いが鼻につくんですよね。そもそも物事を分ける境界線周辺こそ、優柔不断でどちらにも転びやすいのに、あまり検討されずに、すでに4つのどこかに分類されたポイントや群を他の3エリアのどこかに移動させましょうという議論ばかりになっている気がするんですよね。
4象限マトリクスは2つの比較軸を設定すれば、現状把握や改善策を考えやすい便利で自由度の高いツールですが、ここではとりあえず、メジャーな既成のマトリクスを例に取り上げてみましょうかね。まずは「Will-Skillマトリクス」。人材への指導や教育アプローチを、タイプ別にマトリクスにしたものなんですが、ぱっと見は悩める中間管理職の部下指導に、一筋の光をもたらしそうですが、いざ実際の部下をプロットしはじめると、手をこまねいている部下はだいたい軸上にいて、しっかり分類できてる人物には、よっぽど怠慢で無い限りそれなりに対応(もうお手上げ…も含め)しているはずなんですね。とはいえ、このマトリクスは自分もしくは身内で活用うえでは、問題整理や実態把握としては有効ではありますよね。
一方、人を説得するときに「結論ありき」や、「後付け」、「根拠が弱いときのお守り」のためにマトリクスが使われちゃうから、問題があるんでしょうね。「で、結局君の言いたいことはなんだね?」恐怖症とでも言いましょうか、その恐怖症が発現しやすいのが、おなじみの「PPM」とか「SWOT分析」あたりでしょうか。PPMは、製品や事業を市場成長率とマーケットシェアを軸として、4つの領域に何ともまあキャッチーなレッテル(負け犬とか金のなる木とか)を貼って、卑下したり鼓舞したりしやすいツールです。本来、数値データで測れて、機械的に客観的にプロットして、現実を直視したり、気づきを得たりするものなんでしょうけど、なんとなくプレゼンのストーリー上「この事業は、このエリアにあるので、この施策を行います。以上」みたいな思考停止ツールの様相もあるなあと思うんです。SWOT分析は市場の中でどういう戦略をとるかを分析するものだけど、これに至ってはもう、4つの領域=「お題」の方が強くなっていて、軸に導かれて出てくる事象をプロットすることでの「気づき」と言うよりも、お題に対してダイレクトに事象の「ひねりだし」になっちゃってる場合が多いんじゃないですかね。軸上とかそういう曖昧を排除してるわけですね。「よし、まあ、とりあえずSWOT分析してみよう!」ってなったときの、ちょっと憂鬱なうんざり感は、もっともな反応だと言えますよね。既成のマトリクスって、今考えるべき問題とぴったりフィットしているわけではないのに、無理矢理当てはめてみたり、正しい使い方ができてない事が多い。やっぱり検討すべき事に対して、ちゃんと軸の設定をして、そこから出てくる領域の意味を考える。まずは道具から作るべきなんじゃないかなっておもいますよ。
どうしても4象限マトリクスが性に合わない私は、分析系のおしごとがあるときに、いろいろ考えたわけですよ。なんか「普通」とか「曖昧」に意味を持たせられるモノは無いかなと。で、まず思いついたのが3×3の9象限マトリクス。軸上のための領域がこれでできるんですよ。これは別に思いつくとかじゃなく一般的に使われていて、やはりアンチ4象限として先程のPPMの9象限マトリクス版(ビジネススクリーンというそうです。)があります。やっぱり「普通」って状態考えた方がいいよね。で次に考えたのが、この図。ただの菱形ですが、軸線を取り去って「普通」や「曖昧」を許容した形にしています。中心から遠くなるほどエクストリームな状態というわけです。4象限の象限を「領域」で表さないで「モード(状態)」で表わそうとしています。中心近くの曖昧なターゲットをどうしましょう? というフォーカスの当て方をしたいわけです。どうですかねえ、私の考えたマトリクス。「で、結局君の言いたいことはなんだね?」とは言われちゃいそうですね。
人に伝える、伝わるってことを考えると、どうしても「明快な傾向や指針」を提示したくなるものですが、問題やチャンスが潜んでいるあたりをみすみす見逃したりしそうだなあと。すっきりわかりやすいインフォグラフィックにも、そんな罠があるんじゃないですかね。