WIRED, コンテンツ, メディア, 企画編集, 千々和淳, 千葉聖子, 森國美代, 石野博一, 篠田淳, 編集論, 編集長, 若林恵, 金子まや, 長谷川敦士, 青松基
2014/03/12 17:54
アートディレクターの青松です。
私たちコンセントは、コミュニケーションにまつわる様々なモノ・コトのデザインをしているわけですが、特に長らく関わってきた「雑誌」という媒体、ひいてはそれをとりまくメディアとコンテンツのこれからについて、社員はみんな興味津々です。
今回のイベント──『WIRED』編集長 若林恵の編集論 は、自分を含め、企画編集に興味のあるメンバーで企画したもので、過去2回にわたる編集長トークイベントの、3回目として開催されました。(ちなみに今まで来ていただいた編集長は、『Tarzan』編集長の大田原透さん、『QUOTATION』編集長の蜂賀了さんと、錚々たる顔ぶれ!)
若林さんは、もともと平凡社で『月刊太陽』から編集をスタートし、独立後は『Esquire日本版』『TITLE』『LIVING DESIGN』『GQ JAPAN』など数々の雑誌編集に携わり、現在雑誌・ウェブ『WIRED』の編集長を務めていらっしゃいます。
若林さんとは、メンバーの一人が社外のとあるイベントで直接お話する機会があって、「ちょっとこんな社内勉強会やってるんですけど、もしかして来てもらったりとかできないですかねー」なんて話してみたところ、さくっとOKいただき、そこからはトントン拍子に話が進んで、あれよあれよと言う間に、実現してしまいました。
この日のプログラムは、
【第1部】WIREDの制作ってどうしてるの? & 質疑応答
【第2部】若林さん × 弊社はせがわさんによるトークセッションの二部構成。
進行は我が社のファシリ番長、千々和さんです。
まずは質疑応答に入る前に、『WIRED』の今までについてざっくりとお話をしていただきました。
ウェブ黎明期の1993年にアメリカ合衆国で創刊した『WIRED』は日本ではいち早く1994年に日本語版が出されて盛り上がりをみせるものの、1998年に惜しまれつつ休刊。その後は、ドットコムバブルによる本誌の不況や、編集長の交代を経て、現在はコンデナスト・ジャパン(※1)から本国を含め5カ国で出版されるテクノロジーを中心とした情報誌です。
※1 コンデナスト・ジャパン…『WIRED』『VOGUE JAPAN』『VOGUE girl』『GQ JAPAN』の編集・発行を手がけるマルチメディアカンパニー。
http://corp.condenast.jp/
創刊当初の『WIRED』とは距離を置きつつ、より一般向けの内容にシフトしてきた経緯として、そもそもWIREDの扱ってきたテクノロジー系の情報が、ここ数十年で、より一般的な価値を持ってきたことが背景にある、という話が、個人的にはなるほどなーと思いました。
続いて質疑応答に。ここでは2つだけ紹介します。
ずばり、藤田ADを選んだポイントは?!との質問に、世代観を大事に、という意味で若さ。との回答が印象的でした。
ADも編集部の一員、と言える厚い信頼関係の中で繰り出されるデザインは一発回答、修正ほとんどなし!だそうです。(時間もない…そうですが 笑)
「日本に足りていない情報って何でしょう?」
との質問には、ウェブが発展したことで逆に日本人が海外の情報を取りにいかなくなっているんじゃないかと。
そういう意味で、足りてない情報はものすごくある。だから、海外のテクノロジー事情のチャンネルとして、今『WIRED』が機能してるんですね。
あ、あとあと、今年は「ウェアラブル」がくるそうですよー?!
続きまして、いよいよ第二部。
若林さんと、弊社代表取締役のはせがわさんとの対談です。
最初は緊張気味のお二人でしたが、二言目から既にエンジンがかかり始めたはせがわさん。質問にも熱が入ります。
前半の話題は、『WIRED』の考えている今後のビジネスモデルについて。
紙は生き残るの?ウェブになっちゃうの?みたいな無意味な二元論ではなくて、「出版社」というネットワークの集積が、今後のコンテンツビジネスについてどう考えているか。海外の情勢も含めて今、出版社がどこに向かっているのか、ナマなお話がきけて刺激的でした。
若林さん「出版社って、情報と人的なリソースが集約されるところですよね。それをより立体的に展開していくというのも、生き残りの道の一つだろうなと思うし、それはけっこう楽しい気がします。」
はせがわさん「もう雑誌のコンテンツを売るというよりは、何か、出版社がフロー情報の中心にいて、いろんな派生のビジネスもできる、そういう新たな事業体みたいな概念ですよね。」
今までの業態に縛られないで、新しいフィールドに常に視野を向けていたいなと思いました。
後半では、若林さんが、世の中に情報を発信していく上での問題意識について。
やっぱりある種「専門的」な情報を扱う媒体なので、広く一般の人たちに自分たちの伝えたいことを伝える「手法」についてはものすごく色々考えていらっしゃって、ほんと、勉強にさせてもらいました…。
若林さん「僕が好きな考え方なんですけど、ある時代の問題とか空気は、人を通して顕現する、人を通して現れると思っていて。例えばスティーブ・ジョブズっていうのは、ある時代を本当に集約してる。ジョブズを通して時代が立ち現れるんじゃないかって。」
はせがわさん「そういう、人を観点としたストーリー語りの手法って、今のいろんな社会の中で知っておかなきゃいけない問題に対してどの切り口で臨むかといったときに、雑誌のような一記事が10分や20分とかの時間単位で読み切れるもののパッケージの中で、一番向いている気がします。」
なるほど確かに、そう言われてみると『WIRED』って、記事というよりストーリーの集まりなんですよね。だから読みやすいのか…扱ってる事実よりも、その人の魅力からスーッと入っていける気がします。
はじめは「編集論」と打って出た以上、編集手法そのものにフォーカスをあてたこの企画でしたが、3回目を迎えて、テーマもどんどん広がりつつあります。貴重なお話をしてくださった若林編集長はじめ、『WIRED』チームの皆様に感謝いたします。
正直、お声がけするのも毎回恐れ多い「編集長」企画…。
もしお声がけさせていただくことがあれば、快く首を縦に振っていただければと思います。