FEATURE ARTICLES 18

ビジネス×デザイン Vol.1

リコー グローバルガイドラインリニューアルプロジェクト

カスタマーセントリックを実現させる
“運用体験”のデザイン

リコー 伊藤恵美子氏にインタビュー

team design

カスタマーセントリックを
実現できるWebサイトへ

まずは今回のグローバルガイドラインリニューアルプロジェクトにおいての、
伊藤様の役割を教えてください。

伊藤氏(以下、敬称略) 私が所属しているコーポレートコミュニケーションセンターは、ニュースリリース発行をはじめとしたプレス対応、IRおよびブランドコミュニケーションや広告展開、イベント協賛など、社内外コミュニケーションを司っている部署になります。その手段の1つとしてWebサイトも担当しており、私はそのリーダーとしてグローバルWebサイトの戦略策定とその展開をしていく役割を担っています。

今回のプロジェクトでは、プロジェクトリーダーとして、社内の各関連部門やコンセントさんのようなパートナー企業と連携しながら全体を見るという立場でした。

プロジェクトの概要についてお聞きしたいのですが、始動の背景にはどのような
ことがあったのでしょうか?

伊藤 少し遡りますが、私がWebチームにジョインした2001年くらいから、リコーではグローバルWebサイトのイメージ統一に向けたプロジェクトが動き出し、2003年にガイドラインが完成しました。以来、Webデザインはもちろん上位の情報構造もグローバルで統一して運用していて、これまで2回ほどデザインをリニューアルしました。今回のガイドラインリニューアルのプロジェクトは2013年にスタートしました。

今回のリニューアルプロジェクトを経て完成したリコーのWebサイト。左がグローバルサイト、右が日本-リコーグループ企業・IRサイト。本プロジェクトで策定したガイドラインやテンプレートを使用する対象サイト数は、約50ある各国ローカルサイトの他、キャンペーンページやマイクロサイトを含む、約300サイト。プロジェクト概要はコンセントのWebサイトでもご紹介しています。

リコーは、大きく分けて、アメリカ、ヨーロッパ、アジアパシフィック、日本の4極でビジネスを展開していて、これら海外極と一緒にプロジェクトを進めているのですが、現地カウンターパートそれぞれにとってのWebサイトの位置づけがどんどん変わってくる中で、海外極のメンバーから「Webサイトをもっとマーケティングに活用していきたい」「もっとフレキシブルなガイドラインを提供してほしい」という要望が挙がってくるようになりました。こうしたことをきっかけに、このリニューアルプロジェクトが始まりました。

われわれはB to B企業で、セールスがお客さまのところにお伺いし、お客さまのビジネス上の課題に対する解決策を提案するというビジネスモデルを主としてきましたが、それがだんだんと変化し、お客さまがご自身で課題に対する解決策をオンラインで探し、ある程度の情報収集や意思決定までをもするようになってきました。マーケティングの立場からは、そのお客さまの行動変化に合わせて、機能を追加するなどWebサイトを臨機応変に改善したくなりますし、Webサイトにもたせたい役割も変わってきます。

「グローバルで一貫性のあるWebサイト」というコンセプトを変えずに、統一されたデザインイメージを守りながら、こうした変化やニーズに合わせた運用ができるガイドラインが必要でしたが、それまでのガイドラインでは、ページのレイアウトもかなり細かに規定していたので、たとえば「A/Bテストをして、もっとダイナミックにページを生成していきたい」といったニーズに応えるのが難しかったんですね。

「データドリブンでカスタマーセントリックなWebサイト運営を可能にしたい」というのが当社からのオーダーでした。

フェーズに合わせた体制づくり

2013年にスタートということはプロジェクト期間はすでに3年ほどになります
よね。長期のプロジェクトを推進していくのは大変だと思うのですが、基盤と
なる体制づくりはどのようにされたのでしょうか?

伊藤 私のチームは6人体制ですが、プロジェクトの始まりと終わりとではメンバーの入れ替わりもありました。長期ですので異動もあったりしたためです。

プロジェクトのスタートにあたっては、チーム内でコアメンバーを決め、現地のニーズを反映させるため、海外極のメンバーの中にもキーパーソンをアサインしてもらい、パートナーさんと連携しながらなるべく小規模体制で始めました。関連部署の方々にも入ってもらうようになったのはプロジェクトの全容が見えてきたころで、最終的には定例会議の参加者もすごい人数になりましたが。

「なるべく小規模体制で」とお考えになられた理由はなんでしょうか?

伊藤 初期は、戦略策定といったプロジェクトの軸となる部分を決める作業ですので、たくさんの人を巻き込み過ぎてしまうと、いろんな意見が出て収拾がつかなくなり、どんどん違う方向に行ってしまう可能性もあると思い、核の部分はコアメンバーだけで進められるようにスモールスタートにしました。

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自分事として捉え、
海外と同じ土俵で議論できる
パートナー選び

「パートナーと連携しながら始めた」ということは、戦略策定の段階
ですでにパートナーにも声をかけていたということですね。

伊藤 はい。パートナーさんにはなるべく初期段階から入ってもらおうと思っていました。「なぜこのプロジェクトをやるのか」「今の状況がどうなのか」ということを最初に共有していないと、言い方はおかしいですが自分事として捉えていただけずに、パートナーではなく単に依頼を受けていただくだけの関係になってしまうのではと。

今回は、“チーム”として一緒にプロジェクトをやりたいと思っていたので、最初から入っていただくつもりでお声がけをしていました。

「自分事として捉えてもらう」ということ以外に、パートナーの選
定にあたって重視されたことはなんでしょうか?

伊藤 今回はグローバルプロジェクトでしたので、海外極のメンバーとやりとりできることが基本でした。海外極にもそれぞれ、Webサイトの戦略を立てたり日々の運用をしたりしているパートナーさんがついていますので、経験と知識を豊富にもち、彼らと同じ言語、同じ知識レベルできちんと話せることを重視しました。

特にアメリカから見た場合、日本のWeb活用は遅れていてアメリカが一番進んでいると考える傾向があります。そうした人たちと対等に議論を交わしプロジェクトをドライブしていくには、最先端で起きていることをきちんと理解し、さまざまな事例にキャッチアップして、それをわれわれの会社の現状にあてはめて適切な提案ができることが必要です。そうした実績もあるパートナーを選ぶようにしました。

コンペティションの結果コンセントを選んでいただきましたが、一
番の決め手になったことはなんでしょうか?

伊藤 われわれのオリエンテーションを受けての、最初の提案内容と体制が一番ちょうどよかったんですね。問題の本質をきちんと捉えて提案してくださっていたので。

また、コンセントさんとお仕事をされたことのある企業の方にお話や事例を聞いたりもしたのですが、今まで当社がお付き合いしてきたパートナーさんとはまた違う視点をもっていらっしゃるなと感じ、きっといいものができるのではと思い、ぜひ一緒にやってみたいなと。決め手はそこかもしれないです。

海外極との
関係構築の重要性

今回のプロジェクトで、一番大変だったことはなんでしょうか?

伊藤 やはり「現地の要望をいかにくむか」というところですね。現地の担当者に直接話を聞きに行ったり定期的にテレビ会議を行ったりするなど、海外極との調整にはかなり時間をかけてきめ細やかにするようにしました。前回までのリニューアルプロジェクトの反省から、海外極とのコミュニケーションは密にしなければいけないと思っていたんです。

細かな調整が多く、時間はかかりますし言葉の壁もありますので実際にやるのは大変ですが、たとえば大筋だけ合意して進めるというやり方では、海外極のメンバーからしてみれば、自分たちの知らないところでプロジェクトが進んでいて、「できたから実装してください」といきなり言われるような状況となってしまう。「わたしたちには、あなたたちの意見や要望をきちんと聞く気持ちがあります」ということをまず示すことが大事だと思うんです。

海外極のメンバーと一緒に進めるプロジェクトであることを伝えるためにも、最初に現地へ行くべきじゃないかというご提案をコンセントさんからいただき、一緒にアメリカのオフィスとイギリスにある欧州の本社に行きました。やはり最初にFace to Faceで会っておくとその後のコミュニケーションがだいぶ変わってきますよね。コンセントさんにもわれわれのカウンターパートを身近に感じていただけることになると思いましたし。実はいまだに現地の担当者から「彼らは元気か? まだ付き合っているのか?」ということを聞かれたりするんです。一緒に各国に行ったときの印象がとてもよかったからなのではと思っています。

特に長期プロジェクトですし、ガイドラインはつくって終わりではなく運用していくことになりますので、一緒にプロジェクトを進めるチームとして関係性を築き上げることは重要だと思います。

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カスタマーセントリックを実現させる
“運用体験”のデザイン

リコー 伊藤恵美子氏にインタビュー

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