FEATURE ARTICLES 18

Goal Design

ビジネス×デザイン Vol.2

三菱電機「暮らしと設備」
BtoB製品総合案内サイト 構築プロジェクト

BtoB事業成果を支える、
コミュニケーションのデザイン

三菱電機 辰巳裕子氏にインタビュー

短期的な成果を現場と共有し、
長期的成果につなげていく

「暮らしと設備」サイト構築プロジェクトのお話をうかがう前に、辰巳さんが所属していらっしゃる「リビング・デジタルメディア事業本部 ブランド戦略推進部 ブランド販促グループ」の役割について教えてください。

辰巳氏(以下、敬称略) リビング・デジタルメディア事業本部は家庭電化製品(以下、家電)を取り扱っている部門ですが、ほぼB to B主体の事業本部になります。その中でブランド戦略推進部 ブランド販促グループのミッションには、ブランディングというロイヤリティを高めていく長期的な視点と、販促という年度内に成果を出していく短期的な施策の両方が求められています。グループの役割は、総合展示会や総合カタログ、Webサイトといった家電部門の横断的なプロモーション施策です。事業部門、製作所の販促担当の意向を取りまとめ、社外パートナーの協力を得ながら全体視点で総合的に運営管理しており、その中で私はWebサイトやデジタル領域の新たなPR施策を社内展開しています。

長期的なブランディングと短期的な販促活動の両方が、同じ部門にまとまっていることにはなにか理由があるのでしょうか?

辰巳 BtoB製品総合案内サイトである「暮らしと設備」サイトを公開したのが2015年3月31日なのですが、その翌日に組織編成があり、ブランド戦略推進部の中にグループごと所属変更するかたちになりました。それまでは「販促グループ」という名称で、主に短期的な成果を求められるミッションでしたが、そこに「ブランド」が付き、販促もブランディングもというシーケンシャルな組織体制になりました。

正直なところ、販促とブランディングとでは、本来、とるべき手段が異なりますので初めは戸惑いました。でも先輩方々のお話をうかがって自分なりに考えた結果、販促を「短期的な顧客価値提供」、ブランディングを「長期的な顧客価値提供」と捉えれば、両立できるかもしれないと気づきました。結果の見える時間軸や方法の違いはありますが、いずれも「お客さまに喜んでいただける価値を提供し、それに見合う対価をいただく」という基本は同じです。
今は、販促とブランディングをそれぞれ分けて考えるのではなく、一貫性をもってつながりを意識しながら取り組んでいけば結果的に両立するのではないかと解釈しています。

新たなデジタルPR施策は実際に企画・実施して検証してみないと知りえないことが多いと思いますが、短期的な施策は結果の見えるタイミングが早く、現場の協力を得やすいと感じています。結果を検証して、得られた問題や課題をすぐ次の施策に活かすこともできます。
「今、必要とされているお客さまにタイミングよく当社の価値を提供する」といった短期的な販促施策を「点」と捉え、さまざまなマーケティングの切り口で施策にトライし続けていけば、いずれいくつもの「点」が「線」になり「面」になるのではないかという感覚を抱いています。

また現場で抱えている今の課題や今後の方向性をできるだけ聞くようにし、それに沿ったかたちで企画提案していると、次第にさらに詳しい実状を聞かせてもらえる機会が増えてきました。現場の話には、細やかなおもてなしなど気づきを得られるヒントが多く、とても大切にしています。

 

真のマーケティング
プラットフォームを目指して

それでは、「暮らしと設備」サイトの構築プロジェクトについてお話をお聞きしていきます。まずはプロジェクトの概要を教えていただけますでしょうか。

辰巳 それまで個々に運営していた22サイトの製品情報を再整理し、1つのプラットフォームを介してお客さまのコンテキストに沿って提供できるよう、「暮らしと設備」という新たなサイトを構築するプロジェクトでした。

再構築して完成した、三菱電機の「暮らしと設備」BtoB製品総合案内サイト。プロジェクト概要はコンセントのWebサイトでもご紹介しています。

リビング・デジタルメディア事業本部が扱うBtoB事業の製品販促は各事業部、製作所の営業部門が担っています。従来の22サイトには主に製品情報を掲載しており、そのコンテンツオーナーはそれぞれ製品の営業部門に所属する販促担当になります。販促担当は、イベント対応、カタログ制作、営業企画など販促に関わる多くの業務をこなしているため、お客さまや社内から日々フォローされるような緊急性の高い業務を優先して取り掛からなければならず、Webサイトは彼らにとってたいていの場合、優先度の低い扱いになってしまっていました。22あるサイトにはそれぞれの事業部や製作所の営業部門で製品についての最新情報をできるだけ詳しく掲載していたものの、限られた時間とリソースでは製品情報を更新していくだけで手一杯というのが実状でした。コンテンツオーナーがそれぞれに個別最適化して運営していたため、製品間で見ると情報構造には統一性がなく横断的なつながりのない状況で、初めてアクセスいただいたお客さまにとっては、欲しい製品情報がどこにあるのか大変わかりにくいサイトになっていたと思います。

一方、お客さまの視点で情報構造のあり方を考えたとき、たとえば「空調換気」というテーマで探すときは複数の機種を比較検討することになります。三菱電機にも「空調換気」に関する製品は複数存在していますが、以前のWebサイトではたとえば製品A、B、Cそれぞれの情報を得るためにAの製品ページ、Bの製品ページ、Cの製品ページをそれぞれ探して見つけ出す必要があり、製品情報は確かに取得できるものの、横移動して製品比較しにくければ情報収集もしづらい、といったインターフェース上の課題がありました。

そこですべてのBtoB製品を分類しなおして関係のある分野をまとめ、同じ情報構造とデザインで統一し、真のマーケティングプラットフォームの整備を目指して、「暮らしと設備」サイトを新たに開設しました。

三菱電機「暮らしと設備」
BtoB製品総合案内サイト 構築プロジェクト

BtoB事業成果を支える、
コミュニケーションのデザイン

三菱電機 辰巳裕子氏にインタビュー

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注力1:「ビジネス課題」「ユーザーニーズ」のコンテキストに沿ったサイト設計

Goal Design
短期的な成果を現場と共有し、長期的成果につなげていく
真のマーケティングプラットフォームを目指して

Communication Design
注力1:「ビジネス課題」「ユーザーニーズ」のコンテキストに沿ったサイト設計
注力2:社内ステークホルダーからの理解と協力を得るために
注力3:社外パートナーのディレクション

Key Factor in Design
「プロセス」と「ゴール」を描く「デザイン」
「現場でのデジタル領域の捉えられ方」を常に意識