FEATURE ARTICLES 21

ビジネス×デザイン Vol.4

共感が生む、新たな価値共創の場

INTERVIEW 3

「ワコールつどいプロジェクト」
について

プロジェクト開発

マーケティング的発想と啓発活動の融合

ここからは、「ワコールつどいプロジェクト」についてお話をうかがっていきたいと思います。このプロジェクトから生まれた「ココロとカラダに向き合う下着デザインワークショップ」というプログラムを「ワコールスタディホール京都」の講座の1つとして開催されますが、背景を教えていただけますでしょうか?

中太 「ワコールつどいプロジェクト」というのは、女性が集い語り合う場を通じて、すこやかで美しい心と身体のためにできることを考え、未来をみつめるワークショッププロジェクトです。私が鳥屋尾から引き継いで宣伝企画課の課長となる前に8年間ほど所属していたWEB・CRM企画課で進めていたWebサイトのリニューアルをコンセントさんにお願いしたのが、そもそものきっかけになります。

Webサイトのリニューアルでは、表面的なデザインももちろん大切だったのですがそれだけではなく、お客さまの心理や行動といった深いところをもっとみつめて分析し、動線設計やカスタマージャーニーを考えるところからWebサイトに落とし込むという動きをしていたんですね。そうした活動をWebサイトの構築だけにとどめずに、お客さまが下着についてどんなことを考えていらっしゃるのかといったインサイトを得て、お客さまとしっかりつながるための活動へと広げた結果、考えついたのが「ワコールつどいプロジェクト」になります。

鳥屋尾 どちらかというとマーケティング的な考え方で始まったんですよね。その頃、私は宣伝企画課に所属していたのですが、マーケティングとなると下着の話が当然含まれますので、「ワコール ツボミスクール」を担当している宣伝企画課のメンバーも加わり、WEB・CRM企画課のメンバーと一緒にこのプロジェクトをやるようになりました。

「ワコールつどいプロジェクト」の下着をつくるワークショップには2種類あり1つはマーケティング的な要素でつくったものですが、もう1つは啓発の要素を強めたもので、下着の話をするだけではなく、なにか全く違う切り口から自分の身体や下着に関心をもっていただくようなことができたらと考えてつくりました。「ワコールスタディホール京都」で10月6日に開催する講座も後者になります。

マーケティングの1つの結論

鳥屋尾 なぜこう考えたのかと申しますと、前者のマーケティング的な発想でつくったワークショップを「ワコールつどいプロジェクト」で行ったときに、参加くださった方同士がとても盛り上がり、楽しんでくださったことがあります。「下着からはじめる、わたし再発見 vol.1〜カラダとココロをちゃんと知る〜“ココロにフィットする下着”デザインワークショップ」(2015年3月開催)というものですが。

下着に関する自分の気持ちや価値観を参加者同士で語り合い、実際に手を動かして下着のかたちに落とし込むというワークショップなのですが、そこで下着の啓発的なお話もさせていただく。身体と下着の話だけをするのではなくて、ワコールのメンバーもご参加者も一緒に集いワイワイとつくりながら語り合うことで、参加者のみなさんの耳や心が開いていき、同じ話であっても吸収力が全然違ったんですね。それが「ワコールつどいプロジェクト」を通してわかったので、これは啓発活動の1つとして取り入れることができるのではないかと、コンセントの高石さんにご相談してプログラムを一緒に開発したんです。これは1つのマーケティングの結論でもあるんです。

「お客さまの行動」に寄り添うサイトに

先ほど中太さまのお話にありました「ワコールつどいプロジェクト」のきっかけになったというWebサイトのリニューアルについて、具体的にうかがえますでしょうか?

中太 当時所属していたWEB・CRM企画課の役割には大きく、Webサイトの構築・管理とCRM(Customer Relationship Management。顧客関係構築)活動という2つがあります。 ワコールには、「MyWacoal(マイワコール)」というWebコミュニティがあり現在140万人ほどの会員の方がいらっしゃるんですが(2016年9月取材時点)、その方たちにワコールを好きでい続けていただくための施策を日々考えていました。その施策の1つの手段がWebサイトです。

開設した今では「ワコールスタディホール京都」でもできることですが、当時は、店頭以外でお客さまと直接お会いして交流できる数少ない接点の1つが、この「MyWacoal」だったんですね。ですのでこの場を大事にして、お客さまがどのようなことを考えていらっしゃるのかを知り、ワコールを好きになっていただいたり身近に感じていただいたりするための活動をいろいろとしてまいりました。

2年半ほどの長期プロジェクトとなったWebサイトのリニューアルは、その活動の言わば集大成です。

先ほど、「表面的なデザインだけではなく、お客さまの心理や行動を分析して動線設計やカスタマージャーニーに落とし込む」とおっしゃっていましたが、そこにはどのような課題があったのでしょうか?

中太 ご存じのとおりワコールはブランドサイトもとても多く、コンテンツの量や種類はおそらく日本屈指と言えるのではないかと思います。最初に設計したベースに新しくできたブランドやコンテンツを追加しながらWEB・CRM企画課で8年ほど運用していたわけですが、やはり継ぎ足しになってしまうので、お客さま視点で見たときにどの情報がどこにあるのかがわかりづらく、お客さまの行動を意識してつくられたサイトとは言えなかったんですね。スマートフォンも登場してより一層Webが生活動線の一部になってきているというのに、ワコールの都合だけでつくっているようなサイトになってしまっていて、運営している我々ももどかしかったというのが実情でした。

「いびつなかたちのままいくのはよくない。どこかで踏み切らないと」と思い、そういったところに長けているコンセントさんに入っていただいて、カスタマージャーニーマップ(以下、CJM)にしっかり落とすところからWebサイトをつくり直そうと。

ある程度時間もかかることですし、大々的なことをやろうとすれば多少なりとも社内からの反発も出るだろうと思いましたが、それはしかたがないこととして思い切ってやってみようということで、会社のいろいろな人を巻き込んでリニューアルプロジェクトを始めました。

リニューアルして完成したワコール総合サイト(画像左)と、カスタマージャーニーマップ(画像右)。プロジェクト概要はコンセントのWebサイトでもご紹介しています。

ワコール 総合サイト リニューアル
ワコール Webサイト活用方針策定

実情を知る。仲間になってもらう

覚悟を決めて臨まれたわけですね。実際に社内の方を巻き込むというのは大変なことだと思いますが、なにか工夫されたことがありましたら教えてください。

中太 まず、各部門へのヒアリングを大事にしたことがあります。

全部で15〜20部門くらいの人たちにそれぞれ1時間〜1時間半ほどの時間をとってもらい、部門で感じている課題や業務上の困っていること、お客さまとどのように接しているのか、どのようなプロモーションをしているのか等、Webサイト上のことに限らずに話を聞くようにしました。

ヒアリングは何カ月もかけて行い、米づくりで言えば土地を耕すといったところに非常に時間を割いたんですね。コンセントさんにもたくさんの時間をかけていただきました。

土壌づくりを大切にされたんですね。

中太 内勤の人だけではなく、普段私たちもあまり会う機会のない店頭のビューティーアドバイザーの人たちにも何回も時間をとってもらい、彼女たちがお客さまと接している中でどういった課題があるのかといったことを聞いていきました。たとえば、お客さまがスマートフォンを彼女たちに見せて「これが欲しいんです」というやりとりが実際にあるといったことを教えてもらったり。我々が知らないこともたくさん出てきました。

そうした「実情を知る」ということを通じて、まずは当然把握していなければならない会社の現状を理解するところから始めていったんです。

同時に、「これから一緒にプロジェクトを進めていく仲間として手伝いをお願いできないか」といったことを暗に言って回るところにも時間を割きました。「CJMをつくる」と言ってしまっては伝わらないので、「これからWebサイトをリニューアルしたいと思っている。皆さんの意見を反映したいので話を聞かせてほしい」とお願いして進めていったかたちですね。

ビジネス×デザイン Vol.4

ワコール鳥屋尾優子氏、中太寛行氏にインタビュー

共感が生む、新たな価値共創の場

ワコールスタディホール京都/ワコールつどいプロジェクト

INDEX

「ワコールスタディホール京都」について

「ワコールつどいプロジェクト」について

特集トップページに戻る