FEATURE ARTICLES 21

ビジネス×デザイン Vol.4

共感が生む、新たな価値共創の場

INTERVIEW 4

「ワコールつどいプロジェクト」
について

インサイト探求

インサイトを探る施策として

そうしてつくられたCJMをもとにWebだけではない活動まで広げて考えられたのが「ワコールつどいプロジェクト」というお話でした。Webサイト以外の活動と考えるといろいろあると思うのですが、なぜ、ブラづくりワークショップ等を行う「ワコールつどいプロジェクト」に至ったのでしょうか? 

中太 ワコールの事業活動では、たとえば「プリリ[Pulili]」「フェアリーティアラ[FAIRY TIARA]」といったキッズ・ジュニア向けのブランドがあったり、ノートルダム女学院中学校さんとの産学連携の共同プロジェクトを行っていたりなど、着け始めのいわゆる導入世代の方たちや小中高生の方たち向けの事業活動は力を入れてやっているのですが、その次の年齢層をみると少し空白があったんですね。もちろん全年代を網羅していないわけではないのですが。

その空白部分にあたる女子大学生といった20歳前後の方たちとワコールとの距離が少し離れているという課題があるのではと思い、その層のインサイトをいろいろなかたちで探るというのが広報・宣伝部のミッションなのではないかと。具体的に20歳前後の方たちと顔を合わせてどんなことができるかと考えていったときに、その1つの施策として、今まで我々が行ってきた活動を活かしたブラづくりというところに至りました。そうして2014年から始動して、第1弾として2015年3月に開催したのが「下着からはじめる、わたし再発見 vol.1〜カラダとココロをちゃんと知る〜“ココロにフィットする下着”デザインワークショップ」です。

2015年3月に開催した「下着からはじめる、わたし再発見 vol.1〜カラダとココロをちゃんと知る〜“ココロにフィットする下着”デザインワークショップ」
参加した女性同士で語り合い「ココロがうれしくなる下着」について考え、さまざまな布やレース、リボンなどを使って、実際にイメージした下着を手づくりするというもの。ワークショップ後に行った希望者対象の計測相談会は参加したほとんどの方が受け、売る側と買う側という関係性を超えたコミュニケーションも生まれた。

詳細のレポートはこちらをご覧ください。
http://sd-park.tumblr.com/post/138720557366/wacoal-vol1

「触れること」で得られる生の意見

インサイトを探ることがミッションの1つだと考えられたのですね。

中太 少し話がそれますが、小学校4年生〜中学校2年生の女の子とその保護者の方を対象とした下着教室の「ワコール ツボミスクール」ができた背景にも、それより上の世代の方、つまり女子高校生や大学生といった方々を対象とした啓発活動があるんですね。その啓発活動の中でアンケートをとっていたのですが、「こういうブラジャーの着け方や身体の成長について、もっと早く知りたかった」という意見があり、「9歳や10歳、11歳ぐらいの女の子たちを対象にしよう」と始まったのが「ワコール ツボミスクール」でした。

みんな子ども時代に同じような想いを経験してきているはずなのに、大人になるにつれてどこかにそれを置き忘れてきてしまう。生の意見というのは実際に触れてみないとなかなか得られないんですよね。そこから新たなことを始めるというのは往々にしてあるので、インサイトを探り続けるというのは重要だと思っています。

インサイトから
生まれるサイクル

お客さまの生の声からのインサイトをきっかけに、いろんな活動がつながっているんですね。

中太 女子大学生など20歳前後の方たちのインサイトを探りたいというところをベースに「ワコール つどいプロジェクト」の第1弾を行ったわけですが、彼女たちが先の人生にどんなことが待ち構えているのかを知る機会は少ないという実情を知ったことをきっかけに、人生の経験を積み重ねてきているワコールの女性たちが伝えるということを通じて女子大学生の方たちと一緒になにかをつくっていける場を、と考えて2016年2月にプロジェクトの第2弾として「わたしの人生すごろく〈女性力アップ編〉を作ろう」を開催しました。

2016年2月に開催した「ワコールつどいプロジェクト」の第2弾「わたしの人生すごろく〈女性力アップ編〉を作ろう」。 憧れに近づくためになにをすべきかを考え、人生プランをオリジナルのすごろく型シートにまとめていくワークショップ。仕事や家庭をもつワコールの女性スタッフが女子大学生と語り合いながら、仕事や結婚、出産・子育て、身体の変化といった女性の人生に起こるさまざまなイベントを具体化して描くお手伝いをした。

ただ、これまでの流れを振り返ると、個人的には「ワコールつどいプロジェクト」で対象とするのは女子大学生世代の方たちに限らなくてもいいと思っているんです。たとえば結婚を控えた20代後半の女性と、出産してから仕事に復帰したワコールの女性スタッフが対話するというかたちも、インサイトを探る1つのいい機会になるかもしれません。

「社会に還元したい」という想いが原動力に

「ワコールつどいプロジェクト」で得たインサイトを商品開発に活かしていく等、可能性が広がりますね。最後に今後取り組んでいきたいことを教えていただけますでしょうか?

中太 インサイトから商品づくりというところまで落とし込めたら本当に最高だと思っていますが、たとえそこまでいかなくても、なんらかのかたちで会社にフィードバックできるところまでやっていきたいというのが広報宣伝部としての想いです。

あともう1つ、社会に還元させていきたいということがあります。鳥屋尾の話ともつながりますが。

単になにかを売るということだけではなく、今までの恩返しとしてうまく社会に還元させていただけるような活動をさらに積極的にやっていける会社にしていきたいというのが、本当に心から思っていることです。「Her True Stories」という動画を制作したのもそうした想いからです。

2016年3月15日にワコールYouTubeアカウントにて公開された動画「Her True Stories」。思春期の女の子が、不思議なぬいぐるみに心の底に抱えている悩みを少しずつ話していくと……。

これは決して商品を売るためやブランディングのための動画ではなく、今までワコールファンでい続けてくださっている方々やこれからファンになっていただけそうな方々に対して、ワコールからの恩返し的な意味を込めてつくったものです。

ベースには、これまでの「ワコール ツボミスクール」で培ってきた、何千、何万ものアンケート等でいただいた声があります。

お母さんというのは当然子ども時代に身体や心の悩みといったいろいろなご経験をされてきているはずで、娘さんにとっては一番身近な先生なんですよね。でもなかなかそうなれていないという現実がある。そこで本当の親子の方々にご協力いただいて、台本もなくカメラは隠した状態という普段の生活環境の中で、どのように親子関係が縮まっていくかというリアルな姿を撮らせていただいたんです。

この動画を通して、娘さんをもつお母さんにはっと気づいていただいたり、世の中のいろいろな方々に「ワコールはこういう想いをもち普段仕事をしているんです」ということが少しでも伝わったりするといいなと。そんな想いを込めてつくらせていただいた、個人的には集大成です。

ワコールは、これまで主に女性の方々から本当にいろいろなことを教わりながら成長してきた会社だと、心から思っているんですね。「なにか社会にお役立ちできることはないか」ということで、さまざまなCSR活動やそこから拡大した活動をさせていただいており、私は非常にやりがいを感じながら日々仕事をしています。
(終わり)

(取材:2016年9月、掲載:2017年1月10日)

ビジネス×デザイン Vol.4

ワコール鳥屋尾優子氏、中太寛行氏にインタビュー

共感が生む、新たな価値共創の場

ワコールスタディホール京都/ワコールつどいプロジェクト

INDEX

「ワコールスタディホール京都」について

「ワコールつどいプロジェクト」について

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