サストコ
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サストコ

「志」吉田望

Q1.4月にコンセントに入社する新入社員へ向けてメッセージをお願いします。
世界の全ての組織は「個人」と「集団」で成り立っています。おそらく入社は、皆さんがしっかりとした規律を持った集団との出会いですが、人間は案外その仕来りやムードになじむのは早いものです。その際に是非自分の「個人」=個性をキープし続けてください。アイデアや着想、センス、バランスの感覚など、デザイン会社で求められるプロとしての技量の向上は、しっかりとした自己認識がないと、育って行かないからです。そして企業のブランドは、個人と組織の志(こころざし)や方向をまとめる大事な要素。コンセントのブランドをもっと大きく確かなものにするために、これからの皆さんの活躍を楽しみにしています。

Q2.ご自身の新入社員時代のエピソートを教えてください。
一番ショックだったのは入社して3年後、 ABCDの査定で Dにまでなってしまったことです。Dは10人中一人しかいないのです。東大まで出て同期でビリか・・・そしてその理由を考えたのですが、自分が思ったこと、正しいことをその瞬間に口にしていることに気がつきました。例えばクライアントが「どうかな?」と無理難題を言ったときに、その場で計算がたってしまい「無理です、なぜならば(滔々)」と返答をしていました。先方は「無理を承知で頼んでいるのにその態度か」と激怒をいたします。こういう剣呑な態度は上司に対してもそうでした。Dの反省をしてからは、例えば、無理難題を言われた場合は即答をさけ「努力します」といって、二時間ほどゲームセンターで時間を過ごし、その後「あのあと二時間考えたのですが、やっぱり・・・」と切り出すと先方も「いや、俺も無理だったかなと思って」となるものです。自分の意見がネガティブであっても「そういう考え方もあるんだなって思いました。でもちょっと一つだけ・・・」みたい思いを飲み込む返し方を覚え、それからは順調に出世しました。今思えば、それは僕がようやく大人になった瞬間だったのでした。しかしそれを電通で20年間つとめた頃にいろいろなことが起こり、「自分を隠すことで大人になった自分」が急に嫌になってしまい、電通を辞めて独立しました。(まあそこまで単純でもないのですが)そして、独立してからはそして初老の域に達するにつれ、若干もとの「子供」に戻ってしまったように思います。

Q3.新入社員におすすめしたいこと・ものは?
そうですね、パソコン以外の身体を動かす、身体に関わることをお勧めします。きっと会社では一日10時間ぐらいパソコンに向き合うことになると思うし、また身体で覚えたこと、例えば絵をみても美術館の風情、その場の匂いや人々のざわめき、など五感を動かすことで覚えた総合情報は、知識としてだけでなく感覚として血肉化して、発想の資産になっていくように思います。

もう一つはビジネスに関心を持ってほしいと思います、皆さんが直面するクライアントとがどういうビジネスモデルでどのような競合状況にあり、そのメンタリティ、組織、予算の仕組みなどによってどう意思決定が左右されるのか。いいデザインを通すためにもビジネスについて熟知していて、クライアントを根本から説得することが重要になってきます。ビジネス系のオンラインマガジンを眺めたり、興味がある企業のビジネス書を読んだり、さらに興味のある人は損益計算書の読み方を覚えてクライアントの健康状態が診断できるようになってもらいたいと思います。色んな意味で人生の役に立つ知恵になっていくと思います。

Q4.座右の銘を教えてください。
座右の銘ではないのですが、広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由(同名の書あり)を知り、私たち人間だけが130億光年のこの宇宙で自意識を持って生まれた存在であると確信しています。目も眩むようなその驚きをもって日々を過ごせたらいいな、と思って・・・でも結構無為に過ごしてしまっています。

吉田 望(よしだ・のぞむ) 株式会社コンセント 取締役

Nozomu Yoshida