yutaka sekiguchi
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yutaka sekiguchi

こんにちはー。デザイナーの関口です。

日頃、いろいろな方から展覧会・展示会のお誘いをいただくのですが、ちょっと面白い展示にお邪魔してきましたのでレポしますね。

今回伺ったのは、「ペーパーボイス東京」で行われている『PAPERFIELD「A to J」東京巡回展』。ペーパーボイスといえばファンシーペーパー(※)などで有名な、紙の開発、販売、輸出入をされている平和紙業株式会社さんのギャラリーですね。
で、今回の展示はその平和さんの紙見本帳「GLORY」のAからJの分類ごとに、7組のデザイナーさんがさまざまなかたちで紙の魅力を活かしたデザインを披露してくださるというもの。紙好きウハウハのナイス企画。

みんなだいすき、安心のGLORY。お世話になっております!

そう、この見本帳セットが「J」までなので、「A to J」というわけですね。

さて、早速Aの作品から順にご紹介…
と思ったものの、まったく写真を撮ってこなかったダメレポーターの私(だって原稿執筆依頼が事後なんだもん! 遠慮しちゃったもん!)。

ここはひとつイメトレでお願いします。冗談です。

展示の内容としては、ポスターや小型グラフィックを中心とした架空店舗やブランドのVIというかたちで、お題の銘柄がもともと持っている個性や、意外な組み合わせの妙で生まれるあたらしいイメージを提案するものでした。
また普段はなかなかできない凝りに凝った質感表現の実験の場でもあり、展示それ自体が印刷サンプル、印刷展示会的な機能も担っていましたね。展示品はすべて手にとってシゲシゲとながめることができ、写真撮影もOKというデザイナー泣かせの展示だったわけです(写真撮りませんでしたケド)。

会場はこんなでしたよ。

写真の通り、クオリティの高いビジュアル群であることがわかると思います。(困っていたら快く写真を貸してくれたフリーランスのアートディレクターMくん、ありがとう!)

そして嬉しかったのが、平和紙業の社員さんが係員として常駐されていて、展示作品についての素朴なギモンから込み入った相談まで、(たぶん)何でも答えてくださること。こういう機会に、日頃気になっていたアレやコレを解消するのもアレですね。やっぱり、ちゃんとした知識を持った方に直接お話を伺うのが一番です。

私が一番気になったのはJの作品。いま人気の「特Aクッション」という厚みのある紙に、文字をレーザーで焼き付けて空押し加工のようなデコボコをつけつつ、境目を“なめらかに焦がす”という表現。パッと見はまるで、凸版を通常なら印刷不良のレベルまでギューッと強く押し付けたかのような仕上がり。かなりトライ&エラーが必要そうですが、イミテーションではない本物のコゲの質感の強さにときめいてしまったわけです。
こういう極端な印刷加工も、応用次第で強いコミュニケーションになる可能性がありますね。引き出しは多いに越したことはありませんです。

そしてもうひとつ。作品から、参加されたデザイナーさんたちの「つくる楽しさ」がしみじみ伝わってきたこと。コレ、大事ですよね。課題解決を楽しむこと。これは必ずアウトプットにつながります。

このご時世、コミュニケーションを「あえて印刷物にする意味」は非常に重要で、都度考えないわけにはいきません。ただのグラフィックではなく、オブジェ/プロダクトとして実際に自分の肉眼でモノを見て「眼を鍛える」ことは、何のデザインをするにしてもますます必要不可欠になってきていると思います。

デスクから離れて、眼を養う機会をもっとつくらねば!

はい。

そんなペーパーボイス東京の「A to J」展。会期は終了しており係員さんはいませんが、作品は6月22日までの予定で展示されてます。みなさんもぜひ見に行ってみてはいかがでしょう(無難なオチ)。

※ファンシーペーパー
特殊紙。色物、柄物、厚物、凹凸の紙、和紙などの総称で、紙素材の持つ付加価値(風合いとか)を高めた紙全般を差す。
「ファンシー」とは、英語の「Fancy」ではなく「ファン欲しい→ファンシー」という造語!だそうです(ドヤ)。紙の名前もこんな感じのものが多いですね…。
ちなみに最近は紙をなんとなく指定するようなことはなくなり、指定ができるときには決められた予算内で最大限の効果が出せるよう、ウンウンうなって知恵を絞ります。日頃の研鑽が試されますね!