yutaka sekiguchi
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yutaka sekiguchi

こんにちはー。コンセント光学担当Sこと関口です。
職業はデザイナー、趣味は写真鑑賞、持病はカメラ(銀塩)です。

さて。
ある朝、ボスのはせがわさんが「これ、買ってみたからレポよろしくー。何に使えるか考えといてね。」と一言。渡されたものがこちら。

lytroこれ、ご存知ですか?
米LYTRO社の「Light-Field capture camera」、ライトロ(https://www.lytro.com)という代物。ふつうのデジカメとはちょっと方式の違うカメラで、Light-Field、つまり光の「場」ごと記録するものです。…はい、まだよくわかりませんね。

ちなみに僕はネットでしか見たことのなかったそれを渡され、あまりに驚き「うおお!!!?!!?!!!!!」としか言えませんでした。眠かったし。眠かったし。

百聞は一見に如かず。これで撮った写真はこんな感じ。
ちょっと写真の中をクリックしてみてください。

ほか作例はこちら↓
https://pictures.lytro.com/sekig/stories/104426

つまりですね、つまりですよ。
「撮影“後”にピント位置を自由に変えられる画像が撮れるカメラ」なんですよ!!! スゲエ!!!!!なんぞ!!!!!!!

以下、「前編:しくみと背景」、「後編:使用レポートと意味とか意義とか」の2パートでお届けします。異様に長いので興味のあるところだけ読んでください。(燃えちゃうんですよ…こういうネタ…)

 


しくみと背景

ライトロで用いられているLight-Field capture技術というのは、通常のカメラと違って「光の強さ、色味、方向」すべてを一度に記録してしまう撮影方式です。いろいろな方式がありますが、ライトロが採用しているのはマイクロレンズアレイ方式というもの。

撮像センサーの前に超細かいレンズを並べて、メインのレンズから入った光を、その細かいレンズごとの単位で「光の強さ、色味、方向」へと光学的に分解。それをそのまま「Light Field」としてマルっと記録します。平面の画像としてじゃなくて、光のシーンごとデータにしちゃうってことですね。厳密には4次元のデータ(ふつうの画像は2次元)なんだそうです。謎。。。

※このジャンルは以前からあるもので、Computational Photography:計算写真学というらしいです。興味のある方はいろいろ調べてみてください。
http://ednjapan.com/edn/articles/1011/01/news113.html

ちなみに、ライトロで使われているレンズは、このコンパクトなサイズの中に数百枚も搭載されているそう。なんということでしょう。。。

で、その「Light-Fieldマルっとデータ」をMac/PCの専用ソフトウェアで後からいじることができる、というわけ。4次元→2次元に再構築しているんですね。といっても操作はカンタンで、iPhotoライクな操作感。シンプルに気になるところをクリックするとフォーカスが合います。

そして、この精度がすごい。平面のデータを仮想的に処理しているわけではないので、かなり自然にフォーカスが変更できますし、ピント位置に応じて、前ボケ効果でディテールが消えたりも(http://pictures.lytro.com/sekig/pictures/548843)。そしてアプリから1クリックでカンタンにウェブ共有ができます。

また、アプリからはJPEG書き出しもできますね。撮影データは特殊な形式で、「11 Megarays」という謎の単位。

Wi-Fi、bluetoothのチップがすでに組み込まれていたり、今後のアップデートも詳しく予定されています。今後のファームアップで、焦点距離、ホワイトバランス、露出などが後から調整可能に。また全焦点画像の生成や、3D画像化、視点の自由な移動(!)などもできるようになるらしい…。もはやSFですね。

このカメラを作ったLYTRO社の創業は2006年。CEOのRen Ngがスタンフォード大学の博士課程での研究から立ち上げたベンチャーです。Light-Field cameraのコストとサイズを劇的に抑える方法を編み出したんですねー。それまでは、巨大な撮影システムを作ってスパコンで処理していたみたいです。

ポイントは、既にあった概念を日常で使えるカタチ=プロダクトやサービス、そしてコスト含めた“世界観”に落としこんだこと。まさしくデザインですね。パッケージされた体験は、こむずかしい理屈を超えて、目の前に「なんとなく使えるかたち」で落ちてきます。

同社はこのカメラで撮影した画像を「生きている写真」と呼んでいるそうですよ。
ではでは、そのライトロの使用感については後編にて。