2013/02/14 16:07
謎の新カメラ「ライトロ」のレポート後編です。
カメラそのものの使用感とその意味性について考えました―。
ライトロ( https://www.lytro.com )というのは、最近弊社で購入した、こんな写真が撮れるカメラのことです。
(前編はコチラ→ 「LYTROがコンセントにやってきた! (前編)」 )
カメラそのものについて。
まずなんといってもこのスタイリング。プロダクトデザイナーの夢みたいなフォルムですね…美大の課題で提出したら怒られそうなくらいの簡潔さです。
が、これが意外とイイ。プリミティブな四角柱の形態を守りきっているので、慣れると案外持ちやすい。両手でつまんだり、片手で握るように持ったり、プロ機材ではないですから、ベストな持ち方の最適化よりも、ナルホドいろんな持ち方が自然に得られるほうがいいのかもねーと思いました。アルミ酸化皮膜処理した金属部分も、ボタン類のまとまったシリコン皮膜処理の部分も、ものすごく質感が高いです。
うん、Macにゴムが付いたような感じ。持ち歩こう、触ろうという気になります。
そしてカメラ全長の2/3がレンズです。絞りなしの全域f/2通し8倍ズーム。どこを切り取ってもおなじ明るさでないと画像の再構築ができないので、こんな大きなレンズになるんですね。シャッターの機構は謎ですが、カチッ、カチッ、と内部でメカの動く意外にしっかりした手応えがあります。これは思ったより撮った感しますね! レンジファインダーで撮っているくらいのフィーリングです。
そして背面はタッチモニター。ドットはかなり粗いですが、この割り切り感はいいですね。上面にさりげなくタッチ式のスライダースイッチがあり、ズームなどができます。動きに慣性が効いててなんだかカッコいいぞ。 一点だけ、視野角がものすごく狭いのがホントに残念です。僕は二眼レフみたいなウエストレベルの撮影スタイルも試したくなりました。
シャッタースピード、ISO感度、ソフトウェアNDフィルター、AEロックの各種調整機能があり、アクセサリーで三脚アダプタも。暗所撮影、動体撮影なんかもできますね ( https://pictures.lytro.com/lytro/collections/24/pictures/392346 ) 。
シャッターボタンを押すと手ブレしてしまいやすい構造はいただけないですが、そんなことを気にするのは無粋というもの。気軽にパシャパシャいける、完成度の高いフィーリングです。
けっこう手軽な印象で、とにかくトータルでよく出来てます。サッとすぐ撮れる、触って確かさがあるカメラです。
さて、ちょっと持ちだして撮影してみました。
いくつかアップしてみたので見てみていただければ。
https://pictures.lytro.com/sekig/stories/104426
とにかく光量が必要です。屋内でも普通にとれますが、暗いとノイズがすごい。ノイズが多いとディテールが潰れるので、後でせっかくピント位置調整をしてもイマイチ冴えない。一方、明るければ明るいほどディテールが拾えるようです。明るい日中に撮ると、意外に高精細で驚かされます。とにかく明るく撮ることがポイントです。
逆光、動きはダメです。もうまったくダメ。おちついて撮る必要アリですね。持ち方のせいか、微妙に手ブレ…撮影直後にカメラを動かしすぎると良くないようです。そして、壁面の肌理とかディテールで見せるようなものもむずかしいかも。
PC作業はちょっと重め。MacBookPro Retina メモリ16GBのマシンでちょっとだけ待つ感じです。4次元のデータですからね…仕方ないか…。
とはいえカメラの操作感がかなりイイので、軽快に撮り歩けます。散歩が楽しくなる感じ。一方、ピント調整機能を楽しむのはけっこう難しいですね。接写気味にすれば効果は大きいですがどうしても絵が似てきます。
何も考えずパチパチやっても楽しめますし、光を読んで工夫してみても楽しめそうなのは意外なところ。スマートなフォルムのお遊びカメラとして持ち歩くのも一興、Light-Fieldカメラとして表現を工夫するのも一興。両面で楽しめます。
さて、そんなライトロですが、ついつい「コレの意味って何なの!?」とか考えちゃいました。
写真をやるときの面白さはいろいろありますが、その中のひとつに「機構によって世界の見方が変わる」ということがあります。僕はコレがとても面白くていろんなカメラに手を出してしまったんですが…このライトロも、そんな面白さがあります。
ふつう、写真の露出や構図など、絵づくりを決める要素はすべて撮る人が決めますよね。写真を見る人は、「撮影者を介したものの見方」で対象を見ます。
一方ライトロで撮った写真は、絵づくりを決める要素のうち「ピント位置」や「構図」が“ある程度”鑑賞者に委ねられます。特に、撮影者が何を見ているかをすっきり整理する効果のある「ピント位置」がこれほど自由になるのは大きな変化です。
比較的一方向なコミュニケーション、つまり作品撮り→鑑賞というしくみではライトロはちょっと中途半端かもしれません。ただ目新しいだけかもしれない。だったら素直に一眼レフで撮ればいい。
一転ちょっと視点を変えて、ライトロで撮った写真をみんなで触りながら眺めたり、web上で共有してコメントしあったりした時に真の面白さがでるのでは? と思います。例えば…
・パーティやBBQなど、何人かが集まった時の写真
・変わったモノの接写
・旅行の風景などモチーフが重なる場面
やっぱり、「人が集った時の写真をSNSで共有」が一番面白いかも。
コンセントでは、ナレッジシェアのドーナチュや季節のイベント、ワークショップの記録が向いているかな。
通常、シャッターはカメラの中=撮影者の手の中にありますが、ライトロにおいてシャッターはある意味で外にひらかれています。Light-Fieldカメラというのは的を得た名前で、まさしく「閲覧する場」にシャッターがあるんでしょうね。その場のみんなで(仮想の)シャッターを切りあって、ライブなコミュニケーションが発生する。見えなかったものが見えたりする。そういう使い方が、一番楽しいんじゃないでしょうか。
文字通りに「“場”を持ち帰るカメラ」がライトロなんですねー。
そんなわけで、変わったカメラ、ライトロのレポをおわります。いやあ、写真って、面白いものですね~。。。
ご興味ある方はぜひ試してみてください。楽しいですよ。