kota saito
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kota saito

こんにちは。
コンセント文字部の斎藤です。

みなさん文字は好きですか?

先日、文字好きとして見逃せないドキュメンタリーを観たのでレビューします。

『Linotype: The Film』(監督 Douglas Wilson/米国/75分/2012)

 

■Linotype(ライノタイプ)ってなに?

今、Linotypeと検索するとフォントメーカーのライノタイプ社が出てきますが、
ライノタイプ社の始まりは「Linotype」という活字鋳植機を発明したことに由来します。

この活字鋳造機を主役にしたドキュメンタリー映画が『Linotype: The Film』です。

19世紀末までは1文字づつ職人が活字を拾って文章を作っていました。
効率が悪いため、新しい方法はないものかと様々な自動鋳植機が開発されましたが、試行錯誤の末に発明されたもののひとつがこのLinotypeです。
大きな特長は、この機械のキーボードでタイプをすると活字の母型(活字を鋳造するための型)がタイプした順に並び、Linotype(Line of type)の名前の通り1行づつの文章に活字を鋳造し、役目を終えた母型が元の位置まで戻るというものです。
時計職人が作っただけあって、複雑ながらも精巧にできており、動いている様を見ているだけで飽きません。
その場で鋳造するため膨大な量の活字のストックや、それを拾って文章にする職人も必要なく、大量に印刷物を生産することが可能になりました。
Linotypeは原稿ができてから印刷までのスピードが早いため、新聞や雑誌といった情報の鮮度が必要な媒体の印刷に使われました。
Linotypeによってアメリカで印刷される印刷物の量は飛躍的に発展し、識字率の上昇にもつながったそうです。

…といったように時代背景からLinotypeの開発、そして写植の発明によってLinotypeが衰退に至るまでの過程を追っていくといった内容です。

一本の映画としても出来が良く、編集のテンポと軽快な音楽がマッチしており、あっという間の75分でした。

 

■見どころ

デザイナー目線で「おっ」と思ったことを列挙します。

  • Linotypeでのジャスティファイの方法。こんなふうにアキを均等にしていたのか…。
  • 元ライノタイプ社のフォントデザイナー、マシューカーター氏のインタビュー。
  • ライノタイプ社の書体原画のアーカイブ。ほんの一部しか紹介されませんでしたが。
  • 途中に差し込まれるアニメーションでの解説。
  • 本編中の解説図やキャプション、ブックレットに使われている書体「Metro Nova」。

などなど。

特にいいなと思ったのがアニメーションでした。
基本的に昔の話なので古い映像が多く差し込まれるのですが、そこに入るインフォグラフィック的なアニメーションがよいアクセントになっていて素敵ですね。

とにかく大きく、重く、大掛かりで、メンテナンスも大変(このあたりも色々エピソードが出てきます)なのですが、そこもまた関わる人を魅了する機械ということがよくわかりました。

Linotypeが発明されていなければ現在の印刷まわりの環境は大きく違っていたんだなと思うと不思議な気がします。
当時を知る人、知らない人でも見方が変わる映画だと思いますが、オススメですよ。