Yasuko Yamamoto
Author:
Yasuko Yamamoto

こんにちは。コンセントのContent Strategyチームの山本泰子です。

7月29日にamuと共同開催したジオラマ展示+トークイベント「伝わるビジュアルづくり どうして子ども向け書籍は文字が大きいの?」

第一部の展示風景。ど真ん中にジオラマを配置。周りには写真パネル。

来場者延べ113名という大盛況で、イベント関係者一同大喜び!
足を運んでくださった方々、ありがとうございました! そしてジオラマ制作・撮影およびトークイベントのゲストスピーカーとしてもお越しくださったカメラマンの大畑俊男さま、造形作家の松浦由美子さま、来場&事前アンケートに回答してくれたコンセントのみなさん、たくさんのご協力、本当にありがとうございました!!

第二部のトークイベント後。皆さんじっくり見入ってます。

幼児向け書籍の表紙として提案した「ジオラマ」でまちをつくる企画。
「コンセントでジオラマ展示??」と思ったみなさま。そうなんです、コンセントでは書籍デザインもやっているので、表紙のビジュアルをつくることも多いんですよー。

この展示+トークイベントの様子を前編・後編に分けてお伝えしようと思うのですが、まず前編では第一部の展示制作秘話&裏話をメインにレポートします。
平日限定1日の展示だったためご来場できなかった方に、また来てくださった方には二度、これを読んで楽しんでいただければ嬉しいです!

展示のジオラマ。斜め角度からはこんな感じ。後に掲載の全天球の写真と見比べるとおもしろい。

1.思い立って、聞きにいく。

立体の制作や撮影経験はあっても、架空のまちを丸々ひとつつくるという経験は制作チームメンバー全員が初めて。迫りくる時間と限られた予算、幼児向け書籍という条件の中で、クリエイティブ面、撮影面、進行上のリスク管理面など考えることはたくさん。

まちの世界観をどう現実につくりだすのかなど、建築家のまちの開発事例を読みふけったり、まちづくりゲームで現実逃避したり。モックをつくり始めてからも、「デフォルメ感やサイズをどうする? 素材は?」などなど試行錯誤を繰り返す日々……。

工作用紙でつくったジオラマのモック(完成見本模型)。

そんなモヤっとしている時に思いついたのが、ひとり考えるより、実体験の話を聞きにいくこと!
思い立ったが吉日で、子ども向け書籍のジオラマ撮影で有名なカメラマンの大畑俊男氏と書籍『どこ?』の編集者の方のご厚意をたより、お話を聞きにいくことにしました。

大畑俊男氏の作品はこちらから:http://www.zo-st.com/works.html

2.制作過程そのものが、宝の山。

お話から、いろいろなアイデアが、アナログからデジタルまでたくさんの工夫や技術によって実現されているのを知って、「これはもう、このお話そのものが宝の山だ!」と感動。

ならば、私たちがこれからつくるジオラマも、きちんと情報資産となるように残したいと「展示イベントをやろう!」と呼びかけたのが、この展示+トークイベントを開催するそもそものきっかけとなりました。
これが2年前で、振り返れば結構な時間が経過しましたが、企画が進むたびに、あらたにいろいろな発見があり、いまも実物をみるとドキドキします。(締め切りや予算などの思い出とともに別の意味でのドキドキも……)

撮影現場はこんな感じ。

デザイナー 中村友紀子
「今回初めてこんな大きなジオラマをつくって撮影するにあたり、撮影現場は毎回驚きや発見の連続でした。松浦さんのジオラマの完成度、大畑さんの撮影技術、これをこの現場だけで終わらせてしまうのはもったいないと感じていました。
特に私が驚いたことは、同じキャラクターや建物でも光の当て方や角度次第で表情が全く変わってしまうことでした。なので、撮影でできた写真はその表情の一部でしかありません。
展示をやるにあたって、そういったたくさんの表情も見てもらえたらと考えました。
実際展示のときもお客さまがジオラマの周りをぐるぐる回って角度を変えてご覧になっていたり、展示している写真とジオラマを見比べたりしている姿が印象的でした。」

まっすぐ立っているように見える写真も、実物はこんなに前傾。消失点もスケールの違いでかなり変わります。

そんなたくさんの宝の山の発見と1年半の制作過程の記録が、今回の展示につながったわけですが、実物をご覧になった方からの感想を読むと、私たちのドキドキが伝わったようでなによりでした!(アンケートは最後に記載)

3.撮影のもう一つの撮影・カメラマンまなてぃ。

こうして記録することになった撮影の裏側が、今回の展示目玉の一つ。コンセント デザイナーのまなてぃこと上田さんを中心に撮影工程を記録していきましたが、その写真総数は、なんと498枚!(iPhoneなどで撮影したもの合わせたら550枚以上!!)

カメラマン大畑氏にご許可いただいて、実際の撮影と準備をしながら、その撮影の裏側をまた撮影するという、何ともややこしい撮影現場。展示に採用する写真のセレクトも大仕事でした……!

撮影現場で、急遽色を塗り直したり……。

上記の写真のように撮影現場では、セッティングして撮影するだけでなく、ライティングを見て、その場でジオラマの色を塗り直したり、移動時に破損した箇所を修復したり、人形のポーズをアングルに合わせて調整したり、やることがたくさんあります。限られたスタッフで、1日で3号分の表紙ビジュアルを撮影するという超タイトなスケジュール。そんな中、撮影の裏側記録を撮るのはほんと大変でした。

まなてぃ(上田彩子)
「その日の撮影のおおまかな段取りを確認・把握した上で記録を撮ることは、予想以上にバタバタとせわしないものでした。
各号で見せたいところも変わるので、キャラクターの動作や時間軸で変化する照明の効果的な見せ方などを、カメラマン大畑さんの動きを参考にしたり、ときには何をしているのか、それによってどんな効果がうまれるのかをお聞きしながら撮りました。
ジオラマ上部から記録写真を撮っているときは脚立に乗っていたのですが、今、デジカメを落としたら大惨事だな……と緊張感をもちながらの記録係でした。
イベント当日、大畑さんから“いろんなシーンも撮ってたんですね、こういう記録があるのは新鮮だな〜。でもすごくいいですね”と言っていただき、撮っていて良かったなと嬉しくなりました。」

まなてぃが記録撮影しているところもパシャリ。(撮影山本)

4.ど真ん中にジオラマを設置。amuの空間を活かす。

と、そんな感じで2年前からコツコツと記録してきたジオラマの制作工程。
平日1日だけの展示ということで、できるだけいろいろな人の記憶に残るようにしたいと考え、会場のamu1Fホールのど真ん中にドドーンとジオラマのまちを設置!! 周りを、撮影工程の写真パネルと、実際に書籍表紙に採用された写真とで囲むというレイアウトにしました。

第二部のイベント準備のためのクローズ中にもお客さまが。

ジオラマをホールのど真ん中に配置したのは、まち全体を表現したジオラマの全貌を見てもらいたいという想いからです。書籍表紙ではジオラマのまちの一部分を切り出している表紙が多いため、360度好きな角度から見ることができるのは、今回の展示ならでは。ジオラマを制作してくださった造形作家の松浦さんのご厚意で、ケースに入れずに展示できたので間近で細部を覗き込むことができるし、amuの2階に上がれば上から見下ろす形でジオラマのまちの全貌が楽しめる。ジオラマをいろいろな角度から体感できる展示にしたことで、来場者からの評価も高く、本当によかった!
来場者からのアンケートでは、こうした展示空間に対してのコメントもたくさん寄せられ、amuで開催できてよかったなぁ。amuっていい空間だなーとあらためて思いました。

ちなみに設営時は巨大脚立に立ってライトを調整したりと、新入社員だけどイベントでは百戦錬磨なディレクター 山崎くんが大活躍でした。

身長を軽く超える巨大脚立。かなりこわい。

デザイナー 小林美子
「撮影工程の写真パネルを設置する椅子の高さが、思ったより低かったため、パネルの文章が読みにくいことが前日夜の設営時に発覚! まなてぃさんに急遽、パネル12点すべての紙面レイアウトを修正してもらい当日の朝に差し替えました。またメインのジオラマもパーツの数が多く細かいため、すべての梱包を解いてテーブルに配置するのに想定よりも時間がかかったりと、展示の開始時間ギリギリまでスタッフ全員がいろいろとバタバタしましたが、なんとか間に合いホッとしました。」

ディレクター 佐藤三千恵
「会場に来ていただいた方の反応やアンケートのコメントなどを見ると、自分が思っていた以上にジオラマが老若男女万人受けするネタなのだと感じました。“子ども向け”のみにあらず、大人が目を輝かせてジオラマをいろいろな確度から眺めたり、手に取っているシーンはこのジオラマ展示がエンターテイメントとして成り立っているな〜と感じた瞬間です。」

ディレクター 山崎貴史
「準備の時はどれくらいお越しいただけるのかドキドキでしたが、当日、来場者の方の様子を見ていると、ジオラマやパネルを囲んで話が非常に盛り上がっているのが印象的でした。特に平面で見えるパネルだけでなく実際に3Dのオブジェクトがあることで、文字通り多角的な見方ができるんだなと実感しました。」

佐々木くん撮影の全天球で撮ったジオラマ。RICOH THETAのアプリを使って見ると、まるでジオラマの世界に入ったかのよう……!(写真下)

5.展示を終えて。

本来ならばつくったものが発行されて世に出れば終わりですが、今回のように展示を開催することで、そこからまたあらたな世界を広げられるのでは、と感じたイベントでした。
宣伝効果の大きさも実感したので、企画・デザイン・宣伝までのパッケージとして、今後もやっていけるかも?? と可能性を感じたり。第二回、第三回とシリーズ化してつなげていければよいなと思っています。

最後に、アンケートに寄せられた来場者の方々からのコメントを一部紹介して終わります!

[展示についてのアンケートコメント抜粋]
・温かい雰囲気で心が和みました。ありがとうございます。(編集者)
・実際の本も一緒に見ることができたら、もっとよかったです。とても楽しい気持ちになれる展示でした!!(イラストレーター)
・子どもさんがはしゃいでみていて、そこまでも含めていい空気でした。(会社員)
・とても素敵な展示でした。なかなかこうした展示は拝見する機会が少ないのでとても貴重でした。(イラストレーター)
・お子さんが楽しそうでよかったですー(会社員)
・子どもも大変興味をもって見ていました。ありがとうございました。素敵な世界が広がっていました。(主婦)
・建物の空間も楽しかったです。絵を描きたくなりました。制作過程、撮影方法などモノをつくっていく工夫などはとても興味深く思いました。(40代男性)

後編では第二部のトークイベントについてやamuとの連携などを中心にレポートしますのでお楽しみに!

イベントメンバー:山本泰子、中村友紀子、上田彩子、小林美子佐藤三千恵、山崎貴史(以上、コンセント)/古賀一孝、今野綾花(以上、amu)
掲載写真:山崎貴史岩楯ユカ、上田彩子、小林美子、山本泰子
全天球写真:佐々木未来也渡邊徹
Special Thanks:カメラマン 大畑俊男さま、造形作家 松浦由美子さま