2015/06/04 15:18
こんにちは。サービスデザイナーの高石です。
順調に回を重ねております「Service Design Salon」。3月17日にUXD initiative と合同で開催した第6回のレポートをお送りします。
テーマは「サービスデザイン思考と学び」。コンセント代表の長谷川と千葉工業大学の山崎教授、安藤准教授によるパネルトークの後、参加者も交えてディスカッションを深め、最後に学生さんたちによるサービスデザインのパネル発表、という構成で進みました。
まず3人それぞれ、テーマに関連する話題提供からスタート。
トップバッターの長谷川からは、「サービスデザイン思考と学び」と題し、コンセントが業務を行うなかで感じているスキル向上について。
コンセントのService Design divisionには、エディトリアルデザイナーだったりディレクターだったり、多様な出自のメンバーがいます。スキルはさまざまで、最初からサービスデザイン全体に通じていたデザイナーはいません。OJT的に学ぶ面が大きいのですが、クライアントワークである以上、学びよりもアウトプットの質を優先するため、チーム編成、クオリティチェックなどをきちんと行いながら、クオリティと生産的な学びを両立する工夫をしています。
ほかに、継続的に幅広いインプットを続け複雑化する課題にも対応できるだけの語彙を増やすことの重要性や、新しい価値を世の中とつなげて考えられるような全体視点を獲得することの難しさについてなど、さまざまな課題提起がありました。とくに、これまで重要だったIA的側面からのナビゲーションの設計がある程度成熟した今、コンテンツとユーザーの意味的なインタラクションも含めた、コンテンツ自体のデザインへ踏み込んでやっていくべきではないかということ、新しい価値をつくるためには、完成形の追求ではなく失敗も含めプロトタイピングを行ったプロセス自体を共有し、先に進むことに価値があるのではないか、といった話が印象的でした。
続いては安藤先生による「サービスデザイン思考?」。
まだ自分のなかで揉むことができていないが、と前置きした上で、UXという概念が企業と関わりが深くなってきたなかで得た気づきを共有してくださいました。
サービスの計画対象には「企画」「構築」「運用」の3つがあり、相互に作用し合うものなので個別に取り上げるべきではないが、教育の現場ではどこかにフォーカスをせざるを得ない。また、企画・構築はなんとかできるが、「運用」は踏み込んで実践することがなかなか難しいと感じていらっしゃるとのこと。
ここで、「サービスとは客を満足させるものと思われているが、その本質は客と提供者がお互いを試し、見極める“闘い”である」という山内裕先生の著書『闘争としてのサービス』をとりあげながら、『「どM」になる』というキーワードが。
サービスデザインを実践する上では「人を見る」ことがコアにあって、従来の見方・やり方ではこぼれ落ちてしまった価値をすくう必要があり、本当の事象を「本当に真面目=ど真面目=どM」になって見ていく必要がある、ということ。「ユーザーをどMに調べ、それに基づいてデザイナーにつくってもらうのが自分の役割」と話してくださいました。
最後に山崎先生による「サービスデザイン思考と学び」。
サービスデザインの方法論はアイディアを出すために役立つし、デザイナーでなくても重要なので、大学での授業に取り入れてきた。ただ、結果をみると手法をうわべだけなぞってやっている。企業に対して学生がプレゼンテーションを行うと、自分自身がいいと思っていないのに手法だけなぞって発表している、という事実に気づかされる。その状況に危機感をもち、山崎研究室では「バカになる」をテーマにした合宿をされたそう。
「バカ」というのは、本気でテーマに向き合い、自分をさらけ出し、自分一人きりでも「絶対にいい」と信じられることを実践する姿勢のことだそうです。
2015年春合宿では、とあるホテルを対象に、チームに分かれてサービス改善提案を実施。
学生たちは、まずいろいろな職種のスタッフに徹底的にインタビュー。みなとても正直に答えてくださり、それぞれのホテルへの想いを知ることができたことで、自分たちもホテルを愛することが大事なんだと実感できたそう。
最後にスタッフたちの前で社長にプレゼン。
さまざまなアイディアをもっていたが、それを提案したり、実現することができずにいたスタッフたちは、それを学生が社長の前でプレゼンしたことをとても喜んでくださったそうです。
表面的に手法をなぞってまとめていたグループもあったそうですが、「それは自分たちの教育のダメな点」と振り返っていらっしゃいました。
ディスカッションタイムにうつると、まず「バカになるとは」で議論が盛り上がりました。
人から見るとバカみたいに見えるかもしれないが、思いにまっすぐに新しいことを一生懸命やること、小さいフレームにおさまらずに踏み出す勇気、対象に真摯に向き合うこと=愛ではないか、などなど出ましたが、「バカとは、を定義するとそのフレームに収まってしまいそうだから、定まっていない感じがいいのでは」という声も。なるほど。
学生さんからの「企業と取り組む際、自分がおもしろい! やってみたい! と思ったことでも、運用や実装を検討していくとどんどん無難な案になってしまうのが悩み」という問いには、「そんなことを考える必要はない! おもしろいと思うならつくってみればいい」(安藤先生)、「楽しんでいる様子を周囲に見せるのは説得力になるし早い。みんなにとって問題になりそうなことは、めちゃめちゃチャンスだ」(山崎先生)、「物事を考えるときに視点をずらしていくと、ごく基本的だが見落としていたような解が出てくるときがある。まだ見ぬ青い鳥をいるはずだと信じて探し続けていくように信念をもてば、たががあるとは思わないのでは」(長谷川)という熱いエールが。
最後に山崎先生からの「2015年春合宿でつくづく思ったのが“運用”は重要ということ。限られた人たちでどうするのか、を解決するのは大切」「(先生自身がコンサルしてもよかったが、)学生たちがやった方がホテルスタッフの方のモチベーションが上がるし、モラルも向上すると思った。学生にもリアルな場を体験させたかった」というお話で一区切りしました。
続いて、千葉工業大学の学生さんたちのパネル発表にうつりました。
3年後期の「情報デザイン演習3」の授業で、企業や大学の協力を得てリサーチ等を行いながら課題の発見と解決に取り組んだものです。「千葉工業大学近くの“献血ルーム”のサービス提案」「新たなキュレーションサービスの提案」「千葉工業大学の入試提案」の3テーマに分かれ、11名がパネルを並べ、参加者が自由に立ち寄って提案内容を聞き、質疑応答するスタイルで行いました。
いかがでしたか?
ふだん実務の中でサービスデザインを行っているので、「学び」という視点は新鮮に感じましたが、よくよく考えてみると日々学ぶことだらけです。
また、「どMになる」「バカになる」といった言葉で三者三様にサービスデザインを語ってくださいましたが、対象に真剣に向かい合い、いいと信じることを実践し、失敗を恐れずそこから学ぶことを重視するなど、通じるものがあるなと感じました。
学生さんの発表をまとめて聞くことができ、クオリティの高さや、いい意味での「青さ・初々しさ」が刺激になりました!
Service Design Salonで一緒にディスカッションしませんか?
今後もさまざまなテーマでService Design Salonを開催予定です。
直近では、「公共のためのデザインの可能性」をテーマとして、6月16日にUXD initiativeとの共催にて「Service Design Salon Vol.8」を開催します。
現時点(6月4日)で残り1席となっておりますが、ご興味のある方はぜひ以下のページにて詳細をご確認ください。
⇒ Service Design Salon Vol.8/第18回UXD initiative研究会 開催のお知らせ
なお、Service Design Salonの情報は、コンセントの公式Facebookページにて随時告知しておりますので合わせてチェックいただければ幸いです。
⇒ コンセントの公式Facebookページ
【関連リンク】
⇒ オープンな勉強会「Service Design Salon」
⇒ Service Design Salon vol.4 レポート
⇒ 〜日本の公園から考える〜Service Design Salon vol.5 レポート
⇒ ~UX and Emerging Technologies~Service Design Salon vol.7 レポート