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AZ GROUP INTERVIEW
特集「AZグループをひも解く」 インタビュー:1
グループの「5年後」を考えて
「ふつうの人々の、ふだんの情報生活がより豊かで、美しく、創造的なものになること。」
このグループミッションが、今のAZグループの組織体や事業、活動にどう生きているのか。なぜ多目的クリエイティブ・スペース「amu」(以下、「amu」)があったり、京都やパリに支局をつくったのか。
グループの持株会社である株式会社AZホールディングスの社長室室長、安部さんの捉え方から探ってみました。
安部 綾さん Aya Abe
株式会社AZホールディングス 執行役員/社長室 室長
Q. ふだんの仕事を教えてください。
社長室の業務の特性だと思いますが、社長がなにかを始めたいと思ったときにすぐに行動できるようにしています。たとえば、新たな会社をグループに迎えたり、新会社を設立したり、京都やパリなどに支局をもつといったときなど。
社長には、「グループの5年後のことを考えなさい」と言われています。漠然としているし制限がない分大変ですが、それを日々の仕事に落とし込むのが仕事です。
※所属先は、2015年1月取材時点のものです。
ふつうの人々の、ふだんの情報生活が より豊かで、美しく、創造的なものになること。
岩楯AZグループのミッションを安部さんはどう解釈されていますか?
安部さんAZグループ各社の人や仕事を見ていて感じることなのですが、みんな、読む人や使う人のことを一番に考えているなと思うんですね。もちろん情報を発信する企業側のビジネスや考えがあるのでそれを汲み取りながらではありますが。「読む人が本当に欲しい情報か」といった本質的なところから考えて、エンドユーザーにとっていい体験となることを追求している。
AZグループ各社に共通していることは、それぞれの事業分野において「どうしたら、ふだんの生活が豊かになるのか」を考えていること。5社それぞれの事業領域自体が「ふつうの日常のためのこと」ですしね。デザイナーや編集者だったらもう少し尖っていてもよさそうですが、積み上げていく地道さがあるなと思います。
岩楯安部さんご自身が、ふだんの仕事の中でミッションを意識されているのはどんなときでしょうか?
安部さん「なんの意味があるのか」とか「それをやることで誰が嬉しいのか」ということは、意識しなくともふつうに考えています。それに、AZグループだけではなく、他の企業が始めたビジネスにおいても「誰が嬉しいのか」「このビジネスモデルはどうなのか」といったことは気になるんですよね。
籔内社長(AZホールディングス 代表取締役 社長)がいつも言っていることに、「関係者全員がハッピーじゃないとダメだよね」という言葉があります。企業だけが利益を得るようなビジネスモデルももちろんありますが、ミッションの中の「ふつうの人々」にはエンドユーザーはもちろん、一緒にモノやサービスをつくりだす企業や関係者全員が含まれる。だから「関係者全員がハッピーになること」が前提なんですよね。
岩楯AZグループにはいろんな事業会社があったり、「amu」という活動体もあります。どんなことを目指していこうとしての形なのでしょうか?
安部さん目指すところはおそらくミッションそのもの。「カルチャーコンプレックス」と呼んでいますが、「関係者の中に豊かな土壌が広がって、さまざまなお花が豊かに咲いている状態」に向かって進んでいると思います。グループの形自体は方法論。会社が何社あるかは途中経過でしかなく、状況に応じて形は変わっていくべきだなと。
岩楯「amu」や、京都とパリに支局をもっていることは、現在のグループの形の特徴の一つだと思うのですが、つくった背景にはどのような考えがあると思っていますか?
安部さん器を広げたんだと思っています。それまで事業各社が存在していた生態系を外にもっと広げたイメージ。
「amu」や東京以外に拠点をもつことで、たとえば、コンセントやPIVOTの場合はBtoBビジネスなので、これまではクライアントである企業とコンセントという生態系だったけれど、ステークホルダーをより広げていけることになる。ビー・エヌ・エヌ新社やフィルムアート社といった出版社であれば、「amu」があることは自分たち専用のショールームスペースをもったという捉え方もできますし、京都やパリに物理的な拠点をもつことで、それまで充分アプローチしきれていなかった地域のコンテンツや読者との関係をつくる可能性が広がります。BtoB、BtoCビジネスに限らず、器を広げたと言えることだと思っています。また、草冠は「amu」オープン後に設立されましたが、フラワーショップやレッスンを通し、逆に「amu」自体の可能性を広げたことになります。
岩楯実際に広がったと感じることはありますか?
安部さんたとえば昨年夏に、「amu」の代表として石戸奈々子さん(NPO法人CANVAS理事長、株式会社デジタルえほん代表取締役)をお迎えできたことも、広がったことの一つです。わかりやすく象徴的な場所があることで、関与できる人の幅や、発信できるコンテンツの領域が広がりました。
時代が移り変わる中で、今までやってきたところにずっといられるわけではないので、新しい足がかりをつかんだり、新たなことにチャレンジしたりということを、たとえ小さな規模でもやり続けていくことは、なにかにつながっていくと思うんですよね。実際、新しい事業の立ち上げの話や、新しいメディアをつくる話も動き始めています。
最初から意図していたかどうかに限らず、結果として新しいことが起ころうとしているのはいいことだなと思っています。
岩楯最後に、安部さんがAZグループに所属している中でやっていきたいことを教えてください。
安部さん仕事をするときに思っていることなんですが、たいていのことは私より他の人の方が上手にできるので、そこはお任せして、人がやらないことや気づかないこと、見落としていることを見ていようと。
社長室の仕事をしながら、平日の夜間と土日に大学院に通ってMBA取得を目指したのも、そうした考えがあったからなんですよね。マネジメントの仕事をしていながらもこれまで体系立てて勉強したことがなかったので、自分のやっていることがどういう位置づけなのか、会社自体がやろうとしていることは時代の中で言うとどういうことなのかを知りたいと思ったんです。
私がアレフ・ゼロ(現 コンセント)に入社した時の採用枠だったプロジェクトマネージャー職もそれまでは存在しなかった職種でしたし、現在所属している社長室という部署ももともとはありませんでした。「やれる人がいないからやって」と言われて始めたこともありますが、自分自身でも「これはあった方がいいからやろう」という考えで動き、会社の中に取り入れていくようにしています。そして取り入れた後は、他に上手にできる人にお任せして、自分はまたみんなが見ていないところを見ていく。それが自分の役割かなと思っています。マイナー好きなので「みんながやっていることはもういいじゃん!」みたいなところもあるので(笑)。(終わり)
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特集「AZグループをひも解く」 ~ Interview:働いている人の考えから探る~