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AZ GROUP INTERVIEW
特集「AZグループをひも解く」 インタビュー:
Voice from the branch offices
活動やネットワークを広げる拠点として
AZグループには、グループミッションである「ふつうの人々の、ふだんの情報生活がより豊かで、美しく、創造的なものになること。」の実現に向けての活動拠点として、京都とパリにも支局があります。
なぜ、京都とパリなのか。グループにとってどんな機能となっているのか。
それぞれの支局の駐在員である、AZホールディングス 社長室の宮迫さんと関本さんにメールでインタビュー。二人の考えを届けてもらいました。
from AZ Kyoto 京都支部
宮迫 憲彦さん Norihiko Miyasako
株式会社AZホールディングス 社長室
Q. ふだんの仕事を教えてください。
2014年4月に京都オフィスが本格的に稼働し、今はメインで出版社の仕事をしています。したがってビー・エヌ・エヌ新社(以下、BNN新社)とフィルムアート社の人との関係性が中心で、両社の営業会議や編集会議にも参加しています。
遠隔地なので社内情報共有やコミュニケーションのためのツールとして、Skypeを中心にLINEやSales forceなど複数のツールを利用して仕事を進めています。
また、月に一度東京へ行くので、そのときに食事などをしながら関係性を深めています。
社外では、書店員の方との接点が一番多いです。BNN新社とフィルムアート社のファンの書店員の方もたくさんいらっしゃって、京都に拠点ができたことを喜んでくださる方がほとんどです。
その他、取次や大学、映画館などにお邪魔することもあります。
京都・大阪・兵庫が主な活動エリアですが、奈良・和歌山・滋賀にも行くことがあります。ひとくちに関西といっても、それぞれの府県に個性があるので外に出るのが楽しいです。
オフィスでPCを触っているのもいいですが、外に出る方が自分には合っていると思います。なので、今の環境には満足しています。
※所属先は、2015年1月取材時点のものです。
Q1. AZグループにおいて、京都支局が担っている役割をどのように考えていますか?
もう一つの拠点になる、ということだと思っています。
東京~京都間は新幹線でわずか2時間。AZグループの方はクライアントの打ち合わせなどのために出張で来るケースが多いと思います。
でも実際に拠点を構えて、そこに腰を据えて働いてみて初めて気づくこと、提案できることも多いのではないでしょうか。またそうすることで、仕事先からの信頼も得られます。実際この1年でそのように感じることが多かったです。
AZグループの活動の幅を広げるためにも、まさに辞書的な意味で京都が「活動の足場」となることが大事だと思っています。
また、東京以外の場所で働くことができる、というのは働く人にとっては大きな魅力です。
物価や通勤時間、住環境など、あきらかに東京とは違います。大きな商業施設などはありませんし、街で芸能人に会うこともあまりありませんが、たくさんの寺社仏閣や路地、町屋、そして川や山に囲まれた環境で仕事ができるのは幸せなことです。コミュニケーションツールは数多くあるので、遠隔地でも(パリですら)問題なく仕事ができます。
会社にとって従業員への「働き方」の提案の選択肢が一つ増えたということは、とても価値のあることだと思います。
Q2. 京都支局に所属しているからこそ、やってみたいと思っていることを教えてください。
ローカルからの文化発信です。
「東京ではない場所」からなにかを伝える、発信するということはとても大事なことです。グループミッションを達成する上で、欠かせない要素だと思っています。
Q3. グループミッションにおいて、自分や京都支局がどのように機能したいと思っていますか?
「非東京」であること自体が京都支局の強みです(アンチ東京という意味ではなく)。京都という場所で見たこと、感じたことが、グループミッションの達成のために欠かせない資源になると思っています。
「ふつうの人々」は東京にだけいるわけではありません。いわゆる「ふつうの人々の、ふだんの情報生活」を「より豊かで、美しく、創造的なもの」にするためには、まずそのふつうの人々と触れ合うことが大事だと思います。もちろんそれだけではなにも生まれませんので、実際の活動に落とし込んでいく作業が必要です。近いうちに京都を拠点として新規事業が立ち上げられるくらいまでにもっていきたいです。
京都支局は、烏丸通りと仏光寺通りの交差する場所にあるシェアオフィス「share KARASUMA incubation office」内にあります。
オフィス周辺には、通りの名前になっている佛光寺という大きなお寺があり、また、ナガオカケンメイさんのD&Dショップ(D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学)が最近できました。
from AZ Paris パリ支部
関本 あやかさん Ayaka Sekimoto
株式会社AZホールディングス 社長室
Q. ふだんの仕事を教えてください。
主に3種類あります。
まず、AZグループ全体や事業会社各社のプロジェクトの、フランスにおける渉外・コーディネーター業務。ネットワーキング、役員や社員の出張コーディネート、アテンド、交渉、取材、書店への営業や企画提案など内容はさまざまです。
次に出版社の国際版権業務。書籍の版権販売や、外国書籍の翻訳輸入のため、著者や編集者の代わりに外国出版社との交渉を行うことが主な内容です。フランスを除く取引先とは年に1回、国際ブックフェアで会うのみで、基本的にはメールでのやりとりになります。
それから支局の管理運営。フランスに登記している駐在員事務所としての税務的な手続きや、古い建物なので思いがけないメンテナンス・修繕が求められることがあります。本社とともに、現地会計士や大家さんとの体制を整えながら対応をしています。
※所属先は、2015年1月取材時点のものです。
Q1. AZグループにおいて、パリ支局が担っている役割をどのように考えていますか?
AZグループ全体の、国際ネットワーク構築を行うことが、パリ支局の主な役割です。
あらゆる機会において、「編集」「グラフィックデザイン」「出版」「クラフト」「植物」「クリエイティブ・スペース」「サービスデザイン」などをキーワードに、AZグループと親和性の高いフランスの企業や機関、個人、フランスを拠点にされている日本人の方々とお話をさせていただきます。そうした出会いをどのように育てていけばよいか、信頼関係を構築することがパリ支局の一番の課題です。
社内への情報共有や、取材の提案、アウトプットの可能性によっては役員(社員)の欧州への往来を企画提案することもあります。すでに国際事業を確立しているビー・エヌ・エヌ新社とは、担当部署や欧州のステークホルダーとともに、具体的な数字に基づいた市場拡大の可能性を探っています。社内にチームをつくり、企画をつくっていかなければ、よい出会いがあっても少しずつはかないものになってしまいます。
AZグループは複数のメディアや発表の場をもっていて、「アウトプット」の手段がたくさんあるので、好奇心のアンテナをなくさず、つなぐ役割をきちんと担っていきたいです。
Q2. パリ支局に所属しているからこそ、やってみたいと思っていることを教えてください。
出版に携わる日系企業の駐在員として、さまざまな人にアクセスできる切符があるので、もっと行動範囲を広げお会いしてみたいです。
個人的な興味では、特に「本」と子どもをつなぐ仕事や、読むにとどまらない体験を通して、子どもの想像力を豊かにする活動に携わっている方。フランスはアーカイブズ学における先進国なので、国立文書館や企業の史料編纂室で活躍されている方など。
AZグループにとっても財産となるように、できるかぎり記録を残していきたいと思っています。そのためには、語学力、調査、執筆、撮影など、質問し伝える力を磨かなければならないと思っています。
Q3. グループミッションにおいて、自分やパリ支局がどのように機能したいと思っていますか?
「ふつうの人々の、ふだんの情報生活がより豊かで、美しく、創造的なものになること。」がAZグループのミッションです。
ふつうの生活者がそれぞれの望むような、豊かで美しく創造的な未来へ向かってほしい。そのためのプロセスは、たとえば、情報が素直に伝わる仕組みを得ることによって。表現の方法や技術を、読書や手を動かすことで体得することによって。あるいは考える場や仲間を得ることによって。人々が「方法」を学ぶことのできる機会を提供したい。こうした願いが、各社それぞれの活動のベースにあるのだと思います。
AZグループの活動やミッションは、海を越え海外の方にも賛同いただけたり、興味をもっていただけたりする、普遍的なものだと思います。むしろ、同じように生活者に向き合って活動されている企業や機関が海外にもたくさんあります。国内ではすでに、企業や教育機関、NPOなど、AZグループに賛同いただける方々とプロジェクトを企画運営していますが(いくつかは多目的クリエイティブ・スペース「amu」を発表の場として、事例紹介しています)、海外の企業や機関ともなんらかの形で提携し、互いに活動の場を広げられたらと。
きっかけをつくり、運営をする鎖場として、パリ支局は機能しなければと思います。
さらに、海外に向かうことは活動規模の拡大以上に、あらゆる多様性と向き合わねばならないところに必需性があると思います。特に欧州では、たくさんの言語、宗教、国家とが共存し、パリにもさまざまな肌の色、文化があり、ごく日常的に、情報を伝えたり受け取る行為において、難しさと直面することができます。欧州の生活者は自然と生活の中で、異なることを前提に対話をする工夫をしていて、そこから私たちが学べることが多くあると思います(たとえば市民という共通概念をもつことなど)。
海外との提携事業やプロジェクトを通し、根本の部分での多様性と向き合うことで、私たちのもつ技術やリソースが、国際規格化といったことなど、国際社会の中で役立てられるよう発展することができたらと。そのために、コーディネーターとしてプロジェクトを増やして、まずは社内に還元できるよう、環境整備をできたらいいなと考えています。
パリ支局のミッションとして、豊かに根を張るような、国際ネットワークを構築するというのは、こうした視点でのプロジェクトが積み重なっていくという状態だと思います。茫洋としているようですが、地道に、行動で可視化することを心がけながら成長させていきたいです。
オフィスは、パリの6区、サン・ミッシェル駅のすぐそばにあります。セーヌ川を挟んだ向かいには、シテ島とノートルダム大聖堂があり、1年を通じて観光客の姿を多く見かけます。何本かの通りでは、観光客向けの土産物屋やレストランが横並びに連なっています。また、カルティエ・ラタンと呼ばれる、歴史ある学生街でもあります。パリ大学をはじめとする教育機関、映画館、書店。それから出版社のオフィスも昔から多いようです。
パリ支局のオフィスが入っているのは築数百年という古い建物で、静かな中庭が通りの喧噪を隔ててくれます。オフィスと住居とが半分ずつくらい入っているでしょうか。管理人の方がいつも共同スペースを清潔にしてくれていて、よく掃除機の音や石けんの匂いがします。
石づくりのためかオフィスの中は涼しくて、パリに赴任して間もない頃は、暖をとりに、セーヌ河岸の日なたへお弁当をもって出かけたものでした。ひっきりなしに遊覧船が来るので恥ずかしかったですが、いろいろなことが新鮮に感じられて、懐かしい思い出です。足をのばせば、パリで一番古い橋のポン・ヌフや、エコール・デ・ボザール(国立高等美術学校)の学生たちでにぎわうカフェ、ギャラリーの立ち並ぶ通りがあります。シテ島の最高裁判所の裏の広場にはいつもがらんとした静寂があって、お気に入りのスポットです。
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特集「AZグループをひも解く」 ~ Interview:働いている人の考えから探る~