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AZ GROUP INTERVIEW

特集「AZグループをひも解く」 インタビュー:4

「ふつうの感覚」を大切に、コミュニケーションを考え直す

CONCENT, Inc. [株式会社コンセント]

コンセントには、過去の特集で紹介してきたサービスデザインチームEIAチームコンテントストラテジーチームの他に、実際のアウトプットをつくり出すインタラクションデザインチーム(以下、Ix Team)とエディトリアルデザインチーム(以下、Edi Team)があります。
両チームはどんなチームか、仕事にどのように向き合っているのかを、それぞれのチームのマネージャー、リーダーでもあるEdi Teamのアートディレクター 筒井さんと、Ix Teamのプロジェクトマネージャー 山道さんの二人に聞きました。
二人の話から、モノゴトの捉え方やデザインの本質的な価値、コミュニケーションの意味が見えてきました。

筒井 美希さん Miki Tsutsui

株式会社コンセント エディトリアルデザインチーム マネージャー/アートディレクター

Q. ふだんの仕事を教えてください。

職種はアートディレクターです。
現在、担当しているプロジェクトには、企画・編集から撮影、デザインまでを手がける大学案内や、国内外での撮影を伴うカタログ、出版社と一緒につくる雑誌や書籍といったものがあります。たとえば大学案内のプロジェクトでは、コンテントストラテジーチームからコンテンツディレクターも入って、それぞれの専門領域からの視点をもちより、内容と見せ方双方から企画を一緒に考えたりするなど、他のチームと連携することもあります。

所属は、紙媒体を中心としたEdi Teamではあるのですが、Webサイトの仕事をやることも増えてきました。わたしがアートディレクターとして入っているのは、サイトまるごとではなく、少数ページのデザインとコンテンツ制作をかけ合わせたプロジェクトが多いです。雑誌や書籍など紙媒体のプロジェクトで培ってきた「取材や撮影、イラストをディレクションしてアウトプットに落とし込む」ことを、Webというプラットフォームでやっているという感覚でやらせていただいていて、デザインの対象が以前と比べて広がってきたと感じています。
また、Edi Teamのマネージャーとしての業務もしています。

武田 善さん Masaru Takeda

株式会社コンセント インタラクションデザインチーム リーダー/プロジェクトマネージャー

Q. ふだんの仕事を教えてください。

Ix Team所属で、Webのプロジェクトマネージャーという立場にいます。クライアントの話や課題をお聞きして、それをWebサイトをはじめとしたコミュニケーションでどう解決するのかを考えるのが自分の仕事だと思っています。具体的には、クライアントが目指す目的地を見据え、そこに至るまでの道順や最適なメンバーを考えたり、必要な資源を調整したり。
担当しているプロジェクトには、日本や海外のさまざまな地域に支社をもつ大手企業のコーポレートサイトにおける、事業部や支社ごとにある課題に対するWebの見地からの解決だったり、子ども向け学習教材の開発があります。

以前はCMSが入るコーポレートサイトをつくったり、リニューアルのため何万件とあるデータを移行するといったプロジェクトを担当していましたが、最近は純粋にWebサイトをつくるというのはあまりなく、「これはどういう問題なのか」と本質的なところを考えるものが多いです。Webの技術は使うものの、アウトプットとしてはWebサイトではないという。クライアントや社会から求められるものが変わってきているのかもしれません。

※所属先は、2015年1月取材時点のものです。

チームマネジメントの仕事からひも解く

視野を広げたマネジメントを

岩楯筒井さんは、Edi Teamのマネージャーとしては、どんな仕事をされてるんでしょうか?

筒井さん2014年4月にマネージャーになったのですが、Edi Teamを1人で見るマネージャーという役割は初めてできたので、かなり手探りでやっています。なので「こんな仕事です」とはなかなか言いきれないのですが(笑)。

Edi Teamには現在60人ほどのメンバーがいて、その中にリーダーを筆頭とした3名〜10名ほどのチームが9つあります。リーダーは自分のチームメンバー一人一人をしっかりと見ることはできるのですが、他のチームについては自分のチームメンバーほどは詳しく見ることができない。一緒に仕事をしたことがある人とない人とでは、どうしても理解度に差ができてしまうので、全体を見渡せるマネージャーのポジションができたのはいいことだと思っています。

昔はアートディレクターとデザイナーで雑誌や書籍をデザインするという仕事が多かったこともあり、Edi Teamは基本的にデザイナーという一つの職種の集合体。でもここ数年で、仕事の種類や、求められることの幅が広がってきて、一口にアートディレクター、デザイナーと言っても、人によって得意不得意や考え方、スキルが本当にさまざまになってきました。これはEdi Teamが直面している一つの問題でもあると思っているのですが、デザイナーが自分の枠をもっと広げる必要があるので、マネージメントする側も視野を広げて、一人一人の細かい適性を見極めることが必要だと思うようになりました。

志向性が活きる仕事に

岩楯Ix Teamのリーダーである山道さんの仕事を教えてください。

山道さんIx Teamも60名ほどでさらに9つのチームに細分化されています。僕はその中の一つのチームのリーダーで、現時点で8人のメンバーがいます。

これまでチームをもった経験があまりなく、あっても似た職種のメンバー数名という感じだったので、ディレクターやエンジニアなどデザイナー以外のメンバーが入ったときに統制がとれるのか、最初は心配でした。でもいざスタートしたら、チームとして自分が進んでいきたい方向性をみんなが理解し協力してくれて、非常にいい一年になったと感じています。

リーダーとして意識したことは、仕事をドライに割り当てるのではなくて、個々のメンバーにとってその仕事がどう有益に働くかを一緒に考えるということです。また、日頃の言動や会話などからみんなの個性や志向性を把握しておいて、Ix 各チームリーダーが集まるアサイン、現状共有会議でプロジェクトのアサインを決める際には、志向性に合ったプロジェクトがあれば積極的に手をあげるようにしていました。

岩楯山道さんはHR部のメンバーでもありますが、人事関連の仕事はどんなことをされているんですか?

山道さん今年(2014年度)は、インタラクションデザイン領域の中途採用活動が主でした。前年度もHR部だったので、これまでの求人広告媒体や人材紹介会社との交渉を引き続きやりつつ、今年は違う媒体や手法も試してみたいなと思っていたんですが、前職で人材会社にいた中垣さんがチームメンバーになったこともきっかけとなって、どんな方法がいいかを彼女と一緒に考えて、新たに『Wantedly』などのSNS系メディアにも出稿することを決めました。その結果、デザイナーの採用状況がよくなったんですよ。

岩楯どんなところがよくなったんですか?

山道さんコンセントに興味をもってくれる人が増えたり、もともと興味をもってくれている人からのアプローチが円滑になったりしたんです。また、面接に来てくれた人たちとの、コンセントや仕事に対しての認識の齟齬がすごく少なくて。面接というよりも、非常におもしろい、有意義な顔合わせの機会となりました。もちろん、スキル的な条件が合うかは別の話になりますが。

コンセントの解釈からひも解く

コミュニケーションを見つける会社

岩楯お二人はコンセントのことを、ふだん、どんなふうに周囲に説明していますか?

山道さん僕は、妻も同じ会社にいるので、親戚とかに説明する機会が多いんです。「仕事はなにをしてるの?」「なんでそんな忙しいの?」と(笑)聞かれたりするので。

そういうときには、「コミュニケーションをつくる会社」と説明しています。紙やWebの他、手法や考え方といった触れることができないものも包括して扱っている会社で、広い範囲でコミュニケーションをつくっているんだよと。それだけではわかりづらいかもしれないので、身近にある例えを用いたり。たとえば、僕の祖父母は老齢ですがまだ元気で外出することも多く、PASMOやSuicaなどの電子的なものに触れる機会が増えています。そうしたものを例にとって「使いにくいなと思うことってあるよね? そういう日常の中にある問題に気づいて、こうしたらよくなるんじゃないかということを真剣に考えている会社だよ」と。話す相手によってその時々で例えを考えるんですが、うまくいくときといかないときがあります(笑)。

筒井さん山道さんが言った「コミュニケーションをつくる会社」というのは、「そうそう!」と思ったのでちょっとのっかりますが(笑)。私は、「伝わる、伝えることを担う会社」と紹介しています。

雑誌と書籍のデザインをやりたくてアレフ・ゼロ(現 コンセント)に入社したので、昔も今も変わらず出版関係のお仕事はやらせていただいていますが、「“雑誌をデザインする”ということは、どういうことか」と拡大解釈していくと、「伝えたいことが、きちんと伝わるようにデザインすること」とも言えると思うんですよね。誰かが伝えたいと思ったことの「伝え方」を考える。場合によっては「そもそも何を伝えるか」というところから考えることもあります。伝える手段はいろいろあると思っていて、紙なのかWebサイトなのかいっそイベントなのかといった媒体の違いもそうですが、強く伝えたいのか、弱く伝えたいのか、共感させて伝えたいのか、ドキッとさせて伝えたいのかといったように、さまざまある「感情」も伝える手段の一つかなと。すでに興味があった人に共感させたいのか、思ってもみなかった人に気づかせたいのかでは、違う伝え方が必要だと思うので。

岩楯「コミュニケーションをつくる」ってどういうことなんでしょうかね?

山道さん僕は、クライアントが課題に感じていることに対して、どう解決するかを考える立場ですが、お客さまと話をしていて感じるのは、コミュニケーションが全くないわけではなく、やっていることが最適ではなかったり、足りていなかったり方向性が違っていたりする場合が多いということです。特にシステム関連に言えると思うのですが、組織が大きくなればなるほどルーチンワークが複雑になっていることが多く、僕らはそれを整理したりしています。

そう考えると、コミュニケーションを「つくる」というよりは、「考え直す、見つける、うまく調整する」という方が近いのかもしれません。

どう反応してもらうかを考える。だから「コミュニケーション」

岩楯「コミュニケーションをつくる」という会社は他にもありますが、コンセントはどういうコミュニケーションを目指しているんでしょうかね?

山道さんコンセントは、クライアントやエンドユーザーの求めていることを聞いて考えてデザインしている会社で、独りよがりのものをつくっているわけではないんですよね。「このコミュニケーションで、嬉しい人は誰か、損をしている人は誰か」ということを常に真剣に考えている。

筒井さん「クライアントから「コミュニケーションをうまくデザインしたい」という課題感からオーダーをいただくことは少なくて、「Webサイトをリニューアルしたい」「雑誌や書籍のデザイナーを探している」といった具体的なご相談の方が多いんです。なぜならふつうに生活している人が、自分が直面している物事を「これはコミュニケーションの問題だ!」という視点で考え直す機会は、あまりないからだと思います。

具体的にやりたいことがあるところから仕事は始まるわけですが、デザイナーである私たちはそれを「コミュニケーションの問題」として捉えて解決策を考えることが必要だと思っています。たとえば会社案内のリニューアルの場合、お客さまとお話をする中で、「会社のイメージがきちんと伝わっていない」という問題だと捉えたならば「こういうビジュアルやトンマナにしたら伝わる」とアウトプットをお見せしたり、「そもそもコンテンツの内容が硬すぎる」とか「伝えたいコンセプトに合った切り口が設定されていない」のが問題だと捉えたならば、企画の再検討から提案したり。

特にEdi Teamの仕事はものづくりに近いプロジェクトが多く、お客さまからのご相談は「つくりたい」という気持ちがベースになっていて、課題感が具体的。でも、「つくりたい」=「コミュニケーションをしたい」ということなので、お客さまがしたいことがどういうことかを拡大解釈することが大切なんですよね。本質的なコミュニケーションの問題として捉えてデザインをした方が、アウトプットとしてもいいデザインになると思っています。Edi Teamはそういうアプローチが得意な人が多いんですよね。

雑誌のアートディレクターやデザイナーは、毎週や毎月といったペースで編集者と一緒に雑誌をつくっていて、読者の声や数字などを見ながら編集者と意見を出し合い改善し続けていく。編集者はクライアントではあるものの、並走していく感じや一緒につくる感がすごくあるんですよね。このスタイルを雑誌以外のプロジェクトに充ててみると、お客さまと一緒に戦略を考えてコンテンツをつくりテストをして改善する、と捉えることができるかなと。

ものづくりをベースにしつつ、お客さまと一緒にコミュニケーションについて考え続けていけるのが、Edi Teamメンバーの強みだと思っています。

山道さんコミュニケーションは、一方が発信するだけではなく、他方が反応してくれて初めて生まれるもの。我々がやろうとしている問題解決というのも、いいものを投げるだけではなくて「どう反応してもらうか」ということを発想の中で大事にしているんですよね。だから僕たちがやっていることを表すときに「コミュニケーション」という言葉がしっくりくるんじゃないかと。

ここまで話したことは僕も初めてなので、「こういうことなんだ」と、今の筒井さんの話を聞きながら腑に落ちたのですが(笑)。直接的にこういった話をしたことはないけれど、同じ想いでいるメンバーがコンセントには多いんじゃないかな。メンバーと仕事を日々している中で、独りよがりだと感じたことはないので。

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