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AZ GROUP INTERVIEW

特集「AZグループをひも解く」 インタビュー:2

未来への「知」をつくる、コンテンツの出入り口

Creative space amu [多目的クリエイティブ・スペース アム]

AZグループが運営している多目的クリエイティブ・スペース「amu」(以下、「amu」)。
「未来を編む」をタグラインに掲げ、AZグループが40年以上培ってきた「編集デザイン」という創造的作業を用いて、「人々の“知”をつくる」ことを目的に、さまざまなイベントを企画・開催したり、大学との共同プロジェクトを行っています。
「未来を編む」とはどういうことなのか。「未来」は誰にとってのどんな未来なのか。「amu」があるとどうなるんだろうか。
「amu」のプロジェクトリーダーである古賀さんと、コンテンツディレクターの川崎さんの考えの中から、そんな疑問の回答を見つけていきます。

古賀 一孝さん Kazutaka Koga

株式会社AZホールディングス 執行役員/amu プロジェクトリーダー

Q. 「amu」としてのふだんの仕事を教えてください。

「amu」のマネジメント業務全般を担当しています。また、AZグループの中で「amu」をどう機能させるかを考えたり、体制や評価制度などの仕組みづくりもやっています。

川崎 紀弘さん Norihiro Kawasaki

株式会社AZホールディングス 執行役員/コンテンツディレクター

Q. 「amu」としてのふだんの仕事を教えてください。

コンテンツディレクターとして、イベントを計画して実施しています。「amu」では、石戸奈々子さん(「amu」 代表)や津田広志さん(フィルムアート社 編集長)をはじめ、グループ各社のメンバーがそれぞれの領域でイベントを企画しているのですが、僕が企画するイベントは、「デザイン」と「対話」の領域が多いです。

※所属先は、2015年1月取材時点のものです。

「amu」の解釈からひも解く

コンテンツの出入り口として

岩楯お二人は「amu」をどのように考えていますか?

古賀さん僕は「amu」の立ち上げから関わっていて3年ほど経つのですが、立ち上げ当時は、「amuってなんですか?」と聞かれるたびに「CSR活動の一環」や「R&Dとしての取り組み」と説明していました。

最近では、人や物事、情報を呼び集めて発信していくという意味で、「AZグループにとっての多種多様なコンテンツの出入り口」という言い方をしているのですが、いろんな人の反応を見ていても、この説明の仕方で腑に落ちる人が多い気がしています。

AZグループは「編集デザイン」をベースにした事業をやっていて、やはりコンテンツが大事だなと。「amu」という物理的な場所もそうですが、「Webマガジン」としてリニューアルを計画しているWebサイトも、コンテンツの出入り口として機能させたいと考えています。

岩楯グループにとっては「コンテンツの出入り口」ということですね。グループ以外の人にとっての「amu」はどんな存在だと思いますか?

古賀さん「amu」はリアルな場所をもった活動体で、誰かが一方的に講義を行う場所ではなくて、情報や人が集まり、みなで「知」をつくり出すところなんですよね。「amu」の活動に参加することで、進むべき未来へのきっかけを自分なりにつかめる場所になってほしいと思っています。

イベントからひも解く

岩楯川崎さんは「amu」をどんな存在だと考えていらっしゃいますか?

川崎さんあるイベントの打ち合わせ中に「amuに来る人はどんな人が多いのか」という質問をされてあらためて考えたんだけど、年齢層で言えば30代の人が一番多いんだよね。あとは40代、50代で、20代の社会人が少ない。その理由を考えてみたんだけど、「amu」では「明日、役に立つ」とか「これを身につけると今日こうなる」とか、表面的なことをさらうだけのイベントをあまりやっていないということがあるのかなと。これは、言葉としてうたっているわけじゃないけど、「amu」を立ち上げたときからずっと共通認識としてあることなんだよね。だから、社会人になりたてというのもあって明日役立つノウハウやスキルを吸収しなくちゃいけない状況にある20代の社会人はあまり来ないのかもしれない。一方「amu」に集まる30代の人たちは、ノウハウではない「なにか」が必要なはずだと感じているような人たちなんだよね。

「本質」と言うとおこがましいんだけど、「amu」のイベントに参加すると喉が潤う感じ。カウンターをやっているわけでもなく、結構まっとうなことをやってる。

古賀さん僕は、人には多面性があるので、年齢や社会的なポジションなどに関係なく明日役立つことを知りたいときもあれば、そうではなく人生を考えたいときもあるといったように、モードが関係しているのかなと思っています。「amu」は、後者の長期的な視点で物事を考えているモードのときに来たくなる場所と言えるかもしれません。

川崎さん真面目に考える自分を出せる場所なのかな。ふだんの生活の中で真面目に考える自分を見せるのって気恥ずかしかったりするじゃない? でも、恥ずかしさも取り外して、骨を折るわけでもなくそういう自分を出せるのが「amu」なのかもね。

ミッションからひも解く

「ふだん」につかえるデザイン

岩楯川崎さんは「amu」のコンテンツディレクターですが、これまでどんなイベントを開催されてきたんでしょうか?

川崎さん僕の場合は、「デザイン」領域や「対話」領域のものが多い。「デザイン」とは言っても他でやっていないようなアプローチのものだけど。これまで、広報担当者向けのセミナーやワークショップをいろいろやってきたんだけど、広報担当者は、デザインにおいてはプロではなくて一般の人。でもセミナーを重ねていく中で、デザインの手法や考え方があると彼らにとっても便利だろうなと思ったんだよね。

岩楯デザイナーではない人向けなんですね。「ふだんづかいのデザイン」というシリーズイベントを始められたのも、その想いと関係しているのでしょうか?

川崎さんそう。「デザイン」はプロに頼むだけじゃなくて、料理と同じように自分でやってみたっていいんだよね。誰かになにかをビジュアルで伝えることって、デザイナーじゃない人にとっても日常の中でたくさん起きることだから。それで「ふだんづかい」ができるデザインを、つくるだけじゃなく探したり考えたりという部分も含めて、みんなでやってみようという感じで始めた。

大学でやっている授業も「ふだんづかいのデザイン」に近いかな。「amu」には大学や企業との共同で取り組んでいる「学びのプロジェクト」という教育活動があって、その一環として大学で授業をやっているんだけど。「編集デザイン」の手法を取り入れて、人に伝える、表現するということを実践型で身につけていく授業で、僕は主に「デザイン」の領域を担当してるんだよね。

求められていた「対話」

岩楯「ふつうの人」が「ふだん」につかえるというのが、川崎さんのイベントの特徴なんですね。

川崎さん「対話」の方も、それこそデザインのような特別に感じる領域ではないから、いろんな人に向けてやってる。シリーズイベントとしては「話のアトリエ」や「Self Travel Cafe」、「働く女性のためのセルフメディケーション」とかがあって、切り口はなんでもいけるんだよね。高校生や大学生、社会人との対話があったり、「温活」や「食」をテーマにした女性との対話があったり。

岩楯「対話」をやろうと思ったきっかけはなんですか?

川崎さんさっき話した大学での授業の中で、「対話」をすることに興味のある学生がいたんだよね。その学生は当時、他の大学の友人と「対話部」というユニットを組んで活動していたんだけど、彼と話をしていて「amuでやったら楽しそうだな」と思ったのがきっかけだった。

なぜ「amu」なのかというと、授業の中で学生たちのプレゼンテーションの場として「amu」を使うことがあるんだけど、ふだんの教室とは違う「amu」という場所で「対話」をすることで、学生たちがなにかを感じるということが多かったんだよね。そういう場での対話が求められていたんだなと気づいて。実際、大学やいろんなところから声をかけてもらって、「対話」に関連したイベントをやることも多くなったし。

岩楯もともと「対話」に興味があったんですか?

川崎さんアレフ・ゼロ(現在はコンセント)に所属していた頃に「amu」でセミナーをやることになって、ワークショップとかいろんな手法を知らないといけないと思って調べている中で、「対話」という手法を知ったんだよね。資料とかを見ていたけどやってみないとわからないと思っていた頃に、その手法をやっている「対話部」の学生たちと出会って、彼らとの協同で「対話のアトリエ」をやったのが最初だったね。

対話のアトリエ

始めた当初大学生だった、古瀬正也氏、北側真紀氏、中岡晃也氏の3名から成るユニット「対話部」と、「amu」の川崎による「対話のアトリエ」。2013年3月に始動以来、これまで4回開催。「関心と無関心の間」や「絵本」など、毎回テーマを決め、より豊かな「対話」を行える時間と空間をつくっている。形式もワークショップや展示などさまざまな方法を試している。

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特集「AZグループをひも解く」 ~ Interview:働いている人の考えから探る~

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