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特集「AZグループをひも解く」 インタビュー:2

多目的クリエイティブ・スペース「amu」 未来への「知」をつくる、コンテンツの出入り口

コンテンツ方針からひも解く

コンテンツを担保する「社会性」

岩楯「amu」ブランドのイベントとして大事にしていることを教えてください。

古賀さん「社会性があること」ですね。たとえば、「amu」でやっている、ビー・エヌ・エヌ新社やフィルムアート社の出版記念イベントでも社会の動きを取り入れるようにしていたり、川崎さんの「自分の体と向き合う“温活のススメ”働く女性のためのセルフメディケーション」というイベントでも、単に「冷え対策をしましょう」ではなく、「自分の身体と向き合いながら対話をして、温活=身体を温める習慣づけの重要性を認識しましょう」という社会生活に関連づけるようなものにしています。

なぜならば、先ほども言ったように「amu」をさまざまなコンテンツの出入り口にしたいからなんです。イベントに参加する人にとってはもちろんですが、登壇する人にとっても、「amu」でやっているコンテンツの質は、自分が登壇する場所としてふさわしいか判断する上で気になるところだと思いますので。「amu」はAZグループが一方的に提供する場ではなく、外部のいろんな方と一緒に知を編んでいく場にしたい。一度登壇した人や参加した人が「なんかおもしろそう」と思い、人のつながりがどんどん広がっていく。そのためのコンテンツを担保する一要素として「社会性」を重視しているんです。

コミュニケーションの基礎研究の場

岩楯これまでのイベントで登壇いただいた方から、実際に「amuでやったらおもしろかった」といったような声はありましたか?

川崎さんたとえば、古賀くんの話に出た「働く女性のためのセルフメディケーション」シリーズで、ファシリテーターに助産師の尼寺なかこさんを迎えた「温活のススメ」は、いい意味で結果が読めていなかった。開催前は、参加者みんなで一緒に話をしてなにか気づきをもって帰ってもらえればいいくらいに思っていたんだけど、開催する側にとって意味のある意見が参加者からたくさん出て、やった方も「なるほど」と思えた。

それから、「対話のアトリエ」を一緒にやっている「対話部」のメンバーもそうだと思う。もちろん計画は立てるけど、彼らも「amu」のような環境でやるのは初めてだったから、参加者からどんなリアクションがあるのかは予想がつかない。でも、「こうするとこうなるのか」というのをライブで感じながらやることができて、毎回おもしろがりながら帰っていくんだよね。

いろんなイベントをやってきて思ったことだけど、「amu」は、コミュニケーションについての基礎研究の場と言える。

あと、「なんかおもしろい」と思ってもらえる背景には、「amu」という物理的な場所の空間力もあるんだと思う。「amu」で講師と参加者が対峙するようなきっちりとした講義をやってもあまり耳に入らないんだけど、4人くらいで一つのテーブルを囲むようなスタイルにすると、同じテーブルの人との話にも集中できて、且つ周りの他のテーブルでなにかをやっているのが心地よく聞こえてくる状態になるんだよね。近いところと遠いところの差がつきやすいというか。

古賀さん「amu」は建築家の原広司さんが設計してくれたんですが、平行面がないんですよね。斜めや波のような曲線でできている。

川崎さん異世界にいる気分になるよね。はっちゃけるという意味での異世界ではなくて。研ぎすますとか凛とするというわけでもないんだけど、心をどうにかしちゃうんだよね(笑)。

タグラインからひも解く

「amu」のタグライン

エビデンスのない「ネクスト」

岩楯「amu」のタグラインである「未来を編む」をどう解釈されていますか?

古賀さん僕はさっきも話したように、「amu」はコンテンツの出入り口としての装置だと思っているので、個人や業界、社会、AZグループなどすべてにとっての未来だと考えてやっています。

川崎さん「未来」と言うと遠そうだから、僕は「ネクスト(次)」だと思ってやってるんだよね。

さっき、「基礎研究」と言ったのもここにつながっていて。テクノロジーとか経済活動の基礎研究はよくあるけれど、コミュニケーションすることとか話をすること、物事を考えることなど、計測装置で図れないパターンでやることは、あまり研究されてないんじゃないかなと。

「○○さんをゲストに迎えてこんな企画で開催したら、このくらいの人数の参加者が集まり、こんなリアクションがあって盛り上がるだろう。だからやろう」という想定があって、企画・実施されるのがイベント運営の基本じゃない? つまり、エビデンス(根拠)が前提にある。

でも「ネクスト」ってそうじゃないんだよね。エビデンスがあったらもうそれはネクストではないから。「おもしろいかどうか、人が来るかどうかわからない」という状態で暗中模索して、「でもやろう!」となるのが「ネクスト」。僕は「未来を編む」をこう解釈してる。

今、デザインとコミュニケーションが融合する時代になったなと感じていて、「ネクスト」に向けては、それらの意味の追求をトレンドとリンクさせながらやっていきたい。「今のハヤリはもう終わり。次!」というのは嫌だから次のトレンドを探すという意味ではなくて、今やっていることも肯定しつつ、みな次にやろうとすることを考えてモヤモヤしているはずだから、そこに対してなにかアプローチをとっていきたいと思っている。

編集者の行為が形を変えたもの

岩楯これまでは専門分野に思われがちだったデザインの解釈が広がり、デザイナーではない人の中でも一般化してきたけれど、また違う人やなにかとリンクできるのではないか、ということですか?

川崎さんそれもあるだろうけれど、どうかはわからないよね。「ネクスト」のことだから。デザインの考え方をより広く活かそうという活発な動きの先にあることとか、今はまだ主流じゃない人にとってどうなるかといったことかもしれない。

「こういうことを考えている人たちがいる。その考えを明確にしてあげる」という感じで、言ってみれば編集行為かも。編集者って未来を編んでいるんだよね。まだ世間に知られていないことや人になにか芽があるということを発見して世に出していくわけだから。僕自身がそこまでやっているとはおこがましくて言えないけど、編集者の行為が形を変えたものが「amu」でやっていることになるんじゃないかな。

古賀さん本の場合は、つくって読者に届けてというのが時間軸に沿って行われるけれど、「amu」ではそれらが同時に行われているんですよね。

川崎さん津田広志さん(フィルムアート社 編集長)や吉田知哉さん(ビー・エヌ・エヌ新社 編集長)、村田純一さん(ビー・エヌ・エヌ新社 副編集長)が中俣暁生さん(フリー編集者)とやっている「NEXT TO NORMAL〜これからの“普通”を考え、つくる」とか、ビー・エヌ・エヌ新社がやっている「BNN CAMP」はまさにそうなんじゃないかなと思う。

これからやっていきたいことからひも解く

フレームをもたない =「amu」の存在意義

岩楯最後に、今後どのようなことをやっていきたいかを教えてください。

古賀さん今日はイベントの話ばかりになってしまいましたが、「amu」では「編集デザイン」を用いた「“知”を編むプロジェクト」ということにも取り組んでいて、青山学院大学、東京工業大学、愛知大学といった大学と一緒にやっているのですが、今後は大学だけではなく企業とのプロジェクトも増やしていきたいなと思っています。

あと、これまでのように単体のイベントにも力を入れつつ、一つのプロジェクトの中で、活動の一環としてリアルな場である「amu」でのワークショップがあったり、メディアで発信していったりという展開を考えていきたいですね。
さらに、たとえばその中で生まれたプロダクトアイデアを、グループの事業会社とも協力しながら商品化していくということができれば理想的だと思います。
これって、企業にとってはあらたなマーケティングの手法を試す場になるかもしれないですよね。

本質的な価値をもとに社会に貢献してより発展していきたいと考えていたり、成熟社会の中での存続方法を模索しているような企業と、「今」から抜け出して未来に進むきっかけづくりをぜひ一緒にやっていきたいです。

川崎さん企業にとっても「未来を編む」という行為は必要だと思う。さっきエビデンスの話をしたけれど、未来への研究においても企業は定まった枠の中でのルーチンに陥りがちかなと思うんだよね。未来の話をしていたつもりが、たとえば無難な話に小さくまとまってしまったり。

古賀さんでも「amu」って難しいですよね(笑)。

川崎さん難しいよ! でも僕は簡単じゃない方がいいと思ってる。「amu」って常になにかを考えさせるのよ。登壇者に対しても、「今、もっているコンテンツをやりましょう」なんて絶対に言わなくて、「今、もっているコンテンツをどうするか?」を問う。「今、すでにあるもの」をやるなら、「amu」よりもっといい場所はほかにいっぱいあるわけだし。

コンテンツを考えるとき、僕の場合は決まったメニューをもたずにやってるんだよね。既存のフレームにのせずゼロからのアプローチを考えることに、「amu」が存在する意味があると思ってるから。もちろんメソッド化した方がいいものもあるだろうけどね。でも僕は、道具からつくるつもりでやってる。

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特集「AZグループをひも解く」 ~ Interview:働いている人の考えから探る~

Interview: 1
株式会社 AZホールディングス
Voice from the branch offices:
京都支局・パリ支局
Interview: 2
多目的クリエイティブ・スペース「amu」
Interview: 3
株式会社 ビー・エヌ・エヌ新社
Interview: 4
株式会社 コンセント
Interview: 5
株式会社 フィルムアート社
Interview: 6
株式会社 草冠(kusakanmuri)
Interview: 7
株式会社 PIVOT

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