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特集「AZグループをひも解く」 インタビュー:3

ビー・エヌ・エヌ新社 「本(=一つの世界)」でワクワクする社会を

動機からひも解く

なにかを企てたい

河内お二人は他の会社も経験されているということですが、転職されたきっかけはなんでしょうか?

村田さん以前いた学術系の出版社では、開業の獣医師や大学で教えている先生向けの獣医学の学術書などをつくっていました。基本的には翻訳書で、大学の先生にお見せして「よさそうじゃないか」となったら翻訳者を決めて本にするというのが主な仕事。もちろん翻訳書の仕事は、海外の書籍を日本に流通させるというすばらしい取り組みです。でも僕は企画を立てたくなってきて。常になにかを企てたいなと思っているタイプなんですよね。そうするとその出版社では限界があるので、企画ができて、自分の興味・関心に合ったところに行こうと思いました。その出版社ではDTPを担当したりWebサイトをつくったり、書籍の表紙も自分でデザインしたりしていたので、「コンピューター」や「デザイン」に興味をもつようになって。

岩楯そこからBNN新社につながるんですね。

村田さんその前に2社目に転職したんですが体調の関係で1年ほどで退職して、ふわっとBNN新社の求人広告を見つけて。当時の社長がおもしろい方で、ふわっと募集を見つけてふわっと採用してもらったという。僕の場合はそういう経緯です。

一同ふわっと(笑)

村田さん履歴書は確か半分書かなかった、書く時間がなくて(笑)。履歴書って左側が学歴・職歴で、右側が志望動機とかの欄じゃないですか。当時のオフィスがあったビル1Fのカフェで履歴書を書いていたんですが、右側だけ書いた時点で面接の時間になって(笑)。

武田さん僕もスペースが足りなくて、履歴書を書ききれなかったことがあります。

一同(爆笑)

岩楯最初から本に関わる仕事をされたかったんですか?

村田さん就職活動のときは、出版社とシステム会社の二方向で探してましたね。ド文系で本が好きだったというのと、「Windows 95」がリリースされ、インターネットが身近になった時期だったから、「これからは、コンピューターを牛耳れる奴が世界を牛耳るだろう」って思ったんですよね。

新しいものを人より先に体験できる

岩楯武田さんはいかがですか?

武田さん僕の場合、両親ともに出版社に務めていて出版家系だったんですよ。物心ついたときから本ばっかり読まされていて、中学のときには明治文学を読まされるくらい。半ば強制でもあったのですが、今思えばいい環境だったと思っています。いつの間にか父親の背中を追いかけるようになっていましたね。

河内BNN新社に入ってみた結果、どうでしたか?

武田さん日々、おもしろいですね。

村田さんいいねー!(笑)

武田さんだって、メタルばっかり聴いていた男が、本を出すという話になって初めて「初音ミク」を聴いてみたら、最近一番聴くのが『ボーカロイド楽曲』になっちゃうくらいですからね(笑)。

一同(笑)

武田さんSNSで遊んだりとか、趣味関係に影響がありますね。編集者が「これが今から流行るよ」と話すのを聞けて、常に新しいものを人より先に体験できるというのがおもしろいです。

あと、他の出版社を経験しているというのもあって気づいたことなのですが、営業と編集の風通しの良さはBNN新社の特徴かなと。たとえば、なぜ本が売れないのかとなったときに、営業が悪い、本の中身が悪いという話に陥りやすいのですが、そうはならない。営業と編集が対立構造ではない関係なので、「売れない理由」という問題の本質についての議論ができるんです。これはいい社風だと思っています。

『VIP - Vocaloid Important Producer ボーカロイド楽曲制作テクニック』

(BNN新社刊。2012年08月27日発売。ISBN:978-4-86100-827-6)

注目の「ボカロP」 が、書き下ろし楽曲を元に、DTM楽曲制作テクニックを大公開したシリーズ第1弾では、テクノ系サウンドでボカロ界を席巻中の「八王子P」を著者に迎え、ボーカロイドに「初音ミク」を、DAWに「SONAR X1」を使って本格的テクノサウンドの制作行程を披露している。

ミッションからひも解く

価値の定まっていない新しいものに光を当てる

岩楯BNN新社のミッションステートメントについて、お二人がそれぞれどのように解釈されているかお聞かせください。

たとえば、「創造的な暮らし」というのは、先ほどあった「ワクワク感」につながるのかなとお話を聞いていて思ったのですが、「アクチュアルな知と情報」というのはどういうことだと考えていらっしゃいますか? 「均一化していく世界に対抗し得る~」という表現も、「均一化している世界じゃない方がいい」という前提があるんだろうなと思うのですが。

BNN新社のミッションステートメント

村田さんこのミッションステートメントは編集長である吉田知哉さんが書かれたものなので、あくまで一個人として僕がどう解釈したか、という観点でお話ししますね。

自分の言葉で置き換えると、「創造的な暮らし」は「より生き生きと生きること」なんです。「この世界をより生き生きと生きるためのアクチュアルな知」があるはずで、まだ価値の定まっていない生まれたての新しいものに光を当てて、その可能性を届けたいということがあります。

「均一化していく世界~」については、よく言われますが「多様性」といった意味で捉えています。ただ、多様性であればいいのかというとそうでもなく、多様性になり過ぎて横のつながりができにくくなっていて、むしろそこをつなぐ方が課題といったこともありますから。

フィルムアート社の津田さんが「編集デザイン」でやろうとしていることとつながるのかもしれません。あくまで僕の考えですが。

武田さん僕はコンテンツを探しに行く側ではなく、営業なので受け取る側に近い立場として思うのは、「美意識」を教わっているということなのかなと思っています。「美意識」というのは編集長の吉田さんがよく言っている言葉なのですが。
「こういうのが今カッコいいんだ、流行るんだ」という感覚を、うちの会社ならではの見方で世の中に伝えているのかなと。もちろんいろんな価値観があっていいのですが。

岩楯それがミッションステートメントにある「創造的な暮らし」をつくるための情報なんですね。

武田さん先ほども話したようにBNN新社はジャンルが広過ぎて、たとえば地下1Fで萌えの本を案内している一方で、フロアを上がると、ブルーノ・ムナーリの本の営業とかをやっていたりするんですよ(笑)。美意識と言ってもいろんな美しさがありますよね。

村田さんそこはうちの営業が一番大変なところだよね。同じ層の人たちに向けて売れるものを、一つの版元が出し続けることを目指しているわけではないので。

武田さん以前、『Maker Fair Tokyo』※1に、BNN新社の本を出展したんですが、村田さんのprocessing関連の本が売れるかと思いきや、ギーク系の男性が、アンティーク雑貨の本も手にとって「おー!これカッコいい」と言って買ってくれたのを見て、うちがつなげているところだなと思いました。雑貨系の本が女性だけではなく、たとえばprocessingをやっているような男性にも響くんだというのは信じていることなんですが、その瞬間を実際に見て肌で感じた瞬間でした。

※1 Maker Fair Tokyo……作り手(Maker)が集い、展示やデモンストレーションを通して、ものづくりの知識や経験を共有しながら交流する国際的なイベント。

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特集「AZグループをひも解く」 ~ Interview:働いている人の考えから探る~

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Voice from the branch offices:
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