サストコ
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サストコ

※本記事は、2014年2月7日公開のサストコ「FEATURE ARTICLES 14 デザイナーが感じるサービスデザインの今」のテキスト版です。

2013年、コンセントにサービスデザインチームが発足。
そこでチームを代表してデザイナーの大崎くんと星くんと、広報の岩楯と河内とで座談会を実施!

複数プロジェクトで実践している二人が考えるサービスデザインとは?

雑誌のエディトリアルデザイン、企業や組織のコミュニケーションツール制作をバックグラウンドにもつ二人ならではの視点も見えてきました。


大崎 優(写真左)のプロフィールページ
星 貴史(写真右)のプロフィールページ

《INDEX》
■あらゆるデザインは「サービスデザイン」のアプローチで進めるべき
■情報デザインの中でのサービスデザイン
■コミュニケーションデザインとサービスデザイン
■提供価値を最大化する要素、「組織内コミュニケーション」
■デザイナーに期待される、「エモーショナルな価値の具現化」
■共有ツールに活かせるエディトリアルデザインのスキル
■影響するビジネス文化の違い
■「運用」になった時点でデザインではない
■サービスデザインで重要な、「再現可能性」
■サービスデザイナー同士、他専門職との連携で価値を高める

■THE EDITOR’S NOTE

《Talk with Yu Osaki and Takashi Hoshi》


■あらゆるデザインは「サービスデザイン」のアプローチで進めるべき

岩楯
長谷川さんの言葉を借りて、サービスデザインとは何かを端的に言うと「顧客への提供価値をもとに事業を構築するこれからの時代のビジネスアプローチ」。理解をさらに深めるために、複数プロジェクトを通して実践しているデザイナーの二人に話を聞きたいと思います。まず、二人はサービスデザインをどう捉えていますか?

大崎
私個人としては、あくまでもプロセスでしかないと思っています。サービスデザインという言葉を使う・使わないにかかわらず、あらゆるデザインはプロセスがとても大切。個別のタッチポイントごとにデザインするような時代ではもうなくて。利用者を中心とした全方位的なタッチポイントを考慮した上でのデザインというのは、あらゆる分野で必要なこと。デザイン全般に対する、一種の基本的な振る舞いだと思います。

岩楯
プロセスというのは具体的には?

大崎
マインドに近いかもしれません。プロセスと言うと手順と捉えられがちですが、たしなむべき考え方としてあるだけだと思うんです。たとえば、サービスデザインでよく踏まれるプロセスとして「カスタマージャーニーマップをつくる」という話がありますが、必ずしもその手順を踏む必要はないんです。


カスタマージャーニーマップで何をしたいのかという「目的を設定すること」がプロセスとして重要なわけで、カスタマージャーニーマップは一つの手段に過ぎないんです。プロセスとしての目的設定がちゃんと踏めれば、カスタマージャーニーマップ以外の手段だっていいんですよね。

大崎
サービスデザインに関わらず、プロセスを考えるのはすごく重要ですよね。どういうふうにアプローチしていけば、この問題が解決するかというプロジェクト設計をするというのはデザインにおいて基本。

岩楯
星くんはサービスデザインをどう捉えていますか?


たとえば、コンセントでは雑誌や広報誌といった紙モノもつくっていますが、サービスデザインとして大きく捉えると、モノ自体は、受け取る人が感じる価値を最大化するという目的のための一つの手段なんです。
私はもともとエディトリアルデザインを中心にやってきましたが、エディトリアルデザインも、受け手が感じる価値を上げるという意味ではサービスデザインの一部分と言えるかもしれません。私たちのお客さまである出版社や企業、組織の満足を考えるだけではなく、最終的な読み手が受け取った後にどういう価値を見い出すかまで考えるというデザインの骨格は一緒。ただ、ツールを紙と限定しているところが異なるんだろうなと。サービスデザインの場合は手段に縛りはなく、受け手に対して最善と思われるあらゆる方法を考えるので、やれる幅がより広がるのかなと思っています。

岩楯
目的が最初にあって、利用者の価値をベースに考えたときにどうアプローチしていくべきか、どんなタッチポイントを設計すべきか、全体視点で考える。


でも目的がない場合もあって、何をしたらいいのか、ということから考えることもあります。

大崎
目的自体を探すこともサービスデザインの一部としてお客さまに求められることの一つなんです。お客さまの中に、漠然と、しかし決定的に問題は存在していて、その問題を具体的な課題にまでブレイクダウンしていく。課題設定が非常に重要です。

河内
お客さま側が何となく問題かなとは思っているけれどそれを言葉にできない、という状態ですか?


問題意識はお持ちで、漠然と何かやらなきゃと思って相談をいただく、という感じですね。

 


情報デザインの中でのサービスデザイン

岩楯
目的や課題を探すところからというと、「サービスデザインで何かできそう」という期待が高まる人は多いと思うんですが、いろいろなプロジェクトを経験してきた中で、具体的に「こんなシチュエーションで活かせる」といった実感はありますか?

大崎
サービスデザインは茫洋とした世界でもあるので、私やチームメンバーが経験しているのもその一部に過ぎないということを前提に聞いていただきたいのですが。
たとえば海外の事例だと、接客業のオペレーション設計や公共事業の見直しのためのサービスデザインというのもよく耳にします。
コンセントにも業務設計などのご相談もいただくのですが、現時点で多いのは「情報デザイン」におけるサービスデザインです。車の中での情報メディアだったり、情報メディアそのものである製品デザインに関するものだったり。

岩楯
「情報デザイン」の中でのサービスデザイン。情報デザインとは違う?


まず、デザイナーの関与する領域が違うのかなと思います。たとえば、情報デザインの一つとも言えるエディトリアルデザインの場合、編集者がユーザーに伝えたい情報をある程度決めて、デザイナーはその情報をどううまく伝えるかを考える、といった進め方が多い。一方、車の情報機器におけるサービスデザインといった場合、「こういう情報があり伝えたい」というスタートは同じなんですが、「本当にそれが必要なのか、もっと違うものを伝えた方がいいんじゃないのか」と前提条件をさかのぼって考えていくことになります。そしてさらに上流まで食い込んでいって、「ユーザーが何を求めているのか、何をしたいのか」とか、「そのときはこうしたいけれど、時間軸的に後にいったらどうなのか」といったところを突き詰めていく。そうすると情報そのものではなくて、文脈上何が必要なのかというところまで、デザインの幅が拡大していくんですよね。

大崎
今のコンセントは、アレフ・ゼロとコンセントという二社が合併してできたわけですが、アレフ・ゼロは、コンテンツ発信側により近いところでどうコンテンツをデザインすればよく伝わるか、面白くなるかというデザインをしてきた会社。一方の旧コンセントは、ユーザーがどんな文脈で使うのかという、よりユーザーに近いところのコンテクスチュアルなデザインをしてきた会社だと思うんです。この2 社のバックグラウンドは、「情報をどうデザインして伝わるようにするか」という情報デザインの延長線上でのサービスデザインに非常に有効で、それゆえわれわれの得意分野の一つになっているのかなと。また、そうしたご相談が多いのも、お客さまがコンセントにそこを期待してくださっているということなんだろうと感じています。もちろん情報デザインだけにこだわるつもりはないですが。

……と、ここまで話をしていて、情報デザインという言葉自体がもはや古い気がしてきました。プロダクトデザイン、グラフィックデザインという文脈上で情報デザインと言っているだけであって、その言葉を使っていること自体、センスが悪いのかもしれない。


「情報」という言葉が指す範囲って広いですからね。プロダクトを通して何を伝えるかという話になるわけで、モノが情報を含んでいて媒介しているという。確かに、プロダクトデザイン等と同列に使う表現ではないような気がします。

大崎
情報デザイン、プロダクトデザインと言ってしまうと、プロダクトアウト前提で話をすることになる。「情報デザイン」とは別の表現があるはずだなと。

 


コミュニケーションデザインとサービスデザイン

岩楯
言葉でいくと、コミュニケーションデザインともどう違うんだろう、ということが知りたくなってきました。図で言えば、サービスデザインが大きくあってその一部としてコミュニケーションデザインがある、みたいなイメージなんですが。

大崎
サービスデザインは、コミュニケーションデザインを運用していくためのバックオフィス側の設計も重要になります。要するに、エンドユーザーとのコミュニケーションだけではなく、サービスプロバイダ側がどういうアプローチをすべきかという設計や運用の仕方も考慮すべきものなんです。たとえば、サービスブループリントというサービス全体の青写真を描くアプローチがあって、そのユーザーサイドだけを切り取るとコミュニケーションデザインという見え方をするんですが、もっと事業者側のジャーニーも考えた捉え方がサービスデザインなのだと思っています。

岩楯
ユーザー側の価値だけではなくて、よりビジネス側のことを考える。

大崎
それはそうですね。乱暴な言い方になってしまいますが、あえてわかりやすく誤解を恐れず言ってしまえば、コミュニケーションデザインはサービスデザインの一部と言えるのかと思います。


企業とエンドユーザー間のコミュニケーションだけではなくて、企業内部や、商品・サービスを提供するにあたっての関係者間全てのコミュニケーションをデザインすることが大切なんですよね。特に大規模な組織のプロジェクトの場合、全体タスクに占める組織内コミュニケーションの調整の割合ってわりと高いんです。

 


提供価値を最大化する要素、「組織内コミュニケーション」

岩楯
組織内コミュニケーションの調整が多いんですね。

大崎
組織内のコミュニケーションをデザインするというのは、まさに今サービスデザインが注目されている一つの理由だと思うんです。
特に、カスタマージャーニーマップをつくるのは、そこへの寄与の比重がかなり大きいんです。特に大企業になると、事業部間のコミュニケーションはなかなか難しい。ですが、事業部間コミュニケーションが果たす価値は、ユーザーと企業間のコミュニケーションの価値とほぼイコールか、もしくは事業部間のコミュニケーションの方が大事ぐらいに捉えていいものだと思うんです。それはユーザーからは全く見えないことなんですが、組織内のコミュニケーションがうまくいっていないことによって、その企業全体が提供できる価値が最大化できていないという問題はすごくあると感じています。

岩楯
部署通しのつながり。

大崎
よく言われる縦割り構造上の問題ですよね。「サイロ」とも呼ぶんですが、事業部ごとに閉鎖されている空間を意味する言葉です。
そうした体系が悪いというわけでは決してないんですが、ユーザーを中心に考えたときには弊害になるケースが多いんです。事業部横断のチームをつくったりしても、評価体系が追いつかない等いろいろな問題があってうまくいかない。そうした課題を抱えている組織にとっては、事業部間のコミュニケーションを円滑化するような外部組織からの働きかけというのは、特に重要視されています。

 


デザイナーに期待される、「エモーショナルな価値の具現化」

岩楯
「サービスデザイン」によって、いわゆる縦割構造に横串が刺せるという。二人はデザイナーだけど、デザイナーだからこそ特に力を発揮できるのってどんなところでしょうか?

大崎
「エモーショナルな価値の具現化」こそ、デザイナーが強く貢献できるところだと思います。要するに、感覚的で感情的なところを価値としてうまく具現化して、それを元に横串を通すという。


その価値自体はすでに企業内にあるんだけれども、内部でのやりとりがうまくいかず社内的な認知がなされていないので、横串を通す必要があるんですよね。実はコミュニケーションデザインの領域かもしれないんですが。
もう少し具体的に言うと、たとえば、あるプロジェクトを動かそうとしたときに、そのメインの担当部署自体の社内価値が高まらないと動きにくい。そこで、ツールの話にはなってしまいますが、僕たちデザイナーがその担当部署の方の社内プレゼンのお手伝いをすることもよくあるんです。それって横串の通し方なのかなと。
先ほども言ったように、プロジェクトを進めていく上ではインナーコミュニケーションが障壁になることが多いので、たとえそういう仕事として始まってはいなくても、そこは避けて通れないものとして担当することが多いです。今現在、サービスデザインということを知らない方はまだ多い。そんな背景の中で、サービスデザインの重要性を認知している方が、僕たちに一緒に仕事をやろうと言ってくださる。ところが、お客さま企業内にはまだまだサービスデザインが浸透していない。そこでまずはその必要性を社内のみなさんに伝えて担当の方が動きやすい土壌をつくっていく。こういう価値があるのかと組織全体が認知してやっと、エンドユーザーに対しての商品・サービスを考えていく、外に出られるということになったりもするんです。
組織体制を変えるとなると大掛かりだしすぐに実行するのはハードルが高いですが、横串を通すというところは、デザイナーの思考プロセスやスキルを活用すればできることなんじゃないかなと思います。

大崎
もちろん定量的な分析や立証も必要で、そこはたとえばお客さま自身が既に考えられていたり、経営レイヤーのコンサルタントが動いたりということもありますが。われわれデザイナーには、サービスデザインのよりデザイナー側面を期待してもらっていますね。

岩楯
エモーショナルな価値の具現化ですね。

大崎
それに、エモーショナルなところの発想も期待されます。

 


共有ツールに活かせるエディトリアルデザインのスキル

河内
そのエモーショナルな発想でアイデアがわいたとき、それに共感してもらう必要があるじゃない? 企業の担当者と共有するために、伝える手段としてどういうものを持っている?

大崎
私はプレゼンシートといった形でやることが多いんですが、そこにはグラフィックデザインやエディトリアルデザイン、もしくは編集という考え方をもち込むことがすごく大事なんです。私自身、苦い想い出がいっぱいあるのですが、やりがちなのは、われわれが考えたプロセスを演繹的に述べていって、結局、何がいいのか伝わらないパターン。情報を素のまま全て出すのではなくて、きちんと「編集」をして伝わるようにするといった、一種の編集スキルとデザインスキルがないと伝わらないんです。

岩楯
「編集」をもう少し具体的に言うとどんなことですか?

大崎
たとえば、われわれが考えたことを端的に一つのコピーや映像、1 ビジュアルで表すとしたらどうだろうというように、「切り取り方」をもって伝えるということです。そこにはエディトリアルデザインの経験で得たスキルがすごく生きているという実感があります。
細かい例なんですが、エディトリアルデザインではレイアウトをするときに、どの写真がいいだろうかとか、この写真はこうトリミングしたらいいだろうといったことを考えますよね。プレゼンシートといった共有ツールをつくるときの思考もそれと近いんです。要するにその現象をどう抽象化するか、どこを切り取って強調したり省いたり、という編集作業を頭の中でやっているんですよね。

岩楯
伝わるためには、集めた情報のどこを切り取るべきかを考える。

大崎
そうですね。どこを言わなくていいとか。プレゼンテーションの基本かもしれませんが、私も星さんもそうですが、エディトリアルデザインをやってきた人間はそこのスキルがすごく高いので、サービスデザインで「共有する」「伝える」ということをやっていく中でも強みとして活きるところだと思います。


僕らは大崎くんが言うエモーショナルな価値を伝える努力をしていて、そこにはエディトリアルデザインで培った力が活きるので紙で伝えることももちろんやるべきなんですが、共有するため、伝えるための手段と考えたときに、別に紙である必要はないんですよね。
今、僕らに足りないのは、紙以外での手段の幅。今後はもっと自由に、もっと幅広くやれるようにならないといけないと思うんです。「伝えるもの=プレゼンシートのような紙」と自動変換してしまっている部分もあると思うんですが、エモーショナルなものを伝える最善の「何か」は紙でないことも多い。たとえばムービーも一つの手段として選択肢には当然ある。何が最大の効果を生み出してうまく伝えられるのかということをフレキシブルに考えていくことで、お客さまの組織内での価値も上がって、サービスデザインを実践することの価値も浸透する、というところを今後目指していきたいです。

 


影響するビジネス文化の違い

河内
先日のサービスデザインカンファレンスでUKを訪問したとき、ブライトンにも寄ってCrearleft)というデザイン会社の代表のAndy Budd氏と情報交換したんだけれど、Andy自身、カンファレンスのスピーカーとして来日した経験もあったり、彼らには、イギリス国内にもアメリカにもクライアントがいるから、プロジェクトを進めるときにビジネスにおいて文化が違うかということを質問したのね。そうしたらアメリカと日本は明らかに違うし、イギリスはその真ん中ぐらい、ということを言っていた。
どういうことかというと、アメリカの場合はプロダクトやサービスの質にフォーカスしてプロジェクトを進めるから、プロジェクト担当者がかなりの裁量を持っている。だからパートナー企業を選ぶときも、いいものをつくると言っているんだからこの会社に発注する、ということをその担当者の権限だけで決められる。いい製品をつくるための最善の手段にフォーカスされているのね。
一方、日本はヒエラルキーな文化だから、上司がいて、その上司がいて、さらに上司がいてといった構造で承認経路が長い。しかも俗な言い方をすればその人の出世に関わったりもするから、上司を説得するための社内プレゼンが重要視されている。イギリスはアメリカと日本の中間、どっちもありうるみたいなことを言っていたのね。
その話を聞いて、リソースが限られている中で社内コミュニケーションにどれだけ時間を割くか、どれだけ資料をつくらなければいけないかは、その国の文化にかなり依存するんだなと思った。アメリカだったらよりよいプロダクトやサービスをつくる方に働くから、社内共有のためだけの資料をつくる時間があるんだったらプロトタイピングをしようとなるだろうし、日本だと、自分の上司を社内で立てなければいけないから、その上司がさらに上の上司を説得するためのツールをいかに準備できるかということに時間が割かれたりするのかなと。要は、日本でサービスデザインという文脈で社内コミュニケーションが重視されるのは、文化的な背景も結構あるのかなと感じたのね。

Crearleft:Brighton(UK)にあるデザインエージェンシー
http://clearleft.com/

大崎
そうですね。グローバル展開しているお客様のお話を聞いたときもそう思いました。
やはり文化の違いがあって、海外に比べて日本の方が承認フローが複雑だったり、上司に対して伝えるためだけの資料をつくることがすごくあるようです。それに海外の企業の場合、プロジェクトチームを少数で組んでいて、メンバーが同じ空間にいることでプロジェクトがスムーズに進むけれども、日本ではメンバーが部署ごとに遠く離れていることが多い。そういった組織上の課題の解決策を我々が示すこともあります。

 


「運用」になった時点でデザインではない

岩楯
インタビュー冒頭で、「サービスデザインは茫洋としている」と言ってましたが、注目され始めてまだ数年、やはり実際の現場でも可能性を探りながらやっている、という感じでしょうか?

大崎
もちろんそうだと思いますよ。というか、「サービスデザインはこうだ」と決めつけた瞬間に終わってしまう。そもそも世の中は動いているわけですし。営業的には「これぞコンセントのサービスデザイン」みたいに言いたいですが(笑)。このプロセスを踏んで、このメソッドを使って、と言わばパッケージ化されたものに則れば一定の成果は出るかもしれないけれども、本質的な成果は出ないと思うんです。運用するとなった時点で、それはデザインではなくなる。

岩楯
時代は変わるし、成熟するにつれて企業を取り巻く事情も変わるから、以前すごいと思えたサービスや商品が数年後には当たり前のものになっている。フレキシブルな発想で考えていかないと、サービスデザインに秘められている可能性を発揮できないなと、これまでの話を聞いていて思いました。

大崎
お客さまの事情によって全然違うので、何かを当てはめるのではなくて、お客さまに合ったソリューションを1 個1 個スクラッチで考えていくべきだと思っています。


服にたとえて言うなら、既製服じゃなくてオーダーメイドなんですよね。「あなたに合わせて仕立てます」という。

河内
旧コンセントのタグラインは「Web時代の設計事務所」だったのね。当時言っていたのは、コンセントは注文住宅をつくっています。こだわりを持った施主側にもコミットを求めるけれど、何がどう作用するかは徹底的に話し合い、適当な解決はしません。だから耐用年数が長くフレキシブルな運用ができるものをつくれる可能性が高まります、ということを価値としてやっていて。


注文住宅というのはすごくわかりやすいですね。通じるものがあります。

 


サービスデザインで重要な、「再現可能性」

河内
パッケージ化にもいい側面はあるよね。1回パッケージにすれば、誰がやってもある程度の再現性が担保される。だけど注文住宅の場合は個別対応できるデザイナーが毎回必要になる。そこで提供できるものって属人的になっている気もしているんだけど。後進を育てたり、大崎くんや星くんのように、たとえばエディトリアルデザインからサービスデザインに移行するメンバーがいることを考えると、パッケージ化されている方が楽かなとも思う。

大崎
再現可能性はサービスデザインでは肝ですよね。ただ、再現可能性にはレイヤーがいろいろあって、お客さまにとって再現可能性であることはすごく重要だと思います。私たちがファシリテーションしてワークショップ型で進めるなど、お客さまとプロセスを一緒に踏むというスタイルを大切にしていますが、それはつまりデザイナーがいなくても、お客さま自身である程度できるようにするため。それはサービスデザインでは大事なことなんです。そういう意味での再現可能性は非常に重要だと思っています。

岩楯
なるほど。お客さまにとっての再現可能性以外のレイヤーだと?

大崎
デザイナーとしては、再現可能性に頼りきってはいけない。お客さまができるように再現可能性のあるプロセスをデザインするのはデザイナーの役目だけれども、デザイナーがそれをつくり出すのを定型化したらいけないと思っています。
たとえば星さんができることを私が再現できるかといったらそれはできない。そういうレイヤーでの再現可能性は持たせられないんです。河内さんの言っている社内教育というのは実はまだ模索中で、何を身に付ければサービスデザイナーとして一人前なのかという定義は明確ではない。
またお客さまにとっての再現可能性と言っているのも、お客さまが次のプロジェクトでそれができるというだけでは不十分で、お客さまの組織内で広められるようにすることが必要なんです。我々はそういう可能性を持たせるスキルはある。たとえば、ジャーニーマップをつくるのもそのためということもあります。


実際、サービスデザインのプロセスを社内に広めたい、というご相談をいただくこともあります。僕らが設定したプロセスをお客さまと一緒に回してみてうまく進められないところをフォローしたり。もちろん発想のジャンプが必要なところでは、僕らデザイナーが思考をフル回転させるわけですが。

 


サービスデザイナー同士、他専門職との連携で価値を高める

岩楯
最後に、個人としてチームとして、サービスデザインとどう向き合っていきたいですか?

大崎
情報デザインをもとにしてサービスデザインを拡張していきたい。情報デザインに軸を持つのもありだとは思いますが、やれる仕事は増やしたいですね。コンセントにはコンテンツストラテジーやエンタープライズ情報アーキテクチャのチームがいるので、そういうメンバーとの連携は肝だと思っています。

岩楯
肝だと感じる点はどこですか?

大崎
コンテンツをデザインするという強みがコンセントにはあるんですが、今はまだその強みを活かしきれていないと思うんです。サービスデザインチームとしてそこを強化して、コンセント全体が提供できる価値を上げていきたいです。

岩楯
サービスデザインチームには今7人いるから、サービスデザイナー同士それぞれの核となるスキルを共有し合うことで、チーム全体としての提供価値も高まりそうですよね。


ベースはみんなで共有しつつ、チーム内でいろいろな方向性があるというのがいいなと思っています。
最初に言っていたように、サービスデザインはとにかく幅が広い。広いところをずっとやっていると広がるかもしれないけれど、一方でぼやけてくるかもしれないという不安があるので、どこか1 本筋を通したいと思っています。たとえば、情報設計はエキスパートとしてやるとか、僕の場合は車が好きなので自動車業界を専門的にやるとか。そういう核を持ちつつ、いろんなプロジェクトを通して広げていきたいですね。
軸を持って、自分に足りない部分は協力してくれる人を巻き込んでうまくリレーションして引っ張っていく。誰かに応援を求められる状態をつくっておくことが大切かなと思います。
(おわり)

THE EDITOR’S NOTE

大崎くんが言っているように、サービスデザインって本当に茫洋な世界だなと思う。実際の現場で実施しているデザイナーのフィルタを通すとどうなのか、部分的でもより具体的に理解できるものになればと、コンセントのサービスデザインチームの二人との対談を企画した。

「デザイナーが強く貢献できるところは、エモーショナルな価値の具現化と、エモーショナルなところの発想」。これは組織内における横串を通すことにつながる。カスタマーにとって価値ある商品やサービスを送り出す前の、組織内での価値共有や体制がボトルネックになっているときに、サービスデザインのプロセスが有効に働くのは組織にとってもカスタマーにとっても社会にとってもいいことだと思う。そしてそれが、サービスデザインが注目される一つの要素となっているというのはうなづける。

そしてもう一つ、「お客さま企業にとっての再現可能性は重要だが、デザイナーがそのプロセスを生み出すことを運用化してしまったらその時点でデザインではなくなる」という言葉に、問題にとことん実直に向き合うデザイナー魂を感じた。
(岩楯ユカ)

コンセントってやっぱり商売があまりうまくない会社だなと思う。今流行っている言葉を使って、ツールなりフレームワークなりをパッケージ化したものを共有し展開していけば労力は減らせるかもしれないのに、そうしない。
「サービスデザインはこうだと決めつけた瞬間に終わってしまう。そもそも世の中は動いている」。企業が抱える課題やその顧客が価値と感じるものは変わっていく。パッケージ化することで安心し思考停止のワナにはまってはいけないのだ。

アッと驚かせるサービスを世の中に出すような「作品」としてのデザインではなくて、(企業が)やりたいことの実現とそれを成立させるしくみのために、そして顧客やユーザーのより良い体験のために、デザインという手段を使っている。あくまで黒子。「サービスデザイン」をやっているというよりも、コンセントのデザインのプロセスやデザイナー達の思考はこれまでも「サービスデザイン」的だったのだなと感じた。サービスデザインというと「イノベーション」という言葉とセットになって目にすることも多く一見華やかさすら感じるけれど、今回取材を通して改めて思った。「地味だな〜」。
(河内尚子)

《WE ARE SERVICE DESIGN TEAM!》

大崎 優のプロフィールページ
星 貴史のプロフィールページ
阿部啓悟のプロフィールページ
小山田 那由他のプロフィールページ
赤羽太郎のプロフィールページ
石井真奈のプロフィールページ
秀野雄一のプロフィールページ

◆Credits
Photos_Satoshi Nagare(Fuse Inc.)
Text_Yuka Iwadate
Edit_Kouji Aoki, Naoko Kawachi, Yuka Iwadate
Art direction & Design_Yasuki Honda

◆取材・撮影協力/Flying Books(東京都渋谷区)
http://www.flying-books.com/
海外雑誌、写真集、グラフィック・デザインをはじめとした国内外のマニアックな古書が並ぶ「Flying Books」さんにて座談会を実施。
渋谷古書センター2Fにあるお店には、カウンターもありコーヒーやワインを楽しめます。
ポエトリー・リーディングやライブなどのイベントも開催されているそう。

【関連リンク】
[コンセント|ラボ]Service Designについて学ぶ

⇒ ロケ場所、Flying Books さんはこんな素敵なところ!
http://sustoco.concentinc.jp/from-editors/2014/02/flying-books/

⇒ 実はバネさんにも対談をお願いしていたのですが……
http://sustoco.concentinc.jp/from-editors/2014/02/bane-buyuden/