世界行脚 vol.12 [2013.4.2-8] Road to Baltimore
せっかく行くなら楽しまないとね♥ コンセントメンバーが行く、国内・海外出張の裏側こっそりみせちゃいます
せっかく行くなら楽しまないとね♥ コンセントメンバーが行く、国内・海外出張の裏側こっそりみせちゃいます
年に一度北米で開催されているInformation Architecture Summit(情報アーキテクチャサミット)の略称。全世界からIAやUXに関心を持つ人が集まるカンファレンスで、ワークショップやプレゼンテーションが提供される。
IA Summit
情報アーキテクチャの理解と発展を促進する非営利で活動する米国国債ボランティア団体。メーリングリスト、メンタリングプログラム、ジョブボードの提供などを通じてIAコミュニティの活動を支援している。IA Summitの企画や運営も行っている。
IA Institute
The American Society for Information Science & Technology(全米情報科学技術学会)のことで、IA Summitを主催している。1937年の設立依頼、情報へのアクセスをより向上させうる理論や技術、テクノロジーを探求する情報の専門家のための学会として機能している。
ASIS&T
IA Summitは3日間のカンファレンス期間の前に、2日間のワークショップ日が設定されています。例年、カンファレンスのみ出席というケースが多いのですが、今年はAndrea Resminiによる終日のラウンドテーブル(4月3日開催)に参加するため、4月2日に成田を経ちました。渡航自体は、はせがわさんと私が同じ便、モナちゃんが同日の別の便、マイマイは翌日の便とバラバラ。はせがわさんと私が乗ったシカゴ経由便は現地への到着が最も遅く、ホテルにチェックインしたのは21時過ぎでした。
コンセント以外の先発部隊はレストランで夕食を取っていたようですが、そこに合流するにはあまりに遅かったため、ホテルから数ブロックの距離にあるオーガニックスーパーのデリで夕食を買って食べました。
時差ボケなどしてる暇はありません。翌朝は8:30頃に日本メンバーで集合。コーヒーを飲みながら自己紹介をしたりラウンドテーブルをどんな風に過ごすかなど作戦会議。そうこうしていると、Ericが登場。去年までコンセントでUXアーキテクトをしていて、現在はアメリカに戻りベンチャー企業でデザイナーをしているEricはサンフランシスコからの参加です。久々の再会に積もる話を色々したいところですが、一旦お預けでラウンドテーブル会場へ。
"Academics and Practitioners Round Table: Reframing Information Architecture"と題されたこのラウンドテーブルでは、教育者、実践者、リサーチャーといったさまざまな立場から、今日のIAが一体どういうものであるか、過去はどうであったか、今後どうなっていくかについて議論しました。ホストであるAndreaのオープニングスピーチに続き、事前に登録され承認された12名のスピーカーによる短いプレゼンテーションがあり、各プレゼンテーションの後には、それぞれのトピックについて参加者とスピーカーとの間でのディスカッションが展開されました。基本的にはフリーフローの会話スタイルですが、夕方までのプログラムのなかで3つほどのグループワークもありました。
最初から最後まで会話形式のラウンドテーブルだと、言語の壁がある日本人にとってはハードルが高すぎるのですが、ワークがあると多少言葉がわからなくても参加することができますし、案外、欧米人が持っていない視点を提示することができたりもします。
アメリカ滞在中、夕食は日本人メンバー全員で一緒に食べに出かけていましたが、カンファレンス2日目日はコンセント以外の何名かがFirst-Timers Dinnersの予約を入れていたので集団行動はとりやめに。せっかくなので、カンファレンスプログラム終了後は、コンセント女性メンバー3人だけで近隣のショップ巡り(♪)やディナーに出かけました。
鹿児島に引き続き、コンセントIA婦人会活動 in Baltimore!
コンセントIA婦人会ディナーでの話題はもっぱら「コンセントでIAをどう推進していくか!」
業務レベルをどうやったらあげられそうか、IAやUXをプロセスに取り込むためにプロジェクトマネジメントや働き方はどうあるべきか、IAやUXを強みとしているコンセントのバリューはどの辺りでより発揮できそうか、そのなかでもコンセントIA婦人会では何をやれそうか…。発言の本音度合いは女子会並みだけど、トピックには色気がないという…。ほかには、IA Summit初参加の感想なども。
モナちゃん「国は違ってもプロジェクトをどう進めるか、とかクライアントをどう説得するかといった課題は変わらないんだなーという事と、みんなプレゼンが上手いし、議論上手だなーという事を感じました。」「IA Summitはユーザー調査系の話もけっこう多いんですね。」
マイマイ「UXをプロジェクトの中に入れる重要性についてはそもそもの共通認識としてすでにあることや、それをどう知ってもらうか、どうプロジェクトに盛り込むかという視点が、日本の業界全体よりもやはり先進しているように感じました。」「IA Summitに参加してみて思ったのは、取り入れるものや、やり方次第ではよりプロジェクトの質を上げることができるだろうなということ。」
チビラーシカ「いつもははせがわさんと2人で来ることが多いから、こうして同じコンセントの女子メンバーと感想を共有できるのは新鮮!!」
私がIA Summitに参加するのは4回目ですが、毎年、その年ならではのトレンドや空気感が感じられます。
例えば私が初めて参加した2009年のIA Summitでは、初参加にウキウキしていた私に反し、Adaptive Path社のJJGことJesse James Garrettによるクロージングの話で「さようなら、IA」という宣言がありました。もちろん、IAに意味がないとか、金輪際IAがなくなるという話ではなく、「これからはUXデザイナーと名乗る方がより適切である」ということだったのですが、ある意味ではショッキングでした。2010年は欠席しましたが、2011年のコロラドでは、IAはハコものを作るのが得意であるということへのアンチテーゼで、コンテンツそのものやコンテンツ戦略にフォーカスがあたっていたように思います。同時に「サービスデザイン」という言葉が扱われはじめたのもこの年でした。
2012年のニューオーリンズでは、コンテンツを作るのも大事だけどそもそもそれがFunかどうか、つまり面白いというのはどういうことかという、コンテンツ戦略から一歩進んだより感情的な部分にも迫り、またモバイルファースト、クロスチャンネル、ジャーニーマップあたりもトレンドでした。
では今年がどうだったのか。私なりに一言で言うと、 「IAへの回帰」 でしょうか。
先に述べたように、初回参加時の「さようなら、IA」の時のような、IAなのかUXなのかといった過去の議論を経て、改めてIAの意味を確認し、新しい側面を見出そうとしている動きを感じます。
冒頭でも紹介したAndreaのReframing IAのラウンドテーブルでは、「IAは新しい意味を創りだせるのか」という議論が活発でした。また、カンファレンスでのあるセッションでは、「IAは唯一意味と構造を統合できる領域である」ことや、「そこには、Choreography(振り付け法)、Taxonomy(分類学)、Ontology(意味論)が必要だけれども、それ以外を排除するとか、これはIAで、これはIAではないといったように、自ら分野を狭めるのではなく、意味を中心に据えて、そこに必要なものであればどんな手段や分野、領域でも取り込むのだ。」という話もありました。
テクニカルなところでは、クロスチャンネルで情報を利用可能な状態とするための、メタデータ、セマンティック、オントロジーといった情報そのものについての話も多かったという意味でもIA的。
最後のクロージングキーノートでKaren McGraneが「今がIAであることにベストなタイミングである」「世界はこれまでになくIAを必要としている」「IA Forever!」と言っていたことも象徴的です。
加えて今年はいくつかのセッションで「ユニコーン」がモチーフとして使われていたことも印象的でした。ユニコーンは実在しないけれども素晴らしい存在というようなものとして認識されているようでした。
IAとはなんなのか、IAの価値とはなんなのか、どのような立ち位置でいるべきか、自身を省みるような今回のIA Summit。自身をどう規定するにせよIAが知っているべき領域や分野は多岐に渡るため、さまざまな分野のことに高い専門性が必要で超人的であるという意味でもユニコーンであり、異なるものをブリッジしたり統合し、特別な存在のものとして意味をもたせるという点でもユニコーン的だったのかもしれません。