世界行脚 vol.13 [2013.7.21-24] Road to San Francisco

HCD(人間中心設計)関連メンバーと行く

HCD-Net Tour in San Francisco

スタートアップがひしめくサンフランシスコエリアで 大学、研究機関、デザイン会社の視察とHCDに関する意見交換

HCD-Netによって企画された、サンフランシスコ視察ツアーが7月末に催行され、はせがわさんとマリオがサンフランシスコへ行ってきました。カリフォルニア芸術大学(CCA)やパロアルト研究所(PARC)、そしてAdaptive PathやLUXrのオフィスを訪問したとのこと。今回の世界行脚はこのサンフランシスコ視察の様子をご紹介します!

HCD-Netとは

人間中心設計(HCD:Human Centered Design)推進機構。ユーザビリティ推進のための事業母体としてのNPOで、はせがわさんは理事の1人を務めています。

HCD-Net

http://www.hcdnet.org

HCDについてもっと詳しく

コラム 「HCDとは:使う人の観点でものを作るためのしくみ」

http://www.concentinc.jp/labs/2010/04/hcd_overview/

Tour Members

長谷川敦士

Information Architect

長谷川 敦士

[はせがわさん]

坂田一倫

UX Architect

坂田 一倫

[マリオ]

Navigator

河内尚子

Communication
Manager

河内 尚子

[チビラーシカ]

チビラーシカ:マリオとはニューオーリンズで開催された去年のIA Summitに一緒に行ったけれど、同僚としてこうやって話を聞くのは初めてだよねー。

マリオ:そうなんですよー。コンセントに転職してきてすぐにこうやって海外に行くことになるとは…。

チビラーシカ:コンセントからは、はせがわさんとマリオが参加してきたこのツアー、ほかにはどんな人が参加したの?

マリオ:日本から約30名のHCD関係者が参加しまして、その中には、教育機関の教育者、学生もいれば、エージェンシーサイドの人もやメーカーの方もいて、多彩な顔ぶれでしたよ。

チビラーシカ:へぇ。視察ツアーってそもそも何しにどこにいったわけ?

マリオ:現地の教育機関でのプログラムや、UXデザイン系の会社の最近の動向を探るという感じでしょうか。僕らの同業とも言えるエージェンシーからの事例を聞いたり、パネルディスカッションを通して、エージェンシーだけでなく、教育機関やサービス提供企業がデザイン戦略をどのようにとらえ、実際にどのような手法を用いているのか、またどのように社内に展開したり教育したりしているのか、といったことを聞いてくることができました。

こんなところに行ってきました#1 Design MBAコースを持つカリフォルニア芸術大学(CCA: California Collage of Arts)

チビラーシカ:今回のツアーの最初の見学先がここ、カリフォルニア芸術大学(CCA)なんだね。

マリオ:そうです。非常に行きづらいところにあってミッドタウンから30分ぐらい歩きましたよ。まるで廃墟のようなところにありました。

California Collage of the Artsってどんなところ?
「デザインシンキング」という言葉が聞かれるようになってずいぶん経ちます。デザイナーの考え方をもっとビジネスに活かそうといった動きが盛んですが、そういう動きが盛んになればなるほど、デザイナーもビジネス言語を知る必要がある、という話も出てきます。イノベーションを生み出すためのデザインプロセスが優れていても、経営層にその必要性や効果を、彼らの言葉で伝えなければ伝わらないからです。デザインとビジネス、そこをまさにブリッジするためのコースを提供しているのが、カリフォルニア芸術大学(California Collage of the Arts)。ここはデザインストラテジストのNathan Shedroff氏らが中心となって、世界ではじめてデザイン戦略を専門としたMBAの教育プログラムを提供していることで知られています。 チビラーシカ:CCAでは何してきたの?

1. キャンパスツアー

マリオ:キャンパスを見学させてもらいましたが、夏休み期間で構内はひっそり。とはいえ、この学校のコンセプトは「Low-Residency Program」。在学生はそもそも月に4〜5回しかキャンパスに来ないそう。物理的な距離によって、オンラインでのプロジェクトチーム間のコミュニケーションが発生し、結果的にHigh Collaboration Team(コラボレーションが非常に濃いチーム)を作ることにつながるんだそうです。

学生はどんな人たち?
学生の平均年齢は32歳。関連・類似分野の経験を3〜5年積んでいることが入学の最低条件とのこと。卒業生の進路としては、デザインコンサルティング会社やハードウェア会社のイノベーションセンターなどが代表的な例。
どんな設備がある?
とても大きい3Dプリンターなどもあり、積極的にプロトタイピングができる環境。今後は試作品のオートメーションに力を入れることで、コンセプトワークやデザインシンキングに時間をより費やすことができるようにする。

2. パネルディスカッション

マリオ:キャンパスツアーの後は、HCD-NetのインターナショナルアドバイザリーボードのKevinがモデレーターとなって、パネルディスカッションがありました。参加者はCCAのChairmanであるNathan Shedroff、エクスペリエンスデザイン会社Methodの代表Kevin、元IDEOで、前職はGoogle PlusのUXデザインも担当していた現SalesforceのクリエイティブディレクターのCharles、REX(Relationship Economy eXpedition)代表のJerry、HCD-Netの理事としてはせがわさんや千葉工大の山崎先生も加わり、かなり豪華なメンバーでしたね。

こんなところに行ってきました#2 企業エスノグラフィのパイオニアPARC

チビラーシカ:CCAのあとはパロアルト?

マリオ:そうです。サンフランシスコから電車で1時間ほど移動して、パロアルトにあるPalo Alto Research Center(PARC)に行きました。CCAでのパネルディスカッションがかなり時間的に押してしまったので、ランチを食べながらの移動というバタバタしたものになり、到着するやいなや、すぐに事例発表を聞きました。

今回紹介してもらったのは、看護師の日常業務をサポートするデジタルプロダクトを考える「Digital Nurse Assistant(病院で働く看護師のためのデジタルアシスタント)」というプロジェクトと、「The Human Component of Smart Parking(スマートパーキングのヒト的要素)」という、パーキングメーターのリ・デザインプロジェクトの2つの事例。

PARCってどんなところ?
ゼロックス社が、情報科学と物理化学において世界トップレベルの専門家を結集し、ジョージ・ベイク博士の指揮のもと、「情報のアーキテクト(The Architects of Information)となるべく、Xeroxの研究機関として設立されたパロアルト研究所(Xerox PARC)。現在はXeroxの100%子会社になっているR&Dの機能を持つリサーチ会社です。1970年の設立以来、レーザー印刷やWYSIWYGやGUI、ユビキタスコンピューティングといった、今では私たちもよく知っているモノや概念やコトの多くが、実はこのPARCから生まれているんです!人間の行動をありのままの状態で研究するエスノグラフィという手法を技術イノベーションの分野に導入したパイオニアとしても知られています。
看護師の日常業務をサポートするデジタルプロダクトを考える「Digital Nurse Assistant(病院で働く看護師のためのデジタルアシスタント)」というプロジェクトと、「The Human Component of Smart Parking(スマートパーキングのヒト的要素)」という、パーキングメーターのリ・デザインプロジェクトの事例を聞きました。どちらもエスノグラフィ調査を通じて情報のインプットや分析など行っていましたが、興味深かったのが、エスノグラフィ調査で利用したビデオと同じような質感で、ソリューション紹介のデモ・ムービーを作っていたところ。実はこれが一番大切なのかもしれないと思いました。

Very New Experience サンフランシスコ滞在中に、Google Glassを体験してきた2人。

チビラーシカ:羨ましい!どうだったの?どうだったの?

流行語大賞になれるか「OK, Glass!」

マリオ:メガネのような形状のGoogle Glass。手で触れることなくボイスコントロールで、検索、写真撮影、動画撮影、ナビゲーション表示といったことができます。起動ももちろん音声。コマンドは「OK, Glass!」。これ日本に入ってきたら、みんなこの言葉を唱えるようになって流行語大賞とかになるんじゃないですかね。

初体験で発見! Google Glassは変顔になる

マリオ:Google Glassをメガネのように装着すると、情報は目の前のガラスに表示されます。視線を大きくそらす必要はないのですが、実際にはやや斜め上に情報が表示され、また音声コマンドをつぶやくために口をあけていることが多い状態になり、装着時はけっこうな変顔になりますね。

こんなところに行ってきました#3 Adaptive Path/LUXr UXデザインの体系化と浸透に貢献しているUXコンサルティング会社。

チビラーシカ:Adaptive Pathにも行ったんだねー。私も2年ぐらい前に行ったよー。どうだった?

マリオ:今回は、Adaptive PathといえばおなじみのJJGこと、チーフクリエイティブディレクターのJesse James Garrettと、2年ほど前にジョインしたというデザインディレクターのPatrick Quattlebaumが、現在の彼らの事業のことや今どんなことを考えているかを紹介してくれました。彼らはこれまでもIA Summitでカスタマージャーニーマップを紹介したり、さまざまな国でUXワークショップなども手がけてきていますが、ユーザー視点が強調されがちのUXに加え、最近では、よりサービス提供者側の視点や意識も加味された「SX(Service Experience)」なんて言葉を使い始めたりもしていますね。

マリオ:Adaptive Pathのほかには、僕の知り合いがいるということもありLUXrという、スタートアップをUX面から支援しているコンサルティング会社も訪問してきました。彼らはスタートアップがUXのアプローチをリーン(※)で回せるようなキット「LUXr Bento Box」を提供していたりもして、そのあたりも興味深いと思いました。

チビラーシカ:限られた日程でも、充実した訪問ができて良かったですね!

Adaptive PathやLUXr訪問についてもっと詳しく

【レポート】サンフランシスコUX事情

http://www.concentinc.jp/labs/2013/09/report-sfo-ux-consulting/

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