世界行脚 vol.15 [2013.11.17-24] Road to Cardiff
UK Tour Service Design Global Conference in Cardiff
Transformation through Service Design
Transformation through Service Design
UX Architect
[マリオ]
twitter: @mariosakata
Communication
Manager
[チビラーシカ]
twitter: @chibirashika
カーディフはロンドンから西に250kmほどのところにあるウェールズの首都で港があります。
日本からカーディフへの直行便はありません。カーディフにはヒースロー空港からロンドンの西の玄関口パディントンを経由して電車で入ることもできますが、スーツケースを持っての電車乗り継ぎは大変!そして、時間的にはさほど変わらないようだったので、コンセントメンバーは全員、ヒースローからコーチ(長距離バス)で、カーディフのコーチステーションへと移動しました。
カンファレンス期間中は、カーディフ湾にせり出すような立地にある、モダンで「ラグジュアリーな5つ星ホテル」The St. David's Hotel & Spaに滞在しました。
カンファレンス会場となったWales Millennium Centreまでは、可愛らしい雑貨屋さんや、カフェ、レストラン、ブティックなどが集まるMermaid Quayというウォーターフロントショッピングセンターを横切って、徒歩7~8分という便利なところ。
ホテルの従業員たちもとてもフレンドリーで快適に過ごしました。
街の中心部にはカーディフ城があります。古代ローマ人が砦を築いたところまで遡るとその歴史はなんと2,000年。
その周辺にはパブやブティックなど、見て歩いているだけでも楽しい小さなお店の並ぶ通りがあります。また、一角にはマーケットもありました。
冷たい霧雨のなか、The keep(天守閣)に登ったりお屋敷を見学したり。バンケットボールや図書館は圧巻でした。
2日間のカンファレンスに先立ち、18日にはMember’s Dayが開催され、1年間の活動状況が報告されました。
1年間でメンバーアカウントが219から279に増え、コミュニティがどんどん拡大。
数字だけで見ると一瞬少なそうに見えますが、1アカウントあたり5名までのコーポレートアカウントもこのなかに含まれるので、実際にはこの数字の数倍の人がSDNに参加しています。
1年で新しく5つのナショナルチャプター(地域支部)が設立されたとのこと。スウェーデン、フィンランド、ポーランド、サンフランシスコ、そして日本です。日本支部についてははせがわさんが代表を務めていて、5月には東京で初めての「Service Design Network Japan Conference」を開催したりもしました。
SDNのサイトがリニューアルされ、コンテンツが拡充されています。275以上のドキュメントが入手可能とのことで、多数のケーススタディを読むことができます。また会員向けに公開されている機関誌「Touchpoint」の記事も、1記事単位で購入することもできるようになったとのこと。
http://www.service-design-network.org/
IDEOのLydia Howlandのプレゼンテーションでは、「Service Design Research + Start-up Mentality = Real-time Service Design」として、すぐにプロダクトやサービスをリアル・ワールドに投入しそこから得られるフィードバックを開発に生かしていくというスタートアップのメンタリティを、データ収集やリサーチに重きを置いているサービスデザインに持ち込もう、という話がありました。
http://www.slideshare.net/sdnetwork/sdnc-presentation-02final
サービスデザインは単にデザイン部門にとどまる話ではなく、アイディアとマネジメントへのアプローチがセットになったものであるため、組織そのものを変えていく必要性についても言及されます。ENGINEのJames Samperiからは組織変革のドライバーとして、Business centric to Customer centric(ビジネス中心から顧客中心へ)、Product development to Service development(製品開発からサービス開発へ)、Analytical approach to Imaginative approach(分析的アプローチから想像力に富んだアプローチへ) へという3つが提示されました。
http://www.slideshare.net/engineservicedesign/sdnc13-engine-keynote
デザインがビジネスリテラシーの一部として認められつつあり、デザインにとってすばらしい時代が来ている、という話からスタートしたBarclaysのデザインディレクターLee Sankeyのプレゼン。アウトカムよりプロセスの方を重視しがちでは?という鋭い指摘も。デザインの役割や責任は広がってきている一方、これまでのプロセスは変わり、領域も曖昧になり、デザイン素材(対象)もさまざまになってきている状況での、3つの機会を次のように示唆。
・デビル(悪魔)はもはや細部にではなく、分断や差異にこそ宿る
・何を取り去るかではなく、何を加えるか。パーソナリティや差異性をシステムに加えることは大切。
・サービスがどう機能かするかを超越し、いったいどんな意味を持つのかということが大切。
http://www.slideshare.net/sdnetwork/sdnc13-day1-the-new-seriousness-of-design
カンファレンス終了翌日、大崎くんとマリオは帰国の途へ。
はせがわさん、バネさん、チビラーシカはそれぞれの滞在先を目指して、一旦ロンドンへ移動しました。
カーディフのホテルからカーディフ中央駅までは(寄り道した距離なども含めると)約3キロ。
気温が低く風も吹きつけるなら、重いスーツケースを転がしながらみんなで歩いて駅へと向かいました。
カーディフからロンドンのパディントン駅へは電車で2時間半ほどで到着。駅のカフェで3人でプロセッコを飲みながら一息着いた後は、解散! はせがわさんは電車でブライトンへ。私とバネさんはロンドン市内のそれぞれのホテルへ。
で、その晩。
バネさんのお誘いでロンドンで一緒にミュージカルを見ることにしました。
私が前から行ってみたいと思っていたByronというハンバーガー屋でバネさんと待ち合わせをして腹ごしらえ。
それから、Victoriaにある劇場へ。見たのは「Billy Elliot」。
映画にもなっていて、日本では「リトル・ダンサー」として知られている作品です。炭坑町を舞台に一人の男の子が、当時女性のものとされていたバレエに夢中になり、プロのバレエ・ダンサーを目指していくというストーリーです。ミュージカルですから、歌って踊れるのはもちろん、バレエもできて…しかも、少年で…と、キャスティングも大変そうな作品。実際に、日本ではこれほどの役を務められる子役がなかなかいないとのことで、ロンドンだからこそ見る価値があるミュージカルのようです。
ところで、サービスデザインの話の時によく出てくるのが、演劇にちなんだ「フロントステージ」と「バックステージ」という表現。フロントステージはまさに劇そのもので観客を楽しませる部分。バックステージの方は舞台を盛り上げるためのセットや備品を整えるというような裏方部分。表舞台の体験(UX)を提供するためには、バックステージの仕組みが欠かせないというわけです。「Billy Elliot」でも場面転換のために、床下から螺旋階段状になった、まるで2階建ての部屋を断面図で見ているようなそんな舞台装置が出てきたり、ストーリーにあわせてバラエティに富んだ小道具が配置されたり…と、ステージ演出も凝っていました。また、ミュージカルそのものだけではなく、チケットブースやグッズ販売、カウンターバー、会場誘導など、さまざまな役割の人がそれぞれの仕事をこなすことで、ミュージカルそのものを楽しむことができるように機能しているんだなと改めて思いました。
プライベートで見に行ったミュージカルですが、実はサービスデザイン的な面を改めて考える機会にもなり、サービスデザインカンファレンスの締めくくりにふさわしい夜になりました。