コンセントとグループ会社のPIVOTは、2016年4月18日と21日の2日間、就職活動生向けのイベント「CONCENT×PIVOT Night Session 2017」を共同開催。プログラムの第一部で、コンセント代表取締役でインフォメーションアーキテクトの長谷川敦士と、PIVOT代表取締役社長の宮嵜泰成による「社会に果たすデザイン会社の役割」と題したトークセッションを行いました。
当日は、文学部やシステムデザインマネジメント研究科、商学部、コンピュータサイエンス、経済学部、教育学部というようにいろんなバックグラウンドの学生の方々に参加いただき、長谷川と宮嵜からも参考としてそれぞれが「デザイン」にたどり着くまでのバックグラウンドをお話ししました。本記事ではその内容をご紹介します。
(バックグラウンド以外のトークセッション内容は、別記事「【対談】長谷川敦士 × 宮嵜泰成『デザイン会社が社会に果たすべき役割とは』〜 CONCENT×PIVOT Night Session 2017 より〜」にてご紹介しています。ぜひ合わせてご一読ください。)
◎Index
バックグラウンド1:長谷川敦士(コンセント代表取締役/インフォメーションアーキテクト)
-「理解のデザイン」に興味をもったきっかけ
- 映画『Powers of Ten』で広がった未知の世界への興味
バックグラウンド2:宮嵜泰成(PIVOT代表取締役社長)
- 現場出発で身をもって実感しながら本質に気づいていった
バックグラウンド1:
長谷川敦士(コンセント代表取締役/インフォメーションアーキテクト)
長谷川:
大学の学部時代は物理学科にいて素粒子物理学をやっていました。
素粒子物理学というのは、物が一番小さくなったときの構成要素を研究対象とする分野のことです。後にノーベル物理学賞を授賞することになる、スーパーカミオカンデ(東京大学宇宙線研究所が岐阜県飛騨市神岡町の神岡鉱山の地下 1000mに設置した素粒子物理研究のための観測装置。コトバンクより引用)のプロジェクトがあるんですが、今から20年くらい前、ちょうどその発見をした頃にプロジェクトをやっていました。
「物が一番小さくなると何がわかるんだろうか?」ということを知りたいという欲求で、大学院の修士課程でも素粒子物理の研究を続けていたのですが、そのうち「物が一番小さくなっても何だかよくわからない」ということがよくわかって。正確に言えば、物が一番小さい状態というのは数式で記述はできるんですけれども。ただ、それが僕の中で直感的に「あ、わかった」ということに結びつかないということがわかったんです。そうして興味をもち始めたのが「人間の脳みそは何をやっているんだろう」ということでした。
人工知能の分野は今でこそ流行っていますが、僕が大学院生の頃の90年代は「冬の時期」と呼ばれ人工知能が下火になった時期。そんな時代のなか人工知能の研究分野に移って、そこで認知科学と呼ばれている研究をやりました。
院を合わせて9年間くらいずっとそうした研究をしていたのですが、2000年になるぐらいのときに、「物事を理解するということのデザインをする」という分野があることを知ったんですね。きっかけはリチャード・ソール・ワーマンというアメリカの編集者です。もともとは建築家でその後グラフィックデザイナーになり編集者になった人です。
NHKで放送されていたりするので知っている人も多いと思いますが、TEDカンファレンス(以下、TED)を生み出したのがこのリチャード・ソール・ワーマンです。
「TED」は「Technology, Entertainment and Design」の略で、TEDのWebサイトには、TEDのロゴの脇に「Ideas worth spreading」(広げる価値のあるアイディア)ということが書いてあります。彼が「これからの時代、“テクノロジー”と“人を楽しませること”と“デザイン”のアイディアは集めて共有することがすごく大事になる。いろんな人たちのアイディアを集める場をつくれば知の共有ができるだろう」とやり始めたことなんです。余談ですが、TEDは1993年に日本で開催されたことがあり、呼んだのはコンセントの取締役である吉田望。彼がリチャード・ソール・ワーマンのファンで電通時代に呼んだんです。
リチャード・ソール・ワーマンは『Understanding USA』(1999年。Ted Conferences)というおもしろい本を書いていて、統計データはそのままでは読みにくいのでわかりやすくするために、アメリカの統計白書を片っ端からインフォグラフィックスにする、ということをこの本でしているんですよね。こうしたプロジェクトを彼はガンガンやっていて、彼の他にも、アクセスマップやガイドブックをつくったりなどいろんなことをやっている人がいる。
彼らの考え方や活動に触れ、こうした意味での新しい「デザイン」という仕事は、美大出身ではない僕でもできる可能性があるんじゃないかと思ったんです。冒頭でもお話ししたように、このような新しい「デザイン」の分野はこれからすごく重要になると思って始めました。
長谷川:
科学のバックグラウンドがあって、リチャード・ソール・ワーマンの「物事を理解することのデザインには、これから可能性がすごくある」という言葉に興味をもち今デザインをやっているわけですが、もう1つ忘れもしないきっかけが『Powers of Ten』という映画です。
映画の冒頭に、公園で人が寝ているところからカメラがどんどんズームアウトしていくというシーンがあります。
英語の「Power」は「○の何乗」というときの数字の肩につけるものを指すので、映画のタイトルの「Powers of Ten」というのは「10の何乗」という意味です。最初が10の0乗だから1mスケールで人が映っているのだけど、10の1乗になると10mスケールになり、次は10の2乗…という具合にどんどんカメラがひいていく。すると地球が丸ごと入り、そのままひいていくと太陽系が入りさらに太陽系が小さくなっていって銀河系に入っていくというふうにどんどんどんどんひいていくのですが、27乗ぐらいまでいくと今度はガーッと寄っていって人のスケールになる。そして10のマイナス1乗になり10センチのスケールになって人の手の中にどんどん入っていって、10のマイナス20乗くらいまでいくと。
このように科学への興味やいろんな視点を得ることにすごく役立つ映画なんですが、IBMと一緒にこの映画をつくったのが、有名な家具デザイナーであるチャールズ&レイ・イームズ夫妻。
プロダクトを手がけていたイームズ夫妻が、人にどうやってものを伝えていったらいいかということや、自分が見えている世界をいかに描いて伝えようかといったことをすごく考えて、コンセプトをつくっているんです。
この映画が制作されたのは1968年で、まだ素粒子というものは一般的には知られていない時代。「ここから先はまだ明されていない未知の世界である」みたいなことで話が終わって。小学生のときにこの映画を観て「わ! その先はなんだろう?!」と思ったのが、僕がそもそも物理をやるきっかけでした。
映画自体がすごくおもしろくて、大きさにとらわれないでいろんな視点で物を考えるということの一助になると思うのでぜひ見てもらいたいです。
今思えば、チャールズ&レイ・イームズ夫妻のデザインされた世界の中で僕は自分のモチベーションを培っていったので、「デザイン」に始まって今また「デザイン」をやっているんだなと感じています。
バックグラウンド2:
宮嵜泰成(PIVOT代表取締役社長)
宮嵜:
長谷川さんはアカデミックな世界で生きてこられていて研究の場に長く身を置かれていたんですけど、僕は全く対極の道を歩んでいて、すごく早い段階で社会に出ています。
今はアプリやWeb サイトをつくっているPIVOTという会社にたまたまたどり着いていますが、初めに入社した会社で仕事をしているうちに、コンピューターが会社に浸透してきたのがそもそものきっかけです。ちょうど90年代の終わりぐらいですが、インターネットに接続するということ自体が普通の中小企業にとっては「そんなの必要なの?」という時代。そんな時代に「これ、おもしろいんじゃないかな」と思って、自分で勝手に勉強を始めて、だんだんとそういう道に来ているんですね。
そのとき一番おもしろいと感じたのは、その道具の使い方を正しく知りさえすれば、たとえば仕事が10分の1ぐらいの効率になったりしたことです。今はそこまでのドラスティックな変化を起こすことはできるとはいえ難しいですが、当時はその使い方さえ理解すればものすごい効率化が図れることがわかった。勝手に社内を啓蒙・説得して予算をつけてもらってといったことをやっているうちに、どんどん本業になってきたという流れです。
初めは小手先のテクノロジーに踊らされますが、「正しく使う」とか「きちんと効率化しよう」ということに向き合っていくと、「効率化をするためにはどうすればいいか」「そもそもこの業務はどういう仕組みになっていて、なぜこういうルールで動いてるのか」といったことをだんだん考えるようになってくるんですよね。現場の表面的なことよりももう少しさかのぼって、「そもそもなんでこうなっているのか」といった本質的なことをしっかり考えるのが大事。「デザイン」という言葉についても、見た目だけの話ではないということに、やっているうちに気づいていきました。
PIVOTがAZグループに参画する前、コンセントの長谷川さんは僕にとっては先生みたいな感じだったんですよね(笑)。著書などを読んで「こういうふうにきちんと考えて取り組んでいくのが、これから大事だな」と感じていて。そういう情報をキャッチしていたら、たまたまですけれども最終的に出会って今は一緒のグループにいるという。
対談日:2016年4月18日、21日
※本記事は2日間の対談内容をもとに構成したものです。
※本記事は、コンセントのコーポレートサイト「ラボ」からの転載です。
(原稿執筆:岩楯ユカ/コンセント PR division)
【関連リンク】
⇒ ラボ|【対談】長谷川敦士 × 宮嵜泰成「デザイン会社が社会に果たすべき役割とは」〜 CONCENT×PIVOT Night Session 2017 より〜
⇒ イベント情報|就職活動生向けイベント「CONCENT×PIVOT Night Session 2017」開催のお知らせ
デザイン会社は社会に対してどんな役割を果たしているのか。そもそも「デザイン」とはなにか。
コンセントとグループ会社のPIVOTは、2016年4月18日と21日の2日間、就職活動生向けのイベント「CONCENT×PIVOT Night Session 2017」を共同開催。プログラムの第一部で、コンセント代表取締役でインフォメーションアーキテクトの長谷川敦士と、PIVOT代表取締役社長の宮嵜泰成による「社会に果たすデザイン会社の役割」と題したトークセッションを行いました。
「デザイン思考」「Design Thinking」といった言葉をよく耳にする現代においては、「デザイン」という言葉が、いわゆる表面的な見た目だけではなく、本来の「設計」という意味として日本でも広く捉えられるようになってきています。
このトークセッションでは、デザインやデザイン業界に興味をもち仕事の選択肢として考えている学生の方々に本質的なデザインの意義を伝え、人や社会のために活かせるようになってほしいと考え、デザインの捉え方や社会に果たすべき使命についてお話ししました。
本記事ではこのトークセッションの内容をご紹介します。
(セッション中にご紹介した2名のバックグラウンドも、別記事「【対談|バックグラウンド編】長谷川敦士 × 宮嵜泰成『“デザイン”をはじめたきっかけ』〜 CONCENT×PIVOT Night Session 2017 より〜」にてご紹介しています。ぜひ合わせてご一読ください。)
◎Index
はじめに
-「デザイン」は見た目の話だけではない
「デザイン」とは
-「ライザップ型」になった「デザイン」
-「どうデザインすべきか」が日々変化する
デザイン思考とは
- 非デザイナーがデザイナーのように物事を考えるための方法論
- デザインの普遍的なアプローチ〜「具体→分析→抽象→統合→具体」〜
社会におけるデザイン会社の役割
- なぜデザイナーのアプローチが社会の役に立つのか?
- デザイン会社の存在意義
ユーザー体験のデザインに必要なこと
- 自分のための「アート」「サイエンス」、人のための「デザイン」「エンジニアリング」
- 領域横断で考えることが重要
- 「デザイン」と「エンジニアリング」の融合
就活生へのメッセージ
-「デザイン」のアプローチを、世の中にもっと普及していこう
- 本質を突き詰めて、世の中をよくしていこう
はじめに
長谷川:
デザインの仕事に関わっていない人に「『デザイン』ってなんだと思う?」と聞くと、ファッションデザインのことを思いつく人が一番多いと言われています。グラフィックデザインという言葉にも馴染みがあるので広告のポスターなどを思い浮かべる人もいるかもしれませんね。
「デザイン」という言葉は、一般的にはいわゆる「見た目」として認識されることが多いと思いますが、本来は見た目だけのことではありませんし、「デザイン」という言葉は今、こうした意味とは異なる捉えられ方になり、社会的な市民権を得てきています。
今回のイベントの参加者属性もいわゆる美大系と呼ばれる大学と一般大学の割合が半々であることや、僕自身、武蔵野美術大学や多摩美術大学などの美大で講義をしていますが、たとえば産業技術大学院大学などの美大以外でも「デザイン」を教える機会が増えてきていること、また、クライアントからいただく相談内容をみていても、社会の中で「デザイン」が今までとは違う意味で捉えられているという感覚がありますし、デザイン会社を経営している立場としてもそうなっていくと思っています。
宮嵜:
今、長谷川さんが言った「そうなっていくと思っている」というところは結構大事なことなんです。特に日本では、ビジネスにおいてはまだまだ「デザイン」という言葉が見た目の話に終始してしまっているのが実際のところだと感じています。
みなさんにはぜひ、ふだん生活する中で「もう少しどうにかならないかな」ということを考えるようにしてほしいです。たとえば電車に乗るときにSuicaのチャージをしたり、銀行のATMでお金を出し入れしたりするときに「なにか迷うことはないか」とか、新しい設備があって自動化されるはずなのになぜか近くには案内係の人がたくさんいて説明をしてくれるといったシーンをみたら「不思議だな」と思える感覚を日常的に身につけてほしい。
さらにそうした問題があったときに、解決手段として文字サイズなど画面の見た目をよくしたらいいと安易に思ったり、そうしたことをやるのがデザイナーだと一般的には思われがちなのですが、それだけではないことを理解してほしいと思います。「利用する人が、そもそもなんの目的でそこにいて、一番やりたいことはなにか」を根源的にひも解いていき、そこからいろんなしくみを考えた結果として目にしたり触れたりできるアウトプットが出てくるわけで、その思考や行為全体が「デザイン」なんです。みなさんがふだん目にしているものは単に「かっこいいもの」としてデザインされたわけではなく、たくさんの「デザインの思想」が含まれて設計されたものなんです。
僕らがやっている「デザイン」は、特に「設計が大事」ということがポイントなんですね。
長谷川:
「デザイン」という言葉の意味が拡大化している中で、宮嵜さんが言ったように日常での困りごとがあったとき、本質的なことをみてどうすればそれを解決できるのかを考える。そうするといろんな解決方法がみえてきます。
すごくおもしろいケーススタディーに空港のサイン計画があります。人の流れを考えて、手前には急いでいる人向けの情報を、奥にはそんなに急いでいない人向けの情報を表示するようにしたら、急いでいる人は必要な情報を素早く取得して反応できるし、急いでいない人は手前にある情報は自分が必要とする情報ではないことがきちんとわかる。つまり「『時間軸』をコントロールしてサインの設置場所を変える」というデザインをしているんですよね。
今日は会社説明のイベントではありますが、「デザイン」という言葉をきちんとわかってもらえればそれでいいと思っています。コンセントやPIVOTに応募してもらうというのは正直問題ではなく、むしろ「デザイン」をしっかり理解した上で、いろんな業種や企業をみて志望先を決めた方がいいからです。
「デザイン」とは
長谷川:
前述の「本質を突き詰めるアプローチ」は「デザイン思考」(英語では「Design Thinking」)と言われているのですが、今、この言葉は『Harvard Business Review』(ダイヤモンド社)というマーケティングや経営などの理論を語る有名なグローバル・マネジメント誌をはじめとしたビジネス誌でも頻繁に取り上げられていて、ちょっとした流行になっています。正確に言えば流行はひととおり終わり、「デザイン思考はこれからどうなるのか」といった普及の段階に入っています。
専門分野だけではなくビジネス一般で語られるようになったということは、「デザイン」の一定の重要性が世界的に認められてきていることを意味していますが、このように世の中の認識が大きく塗り替えられたのは2000年代でまだ最近のことなんです。
プライベートトレーニングジムの「ライザップ(RIZAP)」をご存知でしょうか?
コンセプトは「結果にコミットする」。「commit(コミット)」を直接和訳するのはなかなか難しいのですが、要は「結果を出します」ということを言っているんですね。
トレーニングマシンやプールなどの設備を充実させているのが従来型のジムとすると、「ライザップという概念を使うことによって、痩せることができたり筋肉をつけることができる状況になる、ということをやる」のがライザップ。従来型のジムも目的は同じですが、目的を達成するための手段が異なっているんです。「設備というモノを提供する」という従来型のジムに対して、「ゴールが達成できるか」ということに深く関与するのがライザップの特徴です。
実は「デザイン」の捉えられ方も昔は従来型のジムのようなものでした。つまり、「グラフィックデザイン」「インダストリアルデザイン」「ファッションデザイン」といった言葉に代表され、「絵を描く」「モノのカタチをつくる」といったこと、たとえるならば従来型のジムが設備を用意しているという「手段」のことがデザインだと言われていたんです。
それが今、どのように認識が変わってきたかというと、ここ数年さまざまなシーンで聞くようになった「エクスペリエンスデザイン」「体験デザイン」「ユーザーエクスペリエンスデザイン(以下、UXD)」といった言葉に表れているように「あなたが得られる『体験』をつくります、というのが『デザイン』である」と広く捉えられるようになりました。コンセントが実際にやっているのもUXDです。
比喩的に言えば「デザインはライザップ型になった」。「ユーザーの体験という『結果』」に対していかに関与できるかというように、「デザイン」というものの考え方が変わってきているのが時代の大きな流れです。
長谷川:
これまでは「トレーニングジムをつくりましょう」といったら場所やマシンなどの設備のことを考えればよかったように、たとえばグラフィックデザインをやるのであれば、まずは平面構成のことや「みえるということはなにか」といったことを学ぶなど分野としてわかりやすかったのですが、「UXDをやります」という場合、ものすごく壮大な話になってきます。ライザップで言えば、その人が今太っている原因はなにかを探求し、設備だけではなく食事制限なども含めて痩せるという目的を果たすための過程づくりをやらなければいけないというように、全方位的に関わることになるからです。
ただ学生時代には、最初からこうしたことに取り組むよりも、まずは自分の得意分野をつくっていくようにした方がいいでしょう。すべてのことについて万能なユーザーエクスペリエンスデザイナーというのはまだいないんですね。果たしてなにをデザインしたらいいのか、お題がどんどん変わってくるので。
たとえばスマートフォンも、10年ほど前はモバイル端末にすべての情報が入るなんて、産業としてはまだ誰も考えていなかったわけです。あくまでメールのためのサブ端末という位置づけだったと思います。ところが今では、WebプロジェクトをみてもPCサイトよりもスマートフォンサイトをメインとして考えるのが当たり前というように、ビジネスにおいて重要なものになりました。
でもさらに5年後はどうなるのか? スマートフォンといった端末が果たして適切なのか?
たとえば今、マイクロソフトの「HoloLens」では「拡張現実(AR:オーグメンテッドリアリティ)」という技術で環境にバーチャルなものを融合できるようになったりとテクノロジーが日々発達しているため、「ユーザー体験をどうデザインしていくべきか」ということ自体もどんどん変化していきます。UXDを提供するための方法論をもっている我々のような会社であっても日々学ばなければいけないんです。
デザイン思考とは
長谷川:
本質を突き詰めるアプローチである「デザイン思考」という言葉ですが、特にデザイン業界に興味のあるみなさんにはよく理解してほしいので本来の意味を説明しておきますね。
「デザイン思考」というのは、「非デザイナーがデザイナーのように物事を考えるための方法論」です。つまり、デザイン教育を受けていない人、デザイン業界ではないビジネスパーソンといった人たちが、デザイナーのやっている取り組みをうまく活用して、新しい事業の成功などを目指すためのものです。
ですので、デザイン会社であるコンセントやPIVOTのメンバーにとっては、自分たちの考え方が「デザイン思考」というわけです。
やみくもにブレインストーミングしたりアイディア100連発出しをするのではなく、デザイナーが性(さが)としてやっている「本質を突き詰めるアプローチ」という正しい方法論をとる。ただ、こう言っては紛らわしいかもしれませんが、これをやれば絶対うまくいくというものではありません。これは方法論というものが常にもっている宿命のようなものですが。やってもつまらないアイディアしか出ない人もいれば、放っておいてもおもしろいアイディアを出せる人もいます。でも、こうしたプロセスを丁寧に追っていくことによって、いい企画を出せたり本質に近づくことができたりするのも事実です。かなり熟練した人であってもやっています。
長谷川:
「本質を突き詰める」といったときに、そもそもどこまで戻ってどう考えていくのかを理解してもらうために、1つ概念を紹介したいと思います。ちなみにこれは、僕が大学院のドクター(博士課程)を出る20代後半までずっとサイエンスの分野にいたところを急にデザインをやることにしたので(関連記事「【対談|バックグラウンド編】長谷川敦士 × 宮嵜泰成『“デザイン”をはじめたきっかけ』〜 CONCENT×PIVOT Night Session 2017 より〜」を参照)、美大を卒業してデザインでしのぎを削っている人がいっぱいいるところに喧嘩を売りに行くという状況にもかかわらず何も知らないのはまずいと思い、デザインについていろいろ勉強してたどり着いたものです。
その概念とは、問題解決のための人の活動には「具体→分析→抽象→統合→具体」というように物事の思考を進めていくという、普遍性の高いプロセスがあるということです(上図)。
この図の中の言葉を説明すると、「分析」というのは物事をより細かくみていく、分解をする、理解をするといった理解側のアプローチで、「統合」はそれらを組み合わせて問題を解決しようとか、アウトプットしようといった方向性です。英語で言うと「Synthesis and analysis」という言葉でよく対で使われるものです。
「抽象」(abstract)とは概念的であるとか何かをモデル化したりすることで、それに対して「具体」があります。こちらも「もっと具体的に喋るように」とか「抽象概念がどう」といったような対比があり対で使われる言葉です。
ユーザー体験だけではなくたとえば組織の問題や自分の将来などどんな問題であっても解決しようというときには、まず具体的なものをみてそこにある事実を把握します。たとえば「今この場にいる人たちの特徴をまとめて何か解決案を示せ」といった場合、まず男子は何人、女子は何人と数えて年齢のばらつきを調べ、具体的にこの場にいる人全体の属性を分析的に理解するというように。
そうして進めると「男子が15人、女子が18人」とわかるわけですが1人1人について最適化していってもきりがなく事実自体をみていても解決には至らないので、それらを抽象化します。事実を整理して、情報量を減らしたりどういう要素があるのかと分解したり、モデル化するということを行うわけです。「ざっくりみると、女子はこんな感じで男子はこう」といったように。あるいは男女ではなく「活発な人はこれぐらいで受け身な人はこれぐらい」と分けるのもいいかもしれません。抽象化する際の軸はいろいろあります。
こうして単純化したところから「こんなことが問題なんだ」という理解をして、ヒントを得て、どう解決するのか概念的な解決の方向を考え、それらを組み合わせて統合し、具体的なカタチとして現実化させていきます。たとえばみなさんにリーフレットを配ってコミュニケーションをとろうとか、アプリで何かをしようといった具合に。そうしてつくった試作を問題に適応して具体的に検証し、効果がなければまたこのサイクルを回していきます。
このアプローチは意識してやっている人もいれば無自覚にやっている人もいるのですが、なにか問題に直面したときにそれを解決するためこのような思考で振る舞っていくということが普遍的なアプローチとしてあり、このアプローチが社会的な問題全般の解決に役立つと考えています。
社会におけるデザイン会社の役割
長谷川:
「デザイナー」と呼ばれている人たちは問題解決にこうしたアプローチをとっています。
そしてデザインは最終的には人が触れるものに落とし込まれる場合が多いので、このアプローチをするときに必ず「人」をみるんですね。「誰の問題を解決しようとしているのか」「どういうふうに困っているのか」といった視点で人を観察して理解をする。そこから課題をみつけていくんです。
触れられるもの以外でも、たとえばテクノロジー分野における人が介在しない技術的な問題の解決にこういうプロセスをとることもあります。また、問題解決型のデザインだけではなく、「スペキュラティブ・デザイン」と呼ばれるビジョン提案型のデザインでも同じです。「スペキュラティブ」というのは「投機型」という意味で、デザインのアプローチを使って企業のより先のビジョンをつくったり、新しい方向性を提示することにより世界を変えていこうというものです。
ではなぜデザイナーは人をみることを重視しているのでしょうか。それはニーズの変化にあります。
技術や豊かさが不足していて世界的に成長期だった時代には、たとえば自動車ならきちんとつくられるといった「生産能力」や、いかに速く走るかといった「性能」などが重視されていたので、人が介在しないいわゆる工学的なアプローチでも有効だったし、あるいは狭い意味でのマーケティングと呼ばれている「誰に売るか」をファインチューニングしていけばビジネスが成立していました。もちろん局所的にはデザイン思考のようなアプローチはとられていましたが。
ところがモノが足りてきた現代では、車で言えばこれ以上の速さは求められないというように、モノ自体への大きな渇望がなくなってきて、ただモノをつくるだけでは商売として成り立たなくなってきました。別の言い方をすれば、世界が豊かになったから「人の体験」を考えることにやっと向き合えるようになってきたんですね。
じゃあどんな体験がいいのかというと、人により千差万別で多様化しています。だからデザイナーは「人」をいちいちみて考えるわけです。「考える」というのも人をみるのと同様に重要です。具体的にみたことを組み合わせてカタチにするだけなら「デザイン」とは言えないでしょう。
車に関連した「体験」を考えるいいケーススタディーに、カーシェアのサービスがあります。今すごく流行っていますね。車をただつくって販売するのではなくて、「どんなふうに人が車を利用しやすくすれば、所有はしなくてもうまく利用だけできるようになるか」ということが設計されています。また「Uber」というタクシーの配車サービスでは、サービス提供社側だけではなく、誰でも運転手になることができます。アプリの中で「ここからここまで乗りたい」と言っている人に対し「自分が運転手をやります」と言うと「では運転手をお願いします」となり、運転手を務めた人にお金が入るという新しいシステムです。
このように、「人がいかにうまく使えるようになっているか」という社会の中での「システム」をデザインしたり、「人の利用体験」をデザインするということがすごく重要になってきています。そしてこうした新しい事業やサービスの開発にあたり、デザイナーがやってきた問題解決のアプローチで考えていくことは、社会の役に立つことになるんです。
宮嵜:
今の「社会の中でのシステム」という話に関連して、僕がITに興味をもってから今日までの間に何が変わってきたかというところをお話ししたいと思います。
従来の巨大IT企業は昭和の社会システムを支えるIT化をしてきました。たとえば市役所に行って住民票を請求すると、住民票が紙として出力されて手渡されますよね。プリンターから出力されるので、これも「IT化されている」わけです。ただ、先ほどの図でいくと「具体」を「分析」しても「具体」のままなんです。つまり、コンピューターなどのIT機器に置き換えればそれだけで物事の効率化ができていたんです。
でも今は、社会のシステム自体が大きく変わってきているので、あらためてこの「デザイン思考」といったプロセスに真剣に取り組むことで、きちんとカタチにできるチャンスにすごく恵まれていると言えるんです。
さっきの「Uber」のような新しい社会システムを生み出せる環境になってきたときに、「デザイン」で解決するということにPIVOTも取り組むことができているのですが、これは、大手のIT企業がいる中で僕らのような会社でやる1番のおもしろさでもあります。
長谷川:
コンセントでは、企業のコミュニケーションデザインやブランディング、新規事業開発といった際に、こういうアプローチを適用しながらやっているわけですが、デザイン会社のメリットとしてはいろんな業種の仕事を扱えることがあります。ものすごいスピードで変化していく現代の社会では先を読むことは簡単ではありませんが、いろいろ試しながらやっていけるのは僕らにとっても経験が積めることになります。
そして今、世の中全体が「デザイン思考」の重要性に気づいていることが、僕らが「デザイン」の可能性を見出している1つの要因になっています。そしてそれはコンセントやPIVOTのようなデザイン会社が存在する意義につながると思っています。「デザイン」が重視されていることは、多くの一般企業(※デザイン会社ではないという意味での「一般」)の事業開発部門などにデザインを学んだ人が就職して活躍していることからも言えるでしょう。この場合はデザイナーを組織の中に入れることでデザイン思考を取り入れていることになりますが、「デザイナーがもっている考え方を事業開発に活かしている」わけです。
多くの企業は解決すべき課題をたくさん抱えていますし、また個人の日常生活でも解決したら嬉しいことは多い。「デザイン」のアプローチを使い課題を解決していくのが僕らデザイン会社の仕事です。コンセントやPIVOTのようなポジションの会社が世の中から求められているし、デザインで解決できる可能性がわれわれにはあるので、社会に対する役割として果たさなければいけない、と強く感じています。
ユーザー体験のデザインに必要なこと
長谷川:
コンセントやPVOTについて理解いただくためにもう1つ概念をご紹介します。また4象限しばりで申し訳ないのですが。
「アート」「サイエンス」「デザイン」「エンジニアリング」という4つに分け、「誰のためか」という縦軸に「自分のため」と「人のため」を、横軸に「自然」「人の内面」のいずれをよりみているかというのをとることができます(上図)。なお、ここでの「アート」は絵や文学、音楽なども含めた芸術全般を指しています。
「デザイン」と「アート」は美術大学の中にデザイン学科があることもあってよく混同されがちなのですが、このように概念的に整理することで一般化して考えることもできるんですね。
僕はずっと「サイエンス」の分野を研究していたので(関連記事「【対談|バックグラウンド編】長谷川敦士 × 宮嵜泰成『“デザイン”をはじめたきっかけ』〜 CONCENT×PIVOT Night Session 2017 より〜」を参照)100%言い切れるのですが、「サイエンス」では人のためにということは全く考えていないんです。自然科学への興味をもとに「それが何なんだろう?」という探究を行うのが「サイエンス」の本質なので、むしろ、他人に役立てようとかは考えない方がいい。結果的に人の役に立つかもしれないですが。
理系の人はよくロジカルシンキングだと言われますが、やっていること自体は本当に思いつきなんですよね。ただ、思いつきだけだと他の人に共有できないから、思いついたこととそれ以外がつながるように階段をつくっている。ロジカルにシンキングしているわけではなくて、「今までにわかったのはこの辺りで、こういうことがわかって、これはここからこうつながります」と書いたロジックで説明をしているだけなんです。
僕がやっていたスーパーカミオカンデにしても他のバイオケミカルなものにしても「サイエンス」は全て基本的には「自分のため」にやっています。これは「アート」も同じで、興味の向き先が自然一般であれば「サイエンス」、人間の内面寄りであれば「アート」になる。もちろんアートビジネスとして結果的に商売にはなるのですが、どちらかと言うと「これを表現したい」という自分の中の創造欲求や衝動でつくられていくものが「アート」ですから。
「アート」と「サイエンス」は基本的には人間の知的な探求で、たいていの大学の「教養学部」の英語表記が「School of Arts & Sciences」とされているのもそのためです。
そして「人のため」に「アート」を応用するのが「デザイン」で、「サイエンス」を応用するのが「エンジニアリング」です。
長谷川:
ここでの「デザイン」で表現されるものは先ほどお話ししたユーザー体験というよりは、グラフィックやテキスタイル、ファッションなどに近いのですがこれらは全て、人の反応を呼び起こしたり人の感情に対して働くというような「人間についてのアートで得られた知見や表現、直感を応用して人のために役立てているもの」です。
一方、ニュートリノや水の流れ方など「自然についてサイエンスで得られた知見を応用して、社会の問題を解決したり人の役に立たせようとするもの」が、土木や機械工学、情報工学などの「エンジニアリング」になります。
この4象限でのデザインがこれまでのデザインになるのですが、コンセントやPIVOTが取り組んでいる「ユーザー体験をつくっていくデザイン」は、このすべての分野が統合されて生み出されます。
「ユーザー体験のデザイン」では、たとえば人が大勢いることによってなにか変わるかとか、ソーシャルネットなどのコミュニケーションによって人間の距離感のおき方がどう変化するかといった、人間の気持ちも考えていくことになります。この「行動経済学」と呼ばれている「人間の意思決定というものは全然合理的ではなく、感情に左右されるというものである」ということを無視できないわけですが、実はこれらは人間についての知見を得てきた「アート」の領域でもまだそんなにわかっている話ではないんです。
先ほどの「結果にコミットする」というライザップ型で考えるときには、「アート」的な要素や「サイエンス」で発見された論証可能な知見など、すべての領域をミックスして考える必要があります。どこか1つの領域だけをやればいいのではないんですね。たとえば美大でデザインをやっていた人でもその知識だけで乗り切ろうとするのではなく、他の領域の知識と組み合わせて考えて問題を解決するということが要求されるようになっています。個人的にはこうした状況はすごくおもしろくて僕自身もやっていますし、実際コンセントで「デザイナー」を名乗っている人の中には美大卒ではない人がたくさんいます。
特に「エンジニアリング」と「デザイン」という2分野はものすごく融合しなければいけなくなっています。それがコンセントとPIVOTが同じ企業グループとして一緒にやっている理由でもありますが。
宮嵜:
そうですね。「デザインとエンジニアリングをいかにつないでいくか」ということはPIVOTの大きいテーマでもあります。
一般の消費者からしたら、デザイナーがデザインしたものがきちんとカタチになってでき上がるわけですから、デザイナーとエンジニアが手を携えてやるのは当然の話ですが、実際にはその間に壁がうまれることもあります。よりエモーショナルに人の心に訴える話と生産技術や効率化の話を一緒に考える必要がありますので。これは利益相反したりすることもありますし、デザインとエンジニアを担当している会社が異なる場合もあります。
だからこそデザイナーとエンジニアがいかに手を組むかというのは重要なテーマなんですよね。そこがおもしろいところでもありますが。
就活生へのメッセージ
長谷川:
今日のデザインプロセスの話を聞いて「そんなことわかってるよ」と思った人もいるかもしれません。ただ、「分析した内容から統合する」「具体的に観察したことを抽象化する」「統合して見出されたことを具体化してカタチにする」ときなど、プロセスとは言ったものの実際に回すにはいろんなレベルでのジャンプが必要になり、個人の力量が問われます。目の前の困ったことや、大学での卒業研究やレポート、課題などに取り組むときにも適用可能なフレームワークですので、ぜひふだんから意識をしていただけたらと思います。
今、デザインやデザイン思考は世界的に重視されていて、今後ますます必要とされていくものだと本心から信じています。今日お話ししたようなデザインの考え方やアプローチを、もっと社会一般に普及させていかなければいけない。そのときに、国内だけではなくグローバルな動向を常にキャッチしておく必要がありますが、中国、東南アジア、南米、ヨーロッパなどではビジネスシーンにおいて自国語ではなくほぼ100%英語を使っているため同時にその情報を得らるのに対し、日本だけが言葉の障壁で遅れがちなため、デザインを扱っているわれわれがそういう話を世の中にもっと発信していかねばという使命感をもっています。採用という文脈で言えば、そういうことを考え一緒にチャレンジしていく人を求めています。
ただ、お互いよく知らないのに「ぜひうちにきて」と言うのは不誠実ですし、コンセントやPIVOTに入るか入らないかは別として、今日お話ししたような問題意識はこれからの世の中にすごく必要だと思っているのでぜひ議論したいですね。
宮嵜:
絵を描く勉強を専門的にされている方もいらっしゃれば理系の方もいらっしゃったりと、いろんな分野を学んでいる方が今日来てくださっています。
僕らPIVOTにも、デザインの専門的な知識をもった人もいれば、新しい技術を取り込んでプログラムをつくっている人もいます。今日の話のようなことを考えて、デザインとエンジニアリングの両者のスキルをすごく高い次元で活用して世の中にアウトプットを出していきたいと思っているので、いろんな方にきてもらえるといいなとこのようなイベントを開催したわけです。
「はじめからきちんと考えたいんです」という出発点の仕事がだいぶ増えてきているとはいえ、まだまだそういう仕事ばかりではないのが現状です。
でもPIVOTでは、たとえばクライアントからの依頼が「この画面をよくしてほしい」という端的な内容だったとしても、いきなり画面だけをみて使い勝手がどうこうと判断していくのではなく、「そもそもこのWebサイトやアプリを使う人は誰で、どういう経路を通ってたどりつくのか」というところから考え、本質にある問題を探り解決方法を提案しています。
言われたことだけをこなすという姿勢ではなく、ときには「めんどうくさい人たちだ」と思われるぐらい(笑)いちいちこうしたアプローチをとっているのは、「本質的な問題をみつけて真剣に考え、エンドユーザーやクライアントにとっていい方向にもっていき、世の中をよくしたい」という信念があるからこそです。
対談日:2016年4月18日、21日
※本記事は2日間の対談内容をもとに構成したものです。
※本記事は、コンセントのコーポレートサイト「ラボ」からの転載です。
(原稿執筆:岩楯ユカ/コンセント PR division)
【関連リンク】
⇒ ラボ|【対談|バックグラウンド編】長谷川敦士 × 宮嵜泰成「『デザイン』をはじめたきっかけ」〜 CONCENT×PIVOT Night Session 2017 より〜
⇒ イベント情報|就職活動生向けイベント「CONCENT×PIVOT Night Session 2017」開催のお知らせ
2016/06/27 11:00
6月某日、通常業務後に新卒9人が一堂に会した。
その目的は6月5日に行われたBBQの反省会…!
来年の幹事のためKPT出しを忘れないうちにやろう!ということで新卒9人が集まりました。
BBQ反省会に交えて当日の様子をご紹介いたします。
裏側も当日の楽しさも新卒9人全員の言葉でどどーんとお伝えできればうれしいです!
メンバー紹介
CONCENT
・糸洲 真美(まみたす)
・稲葉 志奈(Cちゃん)
・佐々木 愛美(ささまな)
・古里 凌哉(ふるを)
PIVOT
・三井 瑛乃(みっちゃん)
・高橋 里佳(たんちゃん)
・佐々木 英恵(はなえ)
・小野 颯太(おのっち)
・大森 春香(しゅんちゃん)
Cちゃん(以下、C)「まず、準備の話やけど、連絡ツールが割と散らかった感あるよね」
たんちゃん(以下、たん)「結果スカイプに落ち着いたのはよかったけど、トレロはうちらも使い方よくわかってなかったしね。あとスプレッドシート多すぎたね」
たん「途中からぶっこんじゃったからわかんないままになっちゃった感があったね。使えてなかった。」
C「タスクに紐づけてデータのせとけば来年とかそこ見るだけでなにすればいいかわかりやすかったかもなあとは思うけどなぜかデータの共有はスプレッドシートだったから」
ふるを(以下、ふる)「トレロを業務でつかってたんはSDの僕としーちゃんくらいだからねえ」
たん「次使うときは二人が言ってたやり方でやればいいんじゃないかな」
まみたす(以下、まみ)「次の新卒の行事? 絶対掃除(※)笑」
C「絶対掃除でトレロ使いだす…?!」
ささまな(以下、ささ)「やる気が違う 笑」
※絶対掃除とは会社の大掃除で、新卒が指揮をとります!
まみ「こういうのを機に新しいSNSはやらせるとかもありかもね。
「新卒今これ使ってますよ~」的なんできたらおもしろかったかも!」
みっちゃん(以下、み)「係の分担を考えたほうがよかったなあ、と
連絡係だったんだけどあんまり仕事なかった…、ので…汗」
しゅんちゃん(以下、しゅ)「会計係もなかなか最初出番がないから戸惑っちゃった」
たん「お互いの稼働を把握できなかったのがね」
しゅん「コンセントとのやりとりがどうなってるんだろう、ってなることが多かった」
ふる「稼働表とかあればよかったのかもね。通常業務も意外と忙しかったりしたし」
たん「みんな進行状況が見えなかったね、わたしと英恵が会場決めが意外と時間かかっちゃって、今後amu(※)とかでやるイベントなら大丈夫だとは思うんだけど」
まみ「え、amuでBBQできんの?」
C「いや、それはできひんやろ 笑」
はなえ(以下、はな ⇒ Profile)「わたしからは一つ! 会場の下見は早めに交渉は大胆に! ですね」
おのっち(以下、おの)「アクセスはよかったけど木とか自然がほしかった」
※amuとはコンセントやPIVOTが所属するAZグループが運営しているイベントスペースのことです。
C「あ、そうだ。日曜さけたいね」
ささ「それはね、めっちゃ思った、すごい、思った」
ふる「市場あいてないしね」
まみ「それは、理由が違うな 笑」
ふる「そういうことかと思ったんだけど」
C「違う 笑」
C「席配置奇数で5席で1席離れ島感があったのがなあ」
ささ「そうそう、わたし間違えて別のお客さんのとこ座るとこだったもん」
ふる「テーブル数を減らす代わりにBBQの時間延長すればよかったなあって。3テーブルくらいで。ゆっくりだらだらとかでもいいかなあって思った」
ささ「そうだね、ただめっちゃ大きいテーブルじゃないと最初みんなおなかすいちゃってるから、戦争になる」
たん「離れ島対策で当日どこの机で何やきます! ってスカイプしようっていってたんだけど結局できてなかったんで」
しゅん「スカイプは私も見てなかったなあ、声かけたほうがはやいね」
C「メガホンとかほしいね 笑」
まみ「たしかに」
C「私の焼きそば投稿がむなしく放置されるという… 笑」
ささ「ちょっと見てたわ 笑」
C「みんなスマホみないんよね」
たん「だからアナウンスよかったかなあと」
C「はなえが声掛けよかった!」
はな「あざーす!」
たん「名札よかった!ポスターとかつくってくれたもの全部よかった」
はな「ポスターよかったよね」
C「信金オフィスにポスターはんの忘れてたわ(小声)」
ささ「それね、わたしじわじわ気づいてたw」
まみ「タイムテーブルよかったね、フェスみたいな感じになった」
み「机ごとに食事あるのよかったね」
C「テーブルに番号つけたのもわかりやすくてよかった」
ふる「バイト時代の記憶よみがえってくる 笑」
たん「席のくじ、最初あんまりいらなかったかなって思ったけどばらけさせて意外とPIVOTとコンセントで自己紹介してるのがみえたのでよかったね」
まみ「楽しかったって言ってくださった先輩がいて、すごい結果論だけど、よかったんじゃないかな。割とみんなからBBQ大丈夫…?って腫物を触る感じで心配されてたけど 笑」
たん「PIVOTでもすごい良かったって言われた」
ささ「みんなおのおの楽しんでる感じがよかったね」
み「PIVOT欠席者1人だけだったのよかった」
CNT「すごーい!」
おの「BBQに参加した人がいっぱいでよかったから来年もっと参加者増えるの目指していこー」
C「チラシみたいなんとかあったらよかったかなあ。あれば対面の告知しやすかったよね、せっかくポスターがかわいかったからそれ使って」
ささ「当日はBBQマスターの手助けが」
全員「BBQマスター…?」
ささ「ほら、うちらあんまりBBQ知らないからたくさん助けていただいて」
たん「福田さん本当にたくさん助けていただいて助かったね」
まみ「BBQに慣れてる松田さんとかすごい前菜までつくって来てくださって」
C「あれ、すごかった!うまかった!」
ごめんなさい、前菜作ってきてくださったの撮り忘れました…。
み「いろいろ食べたけど全部おいしかった」
おの「よかったことはお土産が多かったこと」
ふる「お土産ってまぎらわしいなあ」
ささ「さしいれねw 魚とかね」
C「お酒もいっぱい持ってきてくださって、飲み放題じゃなくてそっちばっか飲んでた 笑」
まみ「デザートめっちゃよかった。きゃりーぱみゅぱみゅあいす」
しゅん「あれそんな名前なの? 笑」
ささ「勝手にね、名前つけた 笑」
まみ「つくってるときみんなやばいって言ってた、見た目が… 笑」
おの「もっと料理を学びたいと思いました。前さんを見てて」
ふる「ジンギスカンはりきってたのに、前さんに持ってかれてたね」
まみ「え、そうなの? 笑」
はな「どうなることかと思ったけど始まったらたのしかったね」
ささ「たのしかったー!」
ふる「食材けっこう余ってみんな持って帰ったりしてたね」
C「川原田さんね 笑」
ふる「川原田さんめっちゃ持って帰ってたね」
ささ「うれしそうだったね」
ふる「余ったのは結構問題かなあって思ったんだけど」
C「それそもそも問題なのかな…」
たん「足りないよりはいいからね」
ささ「まあ川原田さんがおいしく食べたなら 笑」
しゅん「片付けどうだったかなあ」
ふる「片付け褒められてたよ」
たん「うん、はやかった」
ふる「トッテモ、スムーズ、ダッタ(なぜか片言)」
ささ「かわいいww」
C「すごい手伝ってくださったから。めっちゃ捨ててくれはった」
まみ「躊躇なく捨てたからね、はい捨てまーすみたいな 笑」
おの「はやかったはやかった」
C「うーんどうまとめようかこれ」
ささ「5・7・5で感想言う?」
ふる「さすがだわ」
C「え、俳句なの?!」
まみ「シルバー川柳的なね、サラリーマン川柳的なw」
C「では、ここで一句!」
ささ「争奪戦 高級魚で 肉余る」
C「もう一声!」
ささ「小野っちが 焦がしたお肉は ジンギスカン」
C「焦がしてたっけ?」
おの「焦がしてない!ここで一句:持ってきた ジンギスカンで 思い出す 今日も寒いか 北の故郷」
ふる「あ、ふるさとかけられちゃった」
C「短歌やし全然締まらない件について」
み「わたししめます 笑 雲途切れ ごちそう途切れぬ さざめく両国(字余り)」
※本記事はコンセントのサービスデザインチームによるブログ『Service Design Park』に、2016年2月19日に掲載された記事の転載です(転載元:http://sd-park.tumblr.com/post/139586448836/sd-salon-vol10)。
こんにちは。サービスデザイナーの佐藤史です。
2015年10月20日に開催された、サービスデザインのオープンな勉強会「Service Design Salon Vol. 10」のレポートをお送りします。
今回のイベントは、デンマークのサービスデザインエージェンシー「VIA Design」のCo-founder and PartnerであるIda VesterdalさんとCo Owner のSune Kjemsさん、同じくデンマークにおけるデザインの向上と普及を目的とした活動拠点「Danish Design Centre」のCEOであるChristian Basonさんの3名が訪日されたことをきっかけに、コンセントが企画したもので、Service Design Network日本支部が主催するイベント「Service Design initiative」との共催で行いました。
デンマークといえば、北欧の伝統的な家具のデザインや、福祉先進国というイメージを持たれる方が多いかもしれませんね。でもそれだけではなく、もともと「参加型デザイン」といって、問題解決のためのデザインプロセスに、ユーザーや地域住民を巻き込んで行う手法が古くから根付いており、「サービスデザイン先進国」と呼んでも差し支えないのでは?と私個人は考えております。
(ちなみに、デンマークという国で「デザイン」がどれだけ高い価値を発揮しているのかは、同僚の小山田が「東京デンマークWEEK2015」のレポートで熱く語っておりますので、ぜひそれも併せて読んでみて下さい!)
⇒ 東京デンマークWEEK2015イベントレポートVol.1 イントロダクション
「東京デンマークWEEK 2015」とは、デンマークのコペンハーゲンに拠点をおくビジネスコンサルタンシー ayanomimi が主催するトークセッションを中心としたイベントです。
さて、当日は「Changing Organizations into Service Design」と題して、サービスデザインを実行するために必要な組織変革への取り組みについて、日本とデンマーク、双方の国の事例を紹介しつつ意見交換を行いました。スピーカーは、先の3氏に加え、日本側からは、株式会社リクルートテクノロジーズ執行役員でService Design Network日本支部共同代表でもある岩佐浩徳さん、同じくService Design Network日本支部共同代表であるコンセントの長谷川の、合計5名というこれまでのサロンにはない豪華なメンバーでの開催となりました。
組織変革への取り組みといえば、私も普段の仕事で、いろいろなクライアント企業の方から、「サービスデザインの概念や手法は理解したが、それを社内の上長に説明したり組織に定着させたりするうえで様々な課題がある」というお話をよく聞かせていただいております。そんなモヤモヤに対してデザイナーはどう応えるべきか? 何か良い示唆を得られればと思いつつ、以下レポートさせていただきます。
冒頭ではまず長谷川から、「日本の組織文化」に関して、興味深い問題提起がされました。ここで長谷川は、日本人もしくは日本企業の特性として、
●全体的な戦略策定よりも、個別の部分的な課題解決を得意とする(例えばサイトについバナー広告などを載せ過ぎてしまい見た目がゴチャゴチャになってしまうことって、たまにありませんか?)
●互いに相手の意図を“察しあう”能力の高さ(日本人は自分の意見をハッキリ言葉にして言うのが苦手とか、最近いろんな場所で良く聞きますよね)
●伝える努力を要さずとも、文脈を介して何となく意志が通じてしまう「ハイコンテクスト」な生活環境(このあたりは、日本が島国でほぼ単一民族国家に近い状態が、歴史上長く続いたことが影響しているのかもしれません)
等々を、日本で生まれた様々な製品やサイトのデザイン事例を紹介しながら提示し、このような特性は、日本企業の組織変革において大いに考慮すべき点ではないかと示唆しました。
会は、この長谷川の問題提起をうけて本題へと入りました。日本とデンマーク両国のスピーカーによる組織変革の実践例の発表です。岩佐さん、Idaさん、Suneさんの3名から、それぞれプレゼンテーションをしていただきました。
岩佐さんのプレゼンテーションは「企業文化をサービスデザインスタイルに 」という題。巨大グループ企業であるリクルート社には、飲食店検索・住宅情報・転職情報・宿泊予約など複数の異なるサービス(つまり事業)が存在することはみなさんご存知ですね。でもユーザーにとってはどのサービスも「リクルート」というひとつのブランドです。ですので、会社としては、事業の種類に関係なく提供するサービス(つまり顧客体験)はどれも一定以上の品質でなければ、企業ブランド価値を維持できません。そこでリクルート社では、全事業部門のUX戦略策定を横断して担当する部門を置くことで、会社が提供する全サービスの品質担保を図っているそうです。この話を聞いただけでも、会社の各事業部門でUX戦略を担当するサービスデザイナーの責任は重大そうに感じますが、さらに驚いたことは、サービスデザイナーに求められる職能要件の幅広さです。ブランディング、PM、マーケティング、エンジニアリング…などそれぞれのスキルに対して、主務と兼務の領域を設定して、評価とキャリアパスの設定をしているとのこと(そして、基本は全部経験する!)。端的に言うとリクルート社では、事業戦略とUX戦略、両方の能力を備えた人材の育成を目指しているのです。
サービスデザイナーは、デザインだけして終わりの存在ではなく、それを「事業としてどう収益を上げていくか」「どういうテクノロジーで実現するのか」についても知見を持っていないと、サービスをデザインしても「絵に描いた餅」になってしまうから勉強をしなければ!ですね。
ところで今回のイベントでは、デンマークの大学でサービスデザインを学び日本語にも堪能なEsben Grøndalさんが、プレゼンテーションの通訳を担当してくれました。デンマークからいらっしゃったプレゼンターの皆さんも日本の大企業によるサービスデザイン導入の取り組みに興味深く聞き入っていらっしゃいました。
また、岩佐さんの当日のプレゼン資料は下記に公開されておりますので、ぜひご覧になってください。
⇒【UI/UX】Service Design Initiative/Service Design Salon Vol. 10 「Changing Organization into Service Design」にて、弊社執行役員が講演いたしました。~企業文化をサービスデザインスタイルに [執行役員 岩佐浩徳]|ニュース|株式会社リクルートテクノロジーズ
Idaさんからは、自社でサービスを提供するリクルート社とは反対に、クライアント企業から受託という形態でデザインプロジェクトを実施するエージェンシーの立場(コンセントも同じですね)から、「デザインシンキングを組織で実行する、ケースとチャレンジ」について紹介いただきました。
Idaさんはまず、デザイン思考によるプロセスを組織に導入するときは、導入効果と、導入による収益の向上までをきちんと計画するべきであり、デザイン思考といっても、ただ手法を学んで実践するだけでは単なる「Theater(見世物)」になってしまう可能性があることへの注意を促しました。デザインが事業にどう貢献するのかをよく考えること――岩佐さんの発表とも共通する点が多いですね。さらに私が興味深いと感じたことは、組織に新しいデザインプロセスを導入しようとする時、デザイナーは、旧来のプロセスがどんなものであったのかを理解し、それを変えねばならない理由を正しく説明すること、なおかつ、現場で働いている人達には新しいプロセスを学ぶための時間を与えることを、Idaさんが話の中で強調されていたことです。これはわかりやすく喩えるならば、昔の童話にある「北風と太陽」ということでしょうか。北風のように、組織に対して従来のプロセスを真っ向から否定して変更させるようではダメで、太陽のように相手の立場を理解しながら新しいプロセスをポカポカと根付かせていく地道な努力が必要だと私は理解しました。
ユーザー視点やデザイン思考を組織に導入して変化を起こそうとしても人は正論だけでは動かない――。だから地道な努力が必要だと改めて省みさせられたプレゼンテーションでした。
続いては、その「地道な努力」の具体例としてSune さんから、「デザインシンキングによる刑務所環境改善」の事例を紹介していただきました。
デンマークの刑務所では長年、刑務所生活のストレスによる受刑者のメンタルヘルスの荒廃が大きな問題となっていました。しかも時には刑務所スタッフとの衝突も招くことがあり、過去にも何度か改善を試みたがなかなか良い方向には向かわなかったようです。Suneさんはまず、この問題を受刑者側だけの問題ではなく、刑務所で働くスタッフとの関係性の問題として新たに捉え直すことからアプローチして課題解決を試みました。そして、受刑者とスタッフがお互いの悩みや課題について会話する場を設けました。やがて双方が会話を重ねるなかで、受刑者だけではなくスタッフ側でも大きなストレスを抱えていたことがわかり、刑務所を「サービス」「人材育成」の場として、囚人との関係を「顧客との関係」として考え直してみることで、刑務所環境を改善させることに成功しました。
刑務所という特殊な環境の事例とはいえ、これと同じように、組織のなかで異なる立場の人が日頃抱いている課題意識をお互いに理解してないがために、ビジネスがなかなか改善に向かわないということは、例えば岩佐さんが話されたリクルートのような大企業、Idaさんが話されたクライアント企業と受託のデザイナーの間にもあるのかもしれません。
ただ、ビジネスの場で、お金を払ってくれる「いわゆるお客さん」以外のステークホルダーも「顧客」として捉え直してみることでサービスが劇的に良い方向へと改善するケースは、大いにありうることだと私は思います。プレゼン後のインタラクションセッションで、長谷川が「このアプローチは企業のバックオフィスにおけるフロント部門向けサービスの改善にも展開できるのでは?」と質問していましたが、それに対してSuneさんも、「例えば、社内で異なる立場どうしの人間が、同じ課題について議論をする場合には活かせるかもしれない」と応えていました。
さて、日本とデンマーク、自社開発と受託開発、それぞれの立場から事例紹介をしていただいた後は、いよいよ本日の締めくくりです。Christianさんから、「デンマークのビジネスと社会へのデザイン領域の拡大」と題して、この日最後のプレゼンテーションをしていただきました。
デンマークでも、かつてはデザインというと“ものづくり・工匠”に象徴されるような特定の専門分野という印象が強かったが、それが社会の変化にともない、「モノのデザイン」から「サービスのデザイン」、「成長のためのデザイン」から「ソーシャルのためのデザイン」、そして「ヒロイックな人間によるデザイン」から「共創によるデザイン」へと、デザインという概念が包含する範囲が大きく広がっている。そのような状況をChristianさんは、従来の「Expert Design(専門家によるデザイン)」に対する「Diffuse’ Design(普及版デザイン)」と定義づけました。
この「Diffuse’ Design」、日本語でどう解釈するか難しいのですが、私は以下のように捉えました。
デザインに関する専門知識を持たない普通の人でもデザインプロセスに参加することが当然な時代になった。だからこそ、従前からデザイナーと呼ばれていた人たちは、これからの社会で自分の価値をどう発揮していくのかが問われている――と。実際、Christianさんはプレゼンテーションの後半部分で、デザインがビジネスに貢献するためには、いかに早くアイデアや可能性を発見して新しいビジネスに繋げられるかが大事であり、デザイナーは価値創造や洞察のための「Catalyze(触媒作用を及ぼす存在)」になっていくと話されました。
ここから先はさらに私の個人的な解釈になりますが、Christianさんがおっしゃったこの「Catalyze」という言葉、これがデザイナーという職能の新しい定義のしかたのひとつになりうるのでは?と考えています。事業者とユーザーを結びつけてサービスに変化を生み出すこと、クライアント企業とデザイナーを結びつけて組織を変化させること、はたまた大企業や社会の中にいろいろなステークホルダーが存在する時、それぞれの立場をうまく繋げて相互理解なり合意形成なりに導くこと…。
インタラクションセッションの最後に、Christianさんは、今は、ユーザーも日常生活のなかで共創(Co-Creation)を求めている時代だと話されていましたが、日本にもデンマークのような参加型デザインや共創の文化が広く行き渡ったときに、よき触媒作用を生む存在=Catalyzeとしてのデザイナーの意義が強く問われることになりそうです。
さてこうして、5人のスピーカーによる合計約3時間のプレゼンテーションを改めて振り返りレポートする大役(?)を終えました。最後に総括を書かなければならないのですが、各スピーカーの思いを私の拙い解釈と限られた文字数のなかで正しく伝えられたか正直自信がなく、さらに言うと実はまだ私の中でも結論が出きっていないことがたくさんあります……。そこで、今回は非常に僭越ではありますが、デザイナーの皆さんに、以下の3つの問題提起をさせていただいて今回のイベントの総括に替えたいと思います。
●デザイナーならユーザー視点は持っていて当然、でもユーザーの抱える悩みが、事業の売上・収益に結びつかないとき、どうするか? デザイナーは事業者側の視点も理解したうえで周囲の人と健全な議論ができているか?
●サービスデザイン、デザイン思考、UX等手法はいろいろ存在するが、企業にとって本当に必要なことは、それを組織に導入してどうビジネスを良い方向に変えられるかである。デザイナーはそれに対する回答を持っているか? 手法や概念の習得にばかり没頭して本当に必要なことを見失っていないか?
●デザイナーは、組織やプロジェクトのなかで「よき触媒作用」を及ぼしているか? アウトプットを出すことに没頭して、それが周囲にどう貢献しているかを見失ってはいないか?
最後になりますが、今回のイベントで逐次通訳を担当していただいた、コペンハーゲン在住のサービスデザイナーEsben Grøndalさんに改めて感謝申し上げます。彼の通訳なしにこの原稿は書き上げることができませんでした。デンマークとコンセントService Design Div.との繋がりはこれからも続いていきますので、今後もお互いに研磨しあえる存在でありたいと思います。
この日のスピーカー勢揃い。左から、岩佐さん、Suneさん、Idaさん、Christianさん、長谷川、通訳を担当してくださったEsbenさん。
【執筆者プロフィール】
⇒ 佐藤 史|サストコ
Service Design Salonで一緒にディスカッションしませんか?
今後もさまざまなテーマでService Design Salonを開催予定です。
Service Design Salonの情報は、コンセントの公式Facebookページにて随時告知しておりますので合わせてチェックいただければ幸いです。
⇒ コンセントの公式Facebookページ
【関連リンク】
⇒ オープンな勉強会「Service Design Salon」
⇒ Service Design Salon vol.4 レポート
⇒ 〜日本の公園から考える〜Service Design Salon vol.5 レポート
⇒ Service Design Salon Vol.6/第16回UXD initiative 「サービスデザイン思考と学び」レポート
⇒ 〜UX and Emerging Technologies〜Service Design Salon vol.7 レポート
⇒ Service Design Salon Vol.8/UXD initiative Vol.18 「公共のためのデザインの可能性」レポート
⇒ Service Design Salon Vol.9 「音声認識で考える『相棒』とのインタラクション」レポート
2015/11/17 12:00
※本記事はコンセントのサービスデザインチームによるブログ『Service Design Park』に、2015年9月7日に掲載された記事の転載です(転載元:http://sd-park.tumblr.com/post/128550356071/how-do-i-interact-with-my-buddy-by-voice-recognition)。
By Brian from California Desert, United States (Star Wars Celebration 2015) [CC BY 2.0], via Wikimedia Commons
こんにちは。サービスデザイナーの小山田です。
今回は、2015年8月7日に開催した、サービスデザインのオープンな勉強会「Service Design Salon」のレポートをお送りします。
取り上げたテーマは、「音声認識で考える『相棒』とのインタラクション」。音声認識技術、ディープラーニング、AI、ロボット……、かつてSF映画で描かれてきたような技術が現実に登場するなかで、音声認識はインタラクションのためのUIのひとつとして、製品/サービスの体験価値を決める大きなポイントになるのではないでしょうか。
さらに音声認識は、技術的な制約に加えて、利用文脈的な制約が強いものでもあります。どんなシーンで、どのように利用することがもっとも自然で使いやすいのか、音声認識を利用する時の製品/サービスの存在をどのように捉えるべきなのか。
音声認識をともなうインタラクションのこれからの可能性を探るために、コンセントのサービスデザイナー、星貴史と、AQ株式会社のUXデザイナー、イ・ソヨンさんの2名のスピーカーによる話題提供をもとに、幅広い視点からディスカッションを行いました。
開催趣旨と合わせて課題の共有のために、最初に私の方から、映画のなかに登場する音声認識を取り上げ、その特徴をマッピングしたものを紹介しながら導入の話をしました。
今回のテーマに音声認識を選んだのは、急速に進歩している音声認識という技術と、それが可能にするインタラクションは、コマンド型のUIとは違い、相手と会話をするという点において特殊な意味性を持っていることと、製品/サービスがユーザーの生活のなかで人格をもった存在としてどう関与しうるのかという現実に答えなければならない状況がすでに発生していると感じたからです。
そう考えるきっかけになったのは、今回のスピーカーのお一人でもあるソヨンさんの前職でのブログポストを読んだことがでした。
Yahoo! JAPAN Creative Blog
「Yahoo! 音声アシストのサービスデザイン」
Yahoo! Japanが提供する「音声アシスト」アプリのUXデザインを行う際に、ペルソナを設定し、ユーザー視点から期待価値を想定してUXデザインを行ったという内容のポストです。
ここでは「深夜、ベッドでゴロ寝したままスマホで暇つぶししたい」というニーズの発見があり、それに対して「深夜にアプリからユーザーに雑談を持ちかける」施策で利用数が伸びるというシーンが紹介されています。
これは、ユーザーが眠りにつくまでのしばらくのあいだ、スマホが雑談相手(友達)として振る舞っているといえると思います。現在利用されているデバイスはスマホですが、これはそのまま一家に1台ロボットがあるような状況のシミュレーションといってもいい状況ができあがりつつあるのではないでしょうか。
私は今回のイベントを通して、個人的に以下の3つの点を強く感じました。
●音声認識という技術が利用されると、製品のもつ性質はより強調され、最終的に人格の形成へと向かっていく。
●今後デザインは、人格をもつ存在とのインタラクションが招く、さまざまな事態の倫理的側面を想定する必要が出てくる。
●ユーザーと意思疎通をする対象の関係性は、「弱いロボット」(後述)のように、ユーザー側からのアシストを引き出すようなものも考えうる。
みなさまはこのテーマから、何を感じられるでしょうか。
それでは、当日の発表内容を簡単に紹介していきます。
まずはじめに、車載情報機器のUXデザインを手がけるコンセントの星が「相棒としてのクルマ」をテーマに発表を行いました。
クルマと「相棒」と聞いて30代以上の方が真っ先に思い浮かべるもの……、そう(きっと)「ナイトライダー」の「Knight2000」です。「ナイトライダー」は、人工知能を搭載したスーパーカーと民間の犯罪捜査員がタッグを組んで事件を解決する特撮テレビドラマで、日本では80年代に放映されました。2012年には「ナイトライダーNEXT」として続編も放映された人気作品です。
「ナイトライダー」に登場するスーパーカーKnight2000。
Knight2000 ex107 by K.I.T.T.1982 – +EST Co.,LTD. Universal Studios LLLP.. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.
発表の中で星は、80年代に描かれた人格をもつクルマである「Knight2000」を例に引きながら、現在のAudi A6のCFでの描かれ方を対比し、現在はクルマそのものが相棒となるよりも、まずはクルマの操作をアシストするコンシェルジュ的な存在を目指してUXデザインが行われている状況ではないかと解説します。
そして、現在クルマの音声認識利用で代表的なものとして挙げられるナビゲーションについて、その歴史を振り返ります。初期のカーナビは、ユーザーが地図をめくりながら運転する行為を代替しているもので、音声をコマンドとして利用するナビゲーション操作は、カーナビの歴史のなかでは1996年以降のことだそうです。以下の動画のような初期のナビゲーションシステムは、運転者が地図を確認する行為の代替という意味合いが強いものでした。
⇒ 1981年に登場した世界で初めての地図型ナビゲーションシステム「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」。
音声で操作を行うことは、運転時の視覚情報処理を邪魔することがないため、ユーザーを比較的安全にアシストすることができるという利点があります。たとえば、アイコン表示の場合、一度認識してから意味を解釈する必要がありますが、音声でのインタラクションであれば、意味の置き換えを行わずにそのままユーザーが理解することが可能です。
このようなメリットのために、今後もクルマにおいて音声認識でのインタラクションは重要であり続けるでしょうが、Knight2000のような「相棒」あるいは現在のAudiで描かれているような「コンシェルジュ」など、どのようなキャラクターが求められるかによって、製品に必要な振る舞いは変わっていくことが予想されます。とくに、将来クルマの運転が自動化されると、相棒やコンシェルジュだけにとどまらず、「保護者」、「統率者」、「エンターテイナー」もしくは「ペット」など、クルマや利用シーンごとに望まれるキャラクターの幅が一気に広がるのではないかと予測されます。
このような、音声認識の普及によってクルマにキャラクター性が求められるようになるという予測の一方、もうひとつの可能性についても言及しました。それは、「クルマにはスマホを違和感なく使える環境こそが重要になる」というもの。つまり、普及が進むスマホでの音声認識が、クルマより先にユーザーの生活のなかで「相棒」としての立場を確立すれば、クルマはキャラクター性よりも、その「相棒」を許容する設計が必要になるのではないかという指摘です。
つぎに、AQ株式会社のUXデザイナー、イ・ソヨンさんから「Interaction Design of Artificial Intelligence」と題した、人工知能とのインタラクションの可能性についての話題提供をいただきました。
映画「Ex Machina(日本公開未定)」とチューリングテストを例に挙げつつ、人口知能の発達が、社会的に大きな関心を呼んでいる状態を紹介していただきました。「ユージーン」という13歳の少年を想定したAIがチューリングテストに合格したことや、世界的な理論物理学者であるスティーブン・ホーキング博士が人工知能の行き過ぎた発展に懸念を示したりと、人工知能の発達が急速に進み、人類にとっての脅威になるのではという懸念も現れ始めています。とくに、前述の映画では、検索エンジンとSNSをあわせたような「Bluebook」というサイトのビッグデータから、全能の存在に近いようなAIが誕生する可能性が描かれているそうです。
ソヨンさんは、音声認識を含めて、これらの新しい存在とのインタラクションを考えていくうえで、UXデザイナーが考えるべき5つのポイントがあると語ります。
1つめは、「リレーションシップ」です。それは、映画『her/世界でひとつの彼女』で語られたような、人工知能が恋愛の対象になるような事態。将来のUXデザイナーは、そこまでを見越してUXを考える必要があるのではないかという指摘です。
2つめは、「アピアランス」。どこまで人の似姿としてデザインをするのかという問題です。ロボットのデザインでは、見ためが人間に近づきすぎると、細かい差異が際立ち、かえって不気味さを増してしまうという「不気味の谷」という現象があります。どこまでヒトに似せるのか、技術的な実現可能性と適度なデフォルメのバランス感覚が求められることになるでしょう。
ここでソヨンさんが、iPhoneのSiriのように、ヒトの姿を持たない対象を指して、「透過型」という言葉を使っていたのが印象的でした。「透過型」のデザインは、その向こうで動いているキャラクターに対して、利用者それぞれが自分自身の理想を投影して、自由にさまざまな姿形を思い描くことができます。
3つめに、今回のテーマと最も関係するものとして「カンバセーション」があります。
UNIXのテキストエディタ「vi」や、現在のGoogle検索キーワードを例に、現在は、人間側が機械にとって理解しやすい形に情報を加工してインタラクションを行っている状態だと解説します。現在の音声認識は、会話の修復(意味の通らない会話になった場合に、対象との相互のインタラクションによって、間違いを修正すること)ができていないという現状があります。たとえば前の会話を受けて、「もっと教えて」などと指示をしても、「もっと」をWeb検索してしまうというような事態です。
4つめの「ステータス」という観点も重要です。ユーザーとのインタラクションを行ううえで、人工知能側がどのようなステータスでいるのか(自信がある、ない、考え中、など)を明示的に伝える仕組みを用意する必要があります。
最後の5つめが、「コンテンツ」。これらのポイントを踏まえながら、どのようなコンテンツが、誰に、何のために、どう役に立つのかをきちんと考えていくことが最も大事なことだと強調されていました。そして、ユーザーとどのような関係性のなかで関わるのか、実際のユースケースを考える際には、サービスデザイン的にユーザーの利用文脈と潜在的なニーズを捉えて、UXを考えていくことが今後も変わらず重要であると、お話いただきました。
当日使用したスライド資料は下記リンクからご覧いただけます。
⇒ http://www.slideshare.net/SoyeonLee6/ss-51389306
スピーカー2名の発表のあと、参加者のみなさんとのディスカッションを行いました。そのなかで個人的に非常におもしろかったトピックが「弱いロボット」の概念についてです。
弱いロボットとは豊橋技術科学大学の岡田美智男氏が提唱されている概念で、たとえばゴミのそばには行くが、自力ではゴミを捨てられないロボットがいると、ユーザーがそのゴミをロボットのために捨ててあげるというように、ロボットが全能でないがゆえに、利用者を動かすことができるというものです。
コンセントの長谷川は、海外で弱いロボットの概念を説明しようとすると、「弱い」という言葉からの印象か、ネガティブな内容だととらえられて、うまくその可能性について伝わらないというエピソードを紹介しました。もしかすると、全能ではない「ちょっと頼りない相棒」のようなロボットは、日本的な価値観と親和性が高いのかもしれません。
今回のイベントでは、技術の発展に合わせて利用者とのインタラクションがもつ可能性はさまざまに広がっており、その広がりのなかで、どのような体験価値を提供するのかユーザー視点からUXデザインを考える重要性と、UXデザイナーが考えるべき領域はますます広がりを見せているということを実感しました。
【執筆者プロフィール】
⇒ 小山田 那由他
Service Design Salonで一緒にディスカッションしませんか?
今後もさまざまなテーマでService Design Salonを開催予定です。
Service Design Salonの情報は、コンセントの公式Facebookページにて随時告知しておりますので合わせてチェックいただければ幸いです。
⇒ コンセントの公式Facebookページ
【関連リンク】
⇒ オープンな勉強会「Service Design Salon」
⇒ Service Design Salon vol.4 レポート
⇒ 〜日本の公園から考える〜Service Design Salon vol.5 レポート
⇒ Service Design Salon Vol.6/第16回UXD initiative 「サービスデザイン思考と学び」レポート
⇒ 〜UX and Emerging Technologies〜Service Design Salon vol.7 レポート
⇒ Service Design Salon Vol.8/UXD initiative Vol.18 「公共のためのデザインの可能性」レポート
※本記事はコンセントのサービスデザインチームによるブログ『Service Design Park』に、2015年7月17日に掲載された記事の転載です(転載元:http://sd-park.tumblr.com/post/124327274341/service-design-salon-vol8uxd-initiative)。
こんにちは。サービスデザイナーの小山田です。
今回は、6月16日にUXD initiativeと合同で開催した、サービスデザインのオープンな勉強会「Service Design Salon」のレポートをお送りします。
この会では、「公共のためのデザインの可能性」をテーマにしました。なぜなら、私は「公共」というキーワードが、これからのサービスデザインを考えていく上で重要なことだと感じているからです。
たとえば公園は、誰でもアクセスできる場所として存在しています。しかし、それがつくられ、利用されるプロセス全体を見ると、ステークホルダーに対して開かれていない状況があるのではないでしょうか。花火、ボール遊び、ベンチで寝そべる……。立て看板で明確に禁止されているものもあれば、ベンチのデザインが座ること以外を許容しない設計になっている場合もあります。維持管理の必要性からの制約が強すぎはしないか?要望を、どこに、どう言えばいいのか?そもそも、この公園はどんな利用者を想定しているのか?
公園の例に限らず、あらゆる課題(どのような価値が期待され、どのような価値を提供するのか等)は、視点を広げれば、さまざまなステークホルダーの利害関係でつながる「公共」のなかに存在します。「企業と顧客」「行政と市民」などといった一対一の関係だけでなく、周辺のステークホルダーの関わりを広く見ることで、今まで見えなかった課題の発見や、その本質的な解決を図れるのではないでしょうか。これからのデザインには、周辺環境や周囲の人を巻き込みながら、どのように共通価値を見出していくかというアプローチが必要とされています。
そこで本イベントでは、そもそもどのような視点で「公共」をとらえるのか?公共施設や施策のデザインでは現在どのようなアプローチがとられているのか?幅広い視点から議論をするため、「公共」に対するデザインの実践を行っている武蔵野美術大学の井口博美教授、千葉工業大学の山崎和彦教授をゲストにお迎えし、コンセントの代表の長谷川敦士も加えた3名による話題提供、会場の皆様とのディスカッションを通し、「公共」に対するデザインのヒントを探りました。
「公共」とデザインの関係性には想像以上にたくさんの観点があるということに気づかされるとともに、一方では、「デザインの役割、責任の変化」という大きな課題意識を共有しているのではないかということを強く感じる議論となりました。
それでは、まず当日の内容を簡単にご紹介します。
武蔵野美術大学教授、武蔵野美術大学デザイン・ラウンジ(http://d-lounge.jp/)ディレクターの井口博美氏からは、拡大するデザイン領域と、その先の「ソーシャルデザイン」を見据えたときのサービスデザインの重要性について話していただきました。
デザイナーの活動領域は、生産者である企業とモノを中心としたものから、HCD(Human Centered Design/人間中心設計)の普及にともなって、人間を中心とした包括的なものへと広がっている。社会そのものをデザインするソーシャルデザインは、そのパラダイムシフトの先にあり、サービスデザインをスケールアップさせていくことが、その実現への近道ではないか、という見解をご紹介いただきました。
たしかに、社会そのもののデザインを行うには、市民のニーズに応えるため、企業や行政を含めた、より多様で複雑な状況に対してのアプローチを洗練させていくことが必要だと感じました。
また、井口氏からはデザイン教育に携わる立場から、将来デザイナーに求められる能力的な視点についてもお話いただきました。それは、モノのデザインができるだけでなく、より大きくどのような枠組みのなかでビジョンを共有化し、誰とどのようなポリシーのもとでコラボレーションしていけるのかというものです。ともすればモノ中心になってしまいがちな「デザイン」の捉え方を、パースペクティブな見方によってどう拡張していくのか、大学での実践的活動をベースに、今後さまざまな社会実験を行っていくという言葉が印象的でした。
つぎに、株式会社コンセント代表、インフォメーションアーキテクトの長谷川から、デザインエージェンシーによる政策プロトタイピングの可能性と、サービスデザインによる企業の本業を通したCSRの実現についての話が紹介されました。
政策プロトタイピングに関しては、デンマークの国営デザインエージェンシー、MINDLAB(http://mind-lab.dk/en/)の事例を紹介。MINDLABでは、政策のプロトタイピングを市民とともにワークショップなどを通して行います。それにより、細やかなニーズに対応した施策を、実際の施行前に効果検証しながらつくっていくことができます。このようなアプローチには、具体的に、以下のような意義があります。
1.行政の立案能力拡大
2.行政対市民という対立構造からの脱却
3.行政へのアブダクション(※1)の取り込み、デザイン思考の本質的意義
※1 アメリカの哲学者パースによって定式化された科学的探究の一段階。演繹および帰納に先立って,観察された現象を説明する仮説を発想し,形成する手続きを指す。仮説的推論。(出典:大辞林 第三版)
とくに3のアブダクションの取り込みは、エスノグラフィ調査を行い、エクストリームユーザーの行動から製品/サービスのヒントを得る際に鍵となる概念です。公共のサービスを考えるうえでも、利用者側の潜在ニーズから価値を再定義するきっかけとして、重要な意義をもっているのではないでしょうか。
日本の事例としては、RE:PUBLIC(http://re-public.jp/)のCitizen-led Innovation in Fukuoka(http://re-public.jp/fukuoka/)を紹介。これは、産官学民一体の組織により福岡で行われている、地域の将来像を描き、国際競争力を強める活動です。今後、このような活動が広がっていけば、日常的に各地域それぞれの特色を生かした事業やサービスが生まれることになるでしょう。その結果として、地域ごとの特色を生かしたボトムアップのアプローチの集合体として、日本全体の政策が成立するかもしれないという可能性が語られました。
ただ、実際に日本でこうした市民参加によるプロトタイピングからの政策を実現するには、法制度との折り合いをつけたり、市民の参加意識を向上させる必要があり、ハードルは高いと言えます。しかし、長谷川は「それでも、まずはやってみる、という積極的な姿勢が重要」と話を締めくくりました。
また、企業の本業を通したCSRの実現の例としては、株式会社ワコール様とコンセント、クリエイティブ・スペース「amu」(http://www.a-m-u.jp/)にて開催した『「ココロにフィットする下着」デザインワークショップ』(http://www.a-m-u.jp/event/2015/03/wcl-amu-ws-1.html)の事例が紹介されました。
ワークショップを通し顧客と企業が一緒に下着の商品づくりを行うことで、下着がココロに与える価値を再認識しよう、というプロジェクトです。顧客と企業は、下着づくりのプロセスをひらき、共有することで、定量化できない下着の価値に気づくことができます。ここで得られた気づきは製品開発に生かされ、女性のココロを元気にするという形で社会に還元されます。
どちらの方向性でも、参加者とともにつくり上げる、参加者とともに学ぶ姿勢が非常に強く求められていると感じました。これは、仕事の仕方そのものも公共へ向かっていくということなのかもしれません。
最後に、千葉工業大学教授、Smile Experience Design Studio代表の山崎和彦氏からはソーシャルセンタードデザインの定義と、その実現に向けてのアプローチについてお話いただきました。
近江商人が掲げていた、「三方よし」。それをキーワードに、「ユーザー」「企業・組織」「周辺環境・周辺の人」、それぞれが共有できる価値が実現された状態をソーシャルセンタードデザインと定義します。
キーワードの「三方よし」とは、近江商人がよい商売を定義した言葉です。「相手よし」「自分よし」「みんなよし」の三つの「よし」を言い、売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であることをさします。
私は、この「三方」という言葉に、「目が届く範囲での世間」というような意味合いを感じました。ある製品/サービスの共通価値を考えるときに、大きく社会に対して考えるのではなく、どの範囲までの関わりを考えるべきかをまず考える。適切なスコープを定めることが、共通価値を最大化する際に、非常に重要なのではないかと感じます。
また、それを実現するためのアプローチとして、社会環境視点を導入した、EXPERIENCE VISION(※2)2.0の提案をいただきました。
※2 『エクスペリエンス・ビジョン: ユーザーを見つめてうれしい体験を企画するビジョン提案型デザイン手法』を参照。
山崎氏はここで、社会起業、ソーシャルデザインはすばらしい活動であるが、本来的には行政が担うべきものではないかと指摘します。
私は、行政の抱える課題を民間企業との連携で解決するアプローチもあり、かならずしもすべての課題解決を行政の責任において行うべきものではないと思います。しかし、行政のあり方そのものをデザインするガバメント・デザインへとつながり、幅広く議論をしていくために、山崎氏の指摘は非常に重要だと感じました。
このように、さまざまな観点から「公共のためのデザインの可能性」が語られたイベントでしたが、この公共とデザインにまつわる課題は、実は1枚の地図を共有しているのではないかと感じました。
デザインがつないできた関係性は、図の下の「モノ中心の時代」から、図の上、つまりより広い関係性の中で共通し共有できる価値をつくり出すフェーズへと向かっているのではないでしょうか。
デザインエージェンシーや大学は、この各フェーズでの要請に応えつつ、社会の中で果たした成果からフィードバックを受け、時代とともに新しい価値創出の方法をつくり出す役割を果たしています。今後は、より多くの人々と価値を共有すること、ひとつの課題の解決を複数のステークホルダーとの関係性のなかで解決していくことが求められると思います。そのためには、より包括的な視点からスタートし、デザインを行う必要があります。包括的な視点と細部を見る視点、この両者を自在に行き来しながらデザインするマインドセットとスキルセットが、これからのデザイナーには必要になっていくでしょう。
これは従来型のデザインの重要性の低下を意味しません。むしろ、価値をどのように実際の製品/サービスに変換するかというデザイン力が非常に問われることになると思います。
そして今後、このような公共のためのデザインを行っていくには、解決すべきいくつかの大きな課題があると感じています。
ひとつめは、ユーザーの本質的な欲求として、どのようなものを取り上げるか、という点です。
たとえば冒頭の公園を例にとれば、寝転んで寝たい、というニーズを本質的な欲求として取り上げるかどうか。その結果で、その先のアプローチは大きく変わります。これらが個人で個別に解決すべきものだとしてフィルタリングされれば、多様な公園は生まれず、大人には今後も、座って時間を過ごすベンチのみが供されることになるでしょう。
ふたつめは、これら公共に対してデザインを行っていくデザイナーは、必要なマインドセット、スキルセットをどのように獲得すればいいのか、という点です。サービスデザインで多く使われるエスノグラフィ調査や、カスタマージャーニーマップ、ワークショップは重要なツールであり続けるでしょう。一方で、特定の手法にあてはめれば自然に答えがでてくるような課題は存在しません。
このどちらにも、魔法の公式は存在しないのではないでしょうか。これらの問題を解決するために、デザイナーには、定量化できないスキルがますます求められていくことになると思います。それは、聞く力、共感する力、アイディアの引き出し、熱意、そのようなものです。今は、これらのスキルがある、ということ以前に、まずそれらを獲得するための実践の機会そのものをつくり出すという姿勢が非常に重要なのではないかと感じました。
【執筆者プロフィール】
⇒ 小山田 那由他
Service Design Salonで一緒にディスカッションしませんか?
今後もさまざまなテーマでService Design Salonを開催予定です。
Service Design Salonの情報は、コンセントの公式Facebookページにて随時告知しておりますので合わせてチェックいただければ幸いです。
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⇒ オープンな勉強会「Service Design Salon」
⇒ Service Design Salon vol.4 レポート
⇒ 〜日本の公園から考える〜Service Design Salon vol.5 レポート
⇒ Service Design Salon Vol.6/第16回UXD initiative 「サービスデザイン思考と学び」レポート
⇒ 〜UX and Emerging Technologies〜Service Design Salon vol.7 レポート
2015/11/13 14:48
こんにちは。プロデューサーの山本です。
サストコに目を留めていただきありがとうございます。
この記事はどんな方が目を通してくださっているでしょうか。
コンセントでのインターンシップを検討している学生さんが多いのかな。
ちなみにコンセントってどんな会社だと思いますか?
みなさんが所属されている学校や触れている情報などによって、印象がきっと違うのではないでしょうか。
他にもありそうですね。
ちなみに、どれかひとつが正しいというわけではないですし、どれも間違いではありません。
紙面や画面を美しくレイアウトすることは、私たちが手がける業務の中で重要な要素に変わりありませんが、これは業務の中のごく一部であり、その他の要素もとても重要です。
例えば、読者やユーザーを理解すること、クライアントに共感すること、提案を裏付けること、相手に理解・共感してもらえるように言語で説明すること、仲間やクライアントを巻き込むこと、戦略やコンセプトを策定すること、計画と実行を実直に管理すること、計画通りに表現すること、柔軟に発想すること、知りたい情報を聞き出すこと、社外に成果を示すこと……などさまざまな能力が求められます。
さらにプロジェクトによって成果物は紙面・画面のデザインなどのモノではなく、事業アイデアやその実行プランなど、コトだったりします。
デザイン会社 = 美大芸大出身者
というのはもう昔のことで、現在のコンセントはいろんなスキルをもった多様な人材を求めています。
上記能力に限らず自分の能力を試してみたい方は、ぜひコンセントのインターンシップに応募してみてくださいね。
さて、これからご紹介する2015年9月度のインターンシッププログラムにも、いろんな大学からいろんなスキルをもった学生さんが集まってくださいました。
3日間という短期間の中で、それぞれが個性を発揮しつつ、驚異的なチームワークと集中力で駆け抜けていった精鋭たちです。
2015年9月度インターンシップの概要は以下の通りです。
3日間でこなすにはむちゃくちゃ難易度の高い課題設定ですね…。笑
まずは「カスタマージャーニーマップ(以下CJM)」の説明をサービスデザインDiv.の小山田さんから。すでに知ってるツワモノもいましたが、ほとんどみんな初見でした。
次にチームに分かれて提案までのタスクと残り2.5日のスケジュールを立てます。
両チームとも、1日目の残り時間はひとまずCJMの理解を深める時間に使った様子でした。
2日目は各々ブラッシュアップした企画をもち寄ってディスカッション。その後、クライアント(コンセント)の調査や、CJMが喜ばれるターゲット設定のための市場調査など、役割を分担して進めているようでした。
午後のプレゼンに向けてラストスパートです。
提案方式の詰めと、そこに必要なスライドやモックの作成など、役割分担してプレゼンに臨みます。
そしていよいよプレゼンです。
コンセント社員と4人の審査員の面々。
みんな緊張の面持ちでプレゼンの場を迎えました。
この結果、僅差でBチームの勝利!
でも、会場からはAチームを評価する声も多く、両チームとも本当に素晴らしい提案でした。
わずか3日間のなかで、
上記の要素を両チームともそれぞれ考えに考え、非常に濃密な時間の中で質の高いアウトプットをつくり上げていました。
こんな将来に役立つ経験、そうはできないのでは…。
改めて、コンセントは多様な人材を求めています。こんなインターンシップに挑戦したい方は、ぜひコンセントのインターンシップにチャレンジしてみてください!
※インターンシップ募集の情報は、コンセントのコーポレートサイト内「採用情報」ページにて随時お知らせします(次回は2016年2月に実施予定)。
【関連記事】
⇒ 2013年9月度 インターンシップ活動報告
⇒ 2014年3月度 インターンシップ活動報告
⇒ 2014年9月度インターンシップ報告
⇒ 2015年3月度インターンシップ報告
2015/10/27 12:18
こんにちは。デザイナーの横山詩歩です。
バンクーバーで開催された「Design & Content」カンファレンスの報告会を9月1日にamuにて行いました。
デザイナーとコンテントストラテジストを対象としたカンファレンスで、デザインとコンテンツ両方を取り上げるという、日本では馴染みが薄い類のカンファレンスということでコンセントから私、横山詩歩が参加してきました。
いきなり本題から脱線しますが、報告会の会場となったamuのWebサイトは10月1日にリニューアルいたしまして、コンセントの山口陽一郎さんと私でデザインを担当しました。開発はグループ会社のPIVOTです。ぜひご覧ください。
⇒ amu Webサイト http://www.a-m-u.jp/
(リニューアルについての紹介は,コンセントの事例紹介ページにも掲載しています。⇒ http://www.concentinc.jp/works/amu-web/)
さて本題に戻りまして、当日は以下の内容で開催いたしました。
第1部 Design & Content Conference
・ カンファレンス内容の報告
・ 清水 誠さんよりひとこと
第2部 Content Conferences
・ コンセント石野 博一さんによる「Content Marketing World」との比較
第3部 さらに学ぼう
・ ビー・エヌ・エヌ新社 荻野 史暁さん
・ L’OREM 松川 進さん
・ UX MILK 三瓶 亮さん
開催にあたっては以下のことを念頭に計画しました。
1)私はコンテントストラテジーの専門家ではないので、専門家が開くセミナーではなく、コンテンツ好きが集まって話すカジュアルな会とする。話を聞く場ではなく、トピックに関心・関連がある社外の方もお呼びして出会いがある場にする。
2)カンファレンスの3日間のすべてを話すのは不可能で、盛り込むと個々の内容が薄くなってしまうので、重点を絞り、自分が特に印象に残った・ためになったトークに関してのみ深く話す。
3)とはいえ、「コンテンツのカンファレンスって一体どういうことを話す場なの?」という疑問もあるかと思うので、ある程度の網羅性は担保する。
カンファレンスでの登壇者のスライドは提供されていたので、それらのスライドを使い、日本語で可能な限り再演しました。トピックとしては以下の6つを取り上げました。
・やさしさのコンテンツ
・アクセシブルなユーザー体験
・コンテンツチームの構成
・オーサリングのためのUX
・アダプティブ? レスポンシブ?
・測定基準とデザイン
最初の2つをかなりしっかりと話し、後半の4つはおもしろかった部分のみに焦点を当て簡潔に話しました。参加者のフィードバックを聞く限り、深く話した最初の2つが納得度も満足度も高かったようなので、残りの4つに関しても2つ程度に取捨選択し、深く話せればよかったなと思います(もちろん深く話すほうが、浅く広く話すよりも事前の準備が必要にはなるのですが)。
「Style Tiles」の説明の一貫として、私が用意した形容詞を絵(一筆書きの線)で表してもらう、というワークもしました。「Style Tiles」というのは、フォントや色、ボタンなど、ウェブにおいてブランドをビジュアルで伝えるための要素を指し、ムードボードとカンプの中間のような役割を果たします。今回みなさんにやってもらったワークは、実際にカンファレンスの中のワークショップで私が体験したワークです。意図としては、デザイナーは往々にしてクライアントから「サイトのイメージは、クリーンで、清潔感があって、洗練されているんだけど、温かみがあってフレンドリー」といった極めて抽象度の高い形容詞をいただき、それらを形にします。ただ、こういった抽象的な言葉をビジュアルに落としこむ行為の難易度は高く、そこには無限の解釈が存在します。けれども自分の表現の意図をもち、それをきちんと説明することができれば「ああ なるほど」と思ってもらえる。それを感覚としてわかってもらうような内容のワークであり、カンファレンスのワークショップでもアイスブレーキング的に使われました。
今回、私の言い回しや段取りの悪さで会場を混乱させてしまったものの、こういうワークは会場が和むのでいいですね。社外の方もいらっしゃっていたので、初対面の方と挨拶するきっかけという意味でも実施できてよかったです。
このワークの中での参加者のみなさんの作品はこんな感じでした。
ちなみにバンクーバーで同じワークをやった結果が下の写真です。なんともアーティスティックで、今回の報告会での参加者の方が具現に落とし込むのが上手かった印象です。
Design & Contentカンファレンスの報告をひとしきり終えたところで、ゲストとして、日米を行き来するアナリティクスコンサルタントの清水誠さんに第1部の締めの言葉をお願いしました。
清水さんは海外のカンファレンスにもよく行かれているそうで、その際はトークの内容はもとより、自分として何を感じたかやどういったことに活かせそうかと思ったかを大切にしているとのことでした。そのため、私がスライドの中でちょくちょく挟んでいた「個人的な感想」と言う名のつぶやきを楽しく聞いていただけたとのことで嬉しかったです。実は「私個人のことなんてきっとオーディエンスは興味がないだろうから、発表されたスライドの内容をなるべく忠実に話そう」と思い今回の発表は構成しておりました。しかし清水さんのお言葉を受けて、今度このような報告会の機会をいただけたら、個人としてのリアクションも合わせて発表できればと思います。それでこそ「私」がその場に行った意味に繋がるのかなと今さらながら実感しました。清水さんあらためてありがとうございました。
続いて第2部では、2014年9月に開催されたコンテンツマーケティングのグローバルイベント「Content Marketing World(以下、CMW)」に参加したコンセントのユーモア代表石野さんから、CMWの内容やカンファレンスの特徴を紹介してもらいました。「CMWの方が規模も巨大なのに対して、Design & Contentはアットホームなコミュニティ感を売りとしている雰囲気だった」など、私も交ざり、両者の相違点についても軽く共有しました。
石野さんからは「みんながジョークで笑っているが自分はそのおもしろさを理解していない瞬間が、いちばんさびしかった」という海外カンファレンスならではの悩みも紹介されました。
第3部では、関連分野の3名の方々にピッチをお願いしました。
まずはコンセントのグループ会社で出版社のビー・エヌ・エヌ新社の荻野さんから、日本と海外におけるContent StrategyやContent Marketingに関して発表いただきました。
続いて、株式会社リクルートホールディングス Media Technology Lab.の松川 進さんからは、UXメディアサイト「L’OREM」について。
UX関連の情報が豊富なデザイナー必見のサイトです。
松川さんのピッチは、「コンセント」を「繋げること」に見立てたキャッチーなものでした。
さらに、UXメディアサイト「UX MILK」編集長の三瓶 亮さんにお話いただきました。平日毎日(!)記事がアップされるスピード感。コンテンツ戦略の記事もあります。
こういったUX系のメディアサイトが日本でもどんどん増えてきているのはユーザーとしては嬉しい限りですね。
最後に交流会をして終了しました。
ほどよいクローズド感で、和やかな会として開催することができて心地よかったです。こじんまりとした会という私の当初の想定を越える人数の方々にご参加いただき、「コンテンツ」のトピックに対してみなさん関心をおもちなんだなあと実感した次第です。
平日のお忙しい中、お越しいただいたみなさまありがとうございました。
(写真は鈴木奈都子さんに撮影いただきました。あらためてありがとうございます。)
2015/08/17 16:10
こんにちはー。旅するパーソナルスタイリスト兼広報の河内です。
お盆休みもあけて、今日からオフィスに戻っている方も多いでしょうか。
さて、今年もコンセントでは浴衣で出社dayを開催しました。
浴衣で出社dayは、読んで字のごとく浴衣で出社する日のことです。
朝から着てきてもいいし、会社に来てから着替えてもいいし、客先訪問などを終えて帰社してから着替えてもいいし、タイミングなどは自由。もちろん、そもそも浴衣を着る、着ないも自由です。
2012年の浴衣で出社day
http://sustoco.concentinc.jp/from-editors/2012/08/yukata-eel/
http://sustoco.concentinc.jp/from-editors/2012/09/wanokoto-iroha/
2013年の浴衣で出社day
http://sustoco.concentinc.jp/from-editors/2013/08/yukata-day/
2014年もやったけれど、記事にするの忘れました(汗)。
今年は、7月6日と7月31日に開催しました。
(もしかしたら8月中にもう一回ぐらいやるかもしれませんが…)
しかも、6日の方はなんと取材が入りました。
和装振興のため、経産省が「きものの日」制定を検討しているというニュースをご覧になった方もいるかと思いますが、これと絡めて、コンセントが毎年開催している、浴衣で出社dayの様子が取材されたのです。この内容は、経産省の方とのインタビューと合わせて紹介され、映像ニュースで配信されていますので、ぜひご覧ください。
日本経済新聞電子版映像ニュース
着物を普段着に 官民、復権へ動く(2015年7月25日)
そもそも、なぜコンセントが浴衣で出社dayをやっているかと言えば、私が浴衣を着たかったから、という私的な動機が一番大きいのですが、ではなぜ浴衣を着たかったかというと、せっかく日本人なのだし、日本のナショナルコスチュームをもっと着てもいいんじゃないかな…と思ったことがきっかけです。
コンセントはカジュアルな服装での出勤が認められています。
「ちょっとそれはさすがにカジュアルすぎるんじゃ…?」と思うこともままあるので、「カジュアルOK」の幅をどう定義するのかはなかなか難しいところだなと、日々思うところですが、まぁ、その話はさておき、Tシャツ、デニム(なんなら短パンも)といったカジュアルがOKなら、同じくカジュアルな浴衣を着てもいいのでは?と思うわけです。
どうせ同じカジュアルなら、Tシャツ+デニムよりも、浴衣の方が華やかですし、見た目にも涼しげで(着ている方としては涼しくないけれど)、会う人に喜ばれることも多くあります。
なによりも、普段あまりやったことがないことを体験すると、新たな発見があったりもします。
着崩れないように気をつけて動こうとすると自然と所作がおしとやかになるな〜と感じたり、タクシーの助手席の背にハンドル(てすり)がついていることに普段は全く気づかなかったけど、帯が潰れないように気をつけて乗ろうとするとそのハンドルがとても便利だな〜と思ったり、電車に乗る時にもホームと電車の隙間が広いとまたぐのがこんなに大変だなんて!と気づいたり。普段の洋服生活ではあまり気にすることがないことが気になったりするわけです。そういうことに気づくチャンスを日常のなかにもつということがデザイナーにとって大切だと考えるのは、そんなにこじつけでもないんじゃないかなぁと思うわけです。
何も考えずあたり前のように毎日洋服を着て出勤しているけれど、そもそも、和服で通勤しちゃいけないって誰が決めたのか?
普通に考えれば洋服よりも和服は動きにくいとか、気にしなければいけないことが多く仕事の邪魔になるため通勤着には向かないとか、いろいろあるとは思います。
でも、自分の日常業務を考えると、PR担当という職業柄(?)、イベント運営などで走りまわったり机の下に潜ったり大荷物を運んだり、外出したり…ということももちろんありますが、どちらかといえば打ち合わせやデスクワークが中心です。パソコン1台あれば多くのことができてしまいますし、原稿チェックなどはむしろ紙とペンがあればよく、いずれにせよ、椅子にかけていることがほとんどです。
そう考えると、多少動きに制約が出てしまう和装であっても、業務への支障はそれほどないようにも感じます。
むしろ、帯があることで背筋が伸び、姿勢よくキリッと仕事できそう。
どちらかといえば機能面よりも、ほとんどの人が洋服を着ている環境では和装が目立ち、相手をびっくりさせてしまう、といったことの方が問題になるのかもしません。
「なんで和服で会社行っちゃいけないの??」と駄々をこねたりするつもりもないですが、「なんとなくそういうもんでしょ?」と思い込んでることって、実はそんなに合理的な意味があるわけでもなかったりするんじゃないのかな…と思ったり。
特にオチのある話ではないのですけど…。
さて、浴衣で出社dayの様子が取材された時のことに話を戻しますが、浴衣はきものよりは着るのが簡単とはいえ、全員が全員自分で着られるわけでもありません。着る機会が少ないと、覚えてもすぐに忘れてしまいますしね。
なので、着付けを手伝ったり、みんなで協力しながら着ました。
気づけば、ヘアスタイリングなんかも始まっていたり…。
それもまた楽しいひとときです。
ちなみに、写真撮り忘れましたが、長谷川さんの着付けは今年の新入社員、工藤くんが手伝ってくれました。
大学時代からよく和装をしているとのことで。
和装に抵抗がない男性が意外と多いんです、コンセントって。
取材はこんな感じで進みました。
取材してくださった記者の女性も浴衣姿で来てくださいました。うっとり。
本社ビルでも1枚。浴衣で出社dayだけど、私は一応広報担当で記者さんたちの対応もあったので、夏きものにしておきました。同じく広報担当のユカリンも、普通の浴衣よりは少しだけカジュアル度を押さえる意味で綿絽の高級浴衣です。
そして、今年2回目の浴衣で出社dayは、7月31日の恵比寿駅前の盆踊り大会に合わせて開催。
コンセント社内では浴衣姿をあまり見かけませんでしたが、グループ会社のフラワーショップkusakanmuriの堀田さんが着てくれていたので、仕事のあと一緒に盆踊りへと繰り出しました。
すごい人出で窒息しそうだったので、2人で「YES, YES EBISU! 」だけ踊って、早々に退散しました。
ちなみに、この恵比寿駅前の盆踊り大会の様子は、コンセントの全天球動画作家、渡邊課が全天球動画として撮影したようで、恵比寿新聞にも掲載されています。
恵比寿新聞|昨日7月31日 第63回 恵比寿駅前盆踊りを全天球360度撮影!?
360度好きな視点で映像を見ることができ、盆踊りに参加していなかった人はもちろん、参加した人でもそのときに見えていたのとは違う視点からの映像が楽しめるものとなっていますので、ぜひ、この動画で日本の夏に浸ってみてください。
ちなみに、夏らしいコンテンツとしてほかにも、渡邊課が花火コンテンツや水中ニーソ(水中でニーハイソックスをはいた女の子を撮影)などがありますので、詳しくは、「どうも、渡邊課長です!」をご覧ください。
そうだ、浴衣、和装、きものといえば、デザイナーのグッチが「きもののインタラクション」という記事を書いていましたので、こちらもよかったらどうぞ。
2015/08/12 19:48
どうもご無沙汰してます。渡邊課の課長をやってる渡邊です。
アイドルグループRYUTistと一緒に観る花火コンテンツや、「一畳プラレール」のぺたぞうさんと「水中ニーソ」の古賀学さんとコラボしたプラレールコンテンツなど、相変わらず全天球映像をつくる毎日です(もちろんデザインの仕事もしています)。
ちなみにこのコンテンツ、KAI-YOU.netさんでも紹介してもらっちゃいました。
⇒ 新潟のアイドルRYUTistと一緒に花火鑑賞! 360°全天球動画が最高に最高(KAI-YOU.net)
⇒ 超高層プラレールに小型カメラを積んで撮影した360度映像が完全に未来 (KAI-YOU.net)
渡邊課の最近の活動はこちらのページで随時お知らせしているのでぜひみてください。
⇒ 渡邊課(コンセント 全天球映像作家)|Tumblr
今日は、最近渡邊課が協力しているBDMというイベントを紹介したいと思います。
BDMとはボン・ダンス・ミュージックの略。そう、みなさんご存知の盆踊りのことです。
どんなイベントかと言えば、「“踊る阿呆”になれる日本古来のダンスカルチャー盆踊りを現代的な形で再定義するイベント」ということで、詳しくはBDMの公式サイトをみてみてください。
実は今、このイベントに関連して「Makuake」でクラウドファンディングをやってます。
⇒ Makuake|東京のド真ん中で現代型盆踊り!10月3日(土)青山収穫祭@国連大学前!
このBDMプロジェクト、支援してくださった方にはすごい特典があるんです。
イベントに出演するDE DE MOUSEさんと水曜日のカンパネラさんが、なんとこのMakuakeプロジェクトのためにコラボ制作してくださった盆踊りソング「妖怪地獄音頭」をダウンロードできちゃう「ダウンロードカード団扇」や、化け猫好きにはたまらないイラストレーター石黒亜矢子さんがBDMプロジェクトのために描いてくださった「妖怪イラストを使ったTシャツ」とか! いずれもこのMakuakeプロジェクトのリターンとしてしか手に入らないもの。盆踊りイベントに持参していただけたらより楽しめるんじゃないかと思います。
渡邊課はイベント当日、全天球カメラで盆踊りの様子を撮影して後日一般公開するのですが、プロジェクト支援者の方は公開に先駆けて視聴できちゃいます。
イベント自体は無料なので、気軽に遊びに来てください! 10月3日(土)17時頃~20時頃まで青山・国際連合大学前広場で開催予定です。
そして今週末は上海で開催される土豆映像祭に行ってきます!
古賀学さんと一緒に「全天球水中ニーソ」を持参して、全天球映像をプレゼンしてくる予定です。中国での全天球映像の認知状況もはかりにくいので現地調査も兼ねてこようと思っています。
現地レポートもお楽しみに。帰国したら書きます。